魅せられて 必見のヨーロッパ

オーストリア・ハンガリー帝国最後の皇太子の心臓が眠る大修道院 ハンガリー・パンノンハルマ

ツアーの行き先としてはメジャーでないけれど足を運べばとりこになる街を、ヨーロッパを知り尽くした作家・写真家の相原恭子さんが訪ねる「魅せられて 必見のヨーロッパ」。今回は、2019年10月に訪問したハンガリーのパンノンハルマです。世界文化遺産の大修道院は、実に堂々とした構えでした。

10世紀創設 ハンガリー最古の修道院

ハンガリーの首都ブダペストから西へ130km余り、パンノンハルマの大修道院へ日帰りで出かけました。車で片道約1時間半のドライブです。パンノンハルマはスロヴァキアとの国境に近く、人口は4000人弱。「千年の歴史を持つパンノンハルマのベネディクト会大修道院とその自然環境」が世界文化遺産に登録されています。

車でパンノンハルマに入ると、標高282mほどの小高い丘の上にパンノンハルマ修道院がそびえています。996年に設立されたハンガリー最古の修道院です。ハンガリー建国の父とされキリスト教化を進めた国王イシュトヴァーン1世の時代に、布教の原点となりました。

車で坂道を上り、まずはビジターセンターへ。最初に訪ねたのは20年近く前でしたが、当時と比べると道路も周囲も整備されています。ビジターセンターに日本語のパンフレットはありませんでしたが、ドイツ語と英語のパンフレットをいただきました。

オーストリア・ハンガリー帝国最後の皇太子の心臓が眠る大修道院 ハンガリー・パンノンハルマ

レストラン「Omnibus(オムニブス)」

駐車場近くには「Omnibus」というレストランがあります。訪問客も増えているようでかなり混雑しています。

オーストリア・ハンガリー帝国最後の皇太子の心臓が眠る大修道院 ハンガリー・パンノンハルマ

雑木林の中を上ります

緑の中を心地よく散策します。

オーストリア・ハンガリー帝国最後の皇太子の心臓が眠る大修道院 ハンガリー・パンノンハルマ

観光客は若い人が目立ちます

修道院には寄宿制の高等学校

オーストリア・ハンガリー帝国最後の皇太子の心臓が眠る大修道院 ハンガリー・パンノンハルマ

パンノンハルマ・ベネディクト会高等学校前の広場

修道院にはパンノンハルマ・ベネディクト会高等学校があります
広場に停車している遊園地にあるような小さな乗り物が、ビジターセンター近くと学校入り口を結んでいます。

オーストリア・ハンガリー帝国最後の皇太子の心臓が眠る大修道院 ハンガリー・パンノンハルマ

高等学校の正面入り口

この日は行事があったようで、生徒たちの親や家族が訪ねてきていました。
ここは寄宿制の男子校で、入学は12歳または14歳で、卒業は18歳。こんなに街なかから離れた丘の上で寝起きして学校生活を送るとは、何ともストイックな感じがします。

ハーブガーデンやボタニカルガーデンも

オーストリア・ハンガリー帝国最後の皇太子の心臓が眠る大修道院 ハンガリー・パンノンハルマ

ハーブガーデン

学校の入り口の向かいから、ハーブガーデンとボタニカルガーデン(植物園)への散策路があります。
坂道をかなり下って、ハーブガーデンへ。ラベンダーが多く栽培されています。

オーストリア・ハンガリー帝国最後の皇太子の心臓が眠る大修道院 ハンガリー・パンノンハルマ

のどかな風景です

正面右手の建物が修道院で作られたハーブを使ったオイルやお茶、化粧品などを扱うショップです。自然の恵みを使ったグッズに、自然と共に生き、祈りの生活を続ける修道院の生活が想像できます。

オーストリア・ハンガリー帝国最後の皇太子の心臓が眠る大修道院 ハンガリー・パンノンハルマ

修道院で作られた製品などが並ぶショップの中

かなり歩いてのどが渇いたので、ショップでサワーチェリーのジュースを買いました。濃厚な味わいで、ビタミンやアントシアニンが多く含まれていそうです。

オーストリア・ハンガリー帝国最後の皇太子の心臓が眠る大修道院 ハンガリー・パンノンハルマ

サワーチェリーのジュース


オーストリア・ハンガリー帝国最後の皇太子の心臓が眠る大修道院 ハンガリー・パンノンハルマ

修道院の入り口へ向かいます

世界遺産に登録されている「自然環境」の一部を散策するだけでも、かなり健脚向きコースに思えます。

城塞のような壁 36万冊収蔵の図書館

オーストリア・ハンガリー帝国最後の皇太子の心臓が眠る大修道院 ハンガリー・パンノンハルマ

修道院の厚い壁

修道院は城塞(じょうさい)のように堅牢な壁に取り巻かれています。1000年を超える歴史を今に伝える、確かな強さを感じさせます。

オーストリア・ハンガリー帝国最後の皇太子の心臓が眠る大修道院 ハンガリー・パンノンハルマ

手前右側に小さく見えるのが、見学者の入り口


オーストリア・ハンガリー帝国最後の皇太子の心臓が眠る大修道院 ハンガリー・パンノンハルマ

入ってみると、壮大な建物に圧倒されます

見学コースで私が最も興味を持ったのは図書館です。

オーストリア・ハンガリー帝国最後の皇太子の心臓が眠る大修道院 ハンガリー・パンノンハルマ

美術館のように美しい図書館。おびただしい数の本が並んでいます

現在は36万冊が収蔵されています。修道院が学問の場であったことを実感します。

ちなみに、<ベルリンの壁崩壊の序章はピクニック ハンガリーを巡る旅(2)ショプロン>で紹介した「汎ヨーロッパ・ピクニック」の中心人物でもあったオットー・フォン・ハプスブルク(1912~2011)は、この高等学校で学んだことがあります。没後、彼の遺体はウィーンのカプツィーナ納骨堂に納められ、心臓はここパンノンハルマ大修道院に納められています。

オーストリア・ハンガリー帝国最後の皇太子であった彼に、まさにふさわしい没後の安住の地ではないでしょうか。

各地を旅すると現在の国境を越えたヨーロッパのつながりを目の当たりにします。そうした事象が、EU諸国のつながりの根っこになっているのを実感します。

フィールドワークと言っては大げさですが、頭の中で史実などが鎖のように、物語のようにつながっていく面白さと知的興味が、私の旅の原動力です。

駐日ハンガリー大使館
https://tokio.mfa.gov.hu/jpn

駐日ハンガリー大使館観光室
http://www.hungarytabi.jp

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PROFILE

相原恭子(文・写真)

慶應大学卒業。ドイツ政府観光局勤務を経て、作家&写真家。「ドイツ地ビール夢の旅」(東京書籍)、「ドイツビールの愉しみ」(岩波書店)、「ベルギー美味しい旅」(小学館)、「京都 舞妓と芸妓の奥座敷」(文春新書)、「京都 花街ファッションの美と心」(淡交社)、英語の著書「Geisha – A living tradition」(フランス語、ハンガリー語、ポーランド語版も各国で刊行)など著書多数。国内はもちろん、国際交流基金・日本大使館の主催でスペイン、ハンガリー、エストニアで講演会や写真展多数。NHK「知る楽」「美の壺」、ラジオ深夜便「明日へのことば」「ないとエッセー」、ハンガリーTV2、エストニア国営放送など出演多数。
https://blog.goo.ne.jp/goethekyoko

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