楽しいひとり温泉

温泉+一軒家 温泉街中心の一軒家をリノベーション「有馬温泉 小宿 駿河亭」

できることなら、温泉地へ移住したい。せめてつかの間でもいいから温泉で暮らしたい。近年有馬温泉で始まった「小宿」という泊まり方は、旅館でもなく、移住でもなく1泊単位で間借りできる「暮らす感覚」の旅。温泉街の中の空き家をリノベーションした部屋を、旅館が「別館」という考え方で管理する仕組みをつくって実現したプロジェクトです。(写真:杉本圭、石井宏子)

(トップ写真:有馬温泉の金泉はメタケイ酸豊富で肌触りがやわらか)

■連載「楽しいひとり温泉」は、全国各地の温泉をめぐり、温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する、温泉ビューティー研究家の石井宏子さんが、テーマごとにひとり温泉にぴったりなお宿を紹介します。

温泉街のメインストリートに建つ一軒家

路地

小宿 駿河亭の玄関は路地の奥に

7月から予約開始となった「小宿 駿河亭」は、温泉街に入ってすぐの場所をリノベーション。お土産物屋・駿河屋があった大正時代の建物で、1階は和雑貨の店「やまとごころ」、2階と3階にひとつずつ「小宿 駿河亭」の部屋があります。有馬温泉の老舗宿の「陶泉 御所坊」が管理し、「別館・小宿 駿河亭」として、泊まることができます。御所坊のフロントでキーを受け取り、つかの間の我が家となる小宿へ。情緒たっぷりの路地を入ると玄関。この「一軒家に暮らす」感じが、とてつもなくワクワクします。

小宿 駿河亭の部屋

プチ移住の気分が味わえる小宿 駿河亭の部屋

レトロな手すきガラスの引き戸を開けるとツインベッドと文机の和空間。シャワールーム、トイレ、洗面台、クローゼットなどのしつらえもあり、しばし暮らすには十分です。感激したのは、クローゼット部分に、キャリーケースを広げておける棚があること。スマートに荷物が置けて便利です。

部屋

文机と座りやすい椅子で仕事もすいすいはかどる

温泉街の家を間借りする感覚を楽しみながらも、老舗宿の別館という位置づけなので、浴衣やタオル類、アメニティー、お茶なども備わっていて快適。優雅に浴衣に着替えて窓辺でお茶を一服。温泉街を行き交う人の姿を眺めて、家で過ごすようにリラックス。

立ち寄り入浴や温泉街散歩を楽しむ

大浴場「金郷泉」

「陶泉 御所坊」の大浴場「金郷泉」で立ち寄り入浴

御所坊の大浴場「金郷泉」は、11時~14時まで立ち寄り入浴可能。実は、チェックインする前に、温泉へ入ってきました。男女別の大浴場の内湯から、洞窟のような通路へ進むと、足元から徐々に温泉は深くなり、温泉につかりながら囲いの外へ出ると半露天風呂に。ここは、たとえて言えば、気配の混浴。お互い姿は見えない高さの塀で仕切られていますが、なんとなく、誰かが入っているという気配だけは感じられる、湯けむり越しのなんとも粋なつくりです。

有馬温泉は、火山ではない六甲山の中腹にあるのに、わずか地下200メートルほどの場所から100度近い高温の源泉が自噴しています。泉質は、含鉄-ナトリウム・塩化物強塩泉。肌当たりは柔らかなのですが、塩も鉄もとても濃厚で、体の芯、いえ、骨の髄までしっかり温まります。

泉源

温泉街散歩で有馬名物「泉源」巡り

有馬温泉は温泉街散歩も楽しい。泉源と呼ばれる源泉の湧く場所が七つあるのですが、散策のおすすめは「天神泉源」。まずは、有馬温泉の鬼門を守る厄払いの有馬天神社に疫病退散のお参りです。この境内にある天神泉源は柵がないので、ゴボゴボと湧く源泉の迫力を間近で感じることができます。「ほら。ふたになっている木の板に触れてごらん。あったかくて癒やされるよ」と、ご近所散歩の常連さんに教えていただき、おそるおそる触れてみると「あったか~い」。なんとこれが、ほおずりしたくなるくらいの程よいぬくもり。たまたま、そこで出会ったみんなで、たき火にあたるかのように泉源の板に手をのせて集い、地球のぬくもりに癒やされました。

六甲山麓の牛乳と生果実や野菜を使ったジェラート

ジェラート

泉源の湯けむりを眺めてフレッシュジェラートを味わう

温泉街の坂を上って「アリマ ジェラテリア スタジオーネ」へ。ジェラートワールドツアーの日本代表を決定する大会で優勝したジェラートマスターが毎日手作りするフレッシュジェラートのお店です。お目当ては、六甲山麓(さんろく)の牛乳に旬の生果実を合わせたジェラート。3月に取材した時に注文したのは、あまおうイチゴとキンカンのジェラート。こくがあるけど軽やかなミルクと、果実そのものの味わいが凝縮されて、とろーりとろけるおいしさを満喫。「妬(うわなり)泉源」のパワフルな湯けむりを眺めながら味わいました。

外観

小宿 駿河亭の外観。2階と3階に独立した部屋がある

夕暮れの「小宿 駿河亭」。とってもロマンチックな風景です。こんな我が家(一晩の我が家ですが)にプチ移住しているのがうれしくて、道行く人に「ここに暮らしているんです」なんて、言いたくなってしまいます。

温泉街を歩いて有馬禅寿司ののれんをくぐる

有馬禅寿司

有馬禅寿司(https://arima-zensushi-hyogo.com/)で、夕食を楽しむ

夕食は、予約をしておいた「有馬禅寿司」へ。うれしいことに、小宿の宿泊者は10%オフでコース料理を注文できるのです。おひとり様でも、カウンターに腰掛ければ、ご主人の辻村昭紀さんが話し相手になってくれます。

鯖の小袖寿司

名物の鯖(サバ)の小袖寿司(ずし)

有馬名物「鯖(サバ)の小袖寿司(ずし)」は、小ぶりの棒ずしで、脂ののったサバのピンク色の身が薄い昆布から透けて美しい。刻んだ大葉とガリとのりのハーモニーに、ピリッときいた山椒(さんしょう)の余韻が味わい深い逸品。

にぎり

その日に仕入れた地魚のにぎり

明石の生タコや地魚のにぎりもその日のおまかせで出てきます。丹波の地酒「小鼓」をいただき、いい気分で夜の温泉街をそぞろ歩いて、「小宿 駿河亭」へ戻り、ばたんきゅう。

朝起きたら、歩いて1分の金の湯へ

金の湯

外湯「金の湯」まで「小宿 駿河亭」から徒歩1分

温泉街の外湯「金の湯」まで、玄関から徒歩1分。朝8時オープンの一番湯は、新しいお湯を注ぎ入れたばかり。注ぎたての金泉は、容赦ない熱さ。じんじんぐるぐる全身の血が駆け巡り、細胞がひとつひとつ目覚めていく感覚です。「いや~、朝湯はいいね~」なんて、温泉暮らし気分に酔いしれます。

朝食

焼きたてのパンで朝食

朝湯の帰りに、あー、いい香り。パン・ド・ボウのパンを焼く甘い香りが路地に漂います。朝9時オープンを待って、パンを買い「上で食べます」というと、系列の喫茶店、カフェ・ド・ボウへ持ち込めます。ジャスミンの花が浮かぶ和紅茶を注文して有機野菜たっぷりのフォカッチャで朝ごはん。ほんのり甘い丹波黒豆のパンと有馬山椒パンは帰りの新幹線でおやつにします。

陶泉 御所坊【別館】小宿 駿河亭

※問い合わせおよびチェックインは、本館の「陶泉 御所坊」へ
(神戸市北区有馬町858 電話078-904-0551、ホームページはhttp://goshoboh.com/

「楽しいひとり温泉」ポイント
1. 一軒家で温泉暮らし
2.金の湯まで徒歩1分
3.温泉街で外ごはん

BOOK

温泉+一軒家 温泉街中心の一軒家をリノベーション「有馬温泉 小宿 駿河亭」

全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!

石井宏子さんの著書「全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!」(世界文化社)。温泉ビューティー研究家・旅行作家ならではの、旅してみつけた、女性がひとりで安心して楽しめる温泉宿を紹介するハンディーな一冊。公共交通機関で行ける、自分へのごほうびで泊まりたい、いい宿を全国から厳選し、あわせて、女性目線で選んだ周辺の立ち寄り先、ランチやスイーツも取り上げます。ひとりでも楽しい観光列車も登場します。税別1400円。

PROFILE

石井宏子

温泉ビューティー研究家・トラベルジャーナリスト。日本・世界の温泉や大自然を旅して写真撮影・執筆をする旅行作家。テレビにも出演。温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する。海外ブランドのマーケティング・広報の経験から温泉地の企画や研修もサポート。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、日本旅のペンクラブ会員、気候療法士(ドイツ)、温泉入浴指導員。著書に「癒されてきれいになる おひとりさま温泉」(朝日新聞出版)、「地球のチカラをチャージ! 海温泉 山温泉 花温泉 76」(マガジンハウス)、「感動の温泉宿100」(文春新書)などのほか、「全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!」(世界文化社)が11月に発売された。

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