ちょっと冒険ひとり旅

都の歴史がぎゅっと詰まった東山縦走スタート 「京都一周トレイル」で冒険旅#2

ちょっと冒険どころか遠出も難しい今日この頃、それでも冒険気分を味わいたい……というわけで、京都在住の旅行ライター・山田静さんが選んだ冒険先は地元・京都。京の都をぐるりと囲むトレイルルート「京都一周トレイル」完歩に挑戦。まずは東山からスタートです。

(トップ写真は稲荷山・四つ辻からの眺望)

■何回目かのひとり旅、ちょっとだけ冒険してみたい。そんな旅人のヒントになりそうな旅先や旅のスタイルを紹介している連載「ちょっと冒険ひとり旅」。京都で旅館の運営をしながら、旅行ライターとしても活躍する山田静さんが、飛行機やバスを乗り継いで比較的簡単に行ける、旅しがいのあるスポットをご紹介していきます。バックナンバーはこちら

京都一周トレイル 東山コース(1)京阪伏見稲荷駅〜蹴上10.3キロ

京都人が「山」といえば「東山」を指すことが多い。洛中から見て東側の山並みが「東山」で、だいたい伏見稲荷大社がある稲荷山から比叡山あたりまで。エリア内には東福寺、清水寺、八坂神社、南禅寺、銀閣寺、延暦寺と知名度抜群の神社仏閣がひしめき、夏の風物詩五山送り火の「大」の字が点火されるのも東山。京都、そして日本の歴史がぎゅっと詰まったエリアが東山なのだ。

京都一周トレイルでどこか1カ所だけ歩いてみたい、というなら、イチオシはこの東山縦走コース。全長24.6キロ、歩く人も多いので道はよく整備され、寄り道したいスポットも多い。筆者のトレイル完歩チャレンジ、初回はこの東山コースのスタート地点・京阪伏見稲荷駅から蹴上までの10キロあまりのルートだ。

1カ所しか歩かないならここ! 伏見稲荷と清水寺の「裏山」で都の歴史に触れる

清水山(音羽山)

清水寺の丘からのぞむ清水山(音羽山)。参拝時は風景として眺めているこの山並みが東山。トレイルルートは、この山中を貫いている

東山コースの道標1は、京阪伏見稲荷駅改札出てすぐ(標高26m)。

道標

番号と道筋が記された道標が、主なポイントや分岐点に必ずある。この道標さえ見落とさなければ、道に迷う心配はほとんどない

駅からは参道を通り伏見稲荷大社の境内、そして千本鳥居を通りぬけ稲荷山を登っていく。稲荷山全体に広がるお社を巡る「お山めぐり」も伏見稲荷の巡礼ルートとして人気で、ついでに行ってみたいところだが、正直、京都一周トレイルで途中の神社仏閣を全部お参りしていたら数が多すぎて時間がいくらあっても足りない。本殿でのお参りだけ済ませて、石段をひたすら上る。

稲荷山

上るほどに参拝者の数が減り、神山の趣が出てくる。いたるところに鳥居とキツネ、しめ縄が張られた岩があり、伏見稲荷が今も昔も巨大な「祈りの場」であることを実感する

30分ほど上り続け、もう足が上がらない……となった頃に、展望台がある四つ辻(標高165m)に到着。

道

四つ辻など、展望ポイントや分岐点には茶屋もあり休憩にいい。ふもとの本殿から山頂までは小一時間かかる

ひと息ついたあと、山頂には向かわず、進路を北にとり東福寺方面へと向かう。ゆるやかな尾根を下り、住宅街を抜ける間にも、「○○稲荷大神」の名を刻んだ石が並ぶ「お塚」、滝行の場「五社之瀧神社」など伏見稲荷大社ゆかりの場が次々と出てくる。ちょっとミステリアスでもあり、日本人の信仰の原点のようでもあり、伏見稲荷、興味が尽きない。

稲荷山の尾根を下り、東福寺の裏手にあたる車道を進んでいくと、皇室ゆかりの泉涌寺(御寺)に突き当たる。別院・雲龍院の庭園、隣の今熊野観音寺の紅葉は見事なのだが、今回は通過。ここからさらに「枕草子」に登場する定子ら多くの藤原氏が葬られた「鳥戸野(とりべの)陵」に行くこともできるが、ここも通過(立ち寄っているとキリがない……!)。住宅街を抜けて、再び山道へと入る。こんなところにこんな素朴な山道があったのか、という、その名も「京女(きょうじょ) 鳥部(とりべ)の森」。尾根を巻き込んで歩くルートだが、登っていけば阿弥陀ヶ峰にある、豊臣秀吉の墓所、豊国廟(びょう)にも行ける。

まさに歴史のなかを歩いている、という気分だ。

登り道

国有林の中に続く、なだらかな登り道

尾根道を抜けていったん車道に降り、国道を渡ってから再び山道へと戻る。ここから清水山、別名音羽山への山登りがスタートだ。

清水山への登り口

清水山(標高241m)への登り口、標高およそ100m。高倉天皇陵がある清閑寺への登り口でもある。もちろん、清水寺にも抜けられる

思ったよりハード……。

京都一周トレイルの現実がこのへんで身に染みてきた。登り下りの繰り返しで、歩くのも住宅街から寺社の敷地、山道に車道とさまざまなので、登山とは違った疲労がたまってくる。

だが、それを補ってあまりあるのが道中の豊かな自然や史跡、神社仏閣。歩きはじめたばかりだが、知っている、行ったことがあると思っていた場所なのに、山から眺めるというだけで、目に入るもの全部が新鮮だ。

よく整備された照葉樹林帯の山道を登っていくと、トレイルランナーやハイカーと多くすれ違う。30分ほどで一気に登った清水山の山頂は森に包まれ眺望がほとんどないので、そのまま北上し、森の尾根歩きをしばし楽しむ。

国有林

一帯は国有林。かつてアカマツが多かったという森は、現在はシイを中心に森の整備が進んでいるそう

ヒノキ

ヒノキも植林されている。木の皮は檜皮葺(ひわだぶき)の屋根の材料となる。近年、ひわだがとれるヒノキや、ひわだを採取する職人が減っているため、試験的に植林・採取していると案内板に書かれていた。京都の山は、祈りと守りのための山でもある

井上馨の石碑

突然現れる井上馨の石碑。さまざまな碑文や由来が書かれた案内板があって、それを読むのも京都一周トレイルの楽しみだ

さらに30分ほど歩くと急に視界が開け、東山山頂公園(標高220m)に出た。京都市街と、これから歩く予定の西山が一望できる。

東山山頂公園

東山山頂公園。4時間超の山歩きで汗まみれで到着したが、マイカーで遊びに来ている人がほとんどでちょっと恥ずかしかった

東山山頂公園からの眺望

東山山頂公園からの眺望。トレイルルートを歩く間、この京都市街の風景をいろいろな方向から眺めることになる

下山ルートの道標

下山ルートの道標。知恩院や清水寺を巡るハイキングルートでもあるので行き交う人も多く、道標もいっぱい

ここからは、将軍塚や粟田神社などの名所を眺めながら一気に下る。ゴールは「標識30-2」だ。南禅寺もすぐ近くなので時間があれば立ち寄って……なんて思っていたが、30分ほどの下りで足がガクガク。すぐそばにある地下鉄・蹴上駅から帰路についた。

クチナシの花

道中で見かけたクチナシの花。ちなみに、歩きながら見つけた花の名前を調べるには、千葉工業大学が開発した「ハナノナ」というアプリがオススメ。スマホのカメラをかざすだけで名前の候補を教えてくれる

さて次回は、蹴上から比叡山への道。銀閣寺、大文字山、比叡山とダイナミックに登り下りを繰り返す、見どころの多いルートだ。

<今回のデータ>
歩行時間 約5時間
歩行距離 10.3キロ
最高地点標高 241m(清水山山頂)
最低地点標高 26m(京阪伏見稲荷駅)

<アクセス>
出発点:京阪伏見稲荷駅
到達点:地下鉄東西線蹴上駅

■京都一周トレイルWebサイト
https://ja.kyoto.travel/tourism/article/trail/

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BOOK

都の歴史がぎゅっと詰まった東山縦走スタート 「京都一周トレイル」で冒険旅#2

京都で町家旅館はじめました(双葉社)

京都に開業した町家旅館のマネジャーをつとめることになった著者が、開業準備から実際の運営に至るまでのドタバタとドキドキ、そして京都のお気に入りスポットなどを綴(つづ)ったエッセーガイド。1540円(税込み)。

 

都の歴史がぎゅっと詰まった東山縦走スタート 「京都一周トレイル」で冒険旅#2

旅の賢人たちがつくった
女子ひとり海外旅行最強ナビ(辰巳出版)

連載「ちょっと冒険ひとり旅」著者の山田静さんが、海外ひとり旅に行きたいすべての人にお届けする、旅のノウハウをぎゅっと詰め込んだ1冊。行き先の選びかた、航空券やホテルをお得に効率よく予約する方法、荷物選びと荷造りのコツ、現地での歩きかたのツボ、モデルルート、遭遇しがちなトラブルとその回避法など、準備から帰国までまるっとカバーしました。旅の達人によるコラム記事やアンケートも満載で、ひとり旅の準備はまずこの1冊から。1650円(税込み)。

PROFILE

山田静

女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『旅の賢人たちがつくった ヨーロッパ旅行最強ナビ』『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)、『決定版女ひとり旅読本』(双葉社)など企画編集多数。最新刊『旅の賢人たちがつくった スペイン旅行最強ナビ』(辰巳出版)。2016年6月中旬、京都に開業した小さな旅館「京町家 楽遊」の運営も担当。

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