あの街の素顔

ついにあこがれの地・小樽に立つ 北海道の旅

晩夏の北海道の旅。洞爺湖と有珠山を紹介した記事を先日公開しましたが、お読みいただけたでしょうか。私の住む福岡からはるばる北海道まで来たのですから、これだけではもったいないですよね。そこで、港町として知られる小樽市を訪ねました。古くて味わいのある建物を見て回ったり、運河をめぐるクルーズ船に乗ったり、名物の寿司(すし)や海鮮丼に舌鼓を打ったり。体験し、実感した小樽の魅力をたっぷりご紹介しましょう。
(文・写真、宮﨑健二)

<有珠山でへとへと、洞爺湖でのんびり 北海道を訪ねて>から続く

はるばる来たぜ、小樽

洞爺湖温泉から約3時間、バスにゆられて札幌へ。JRに乗り継いで小樽駅に着きました。

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JR小樽駅。ついにやって来ました

小樽と聞くと、鶴岡雅義と東京ロマンチカの1967年発売の大ヒット曲「小樽のひとよ」を思い出します。私がはなを垂らしながら田舎道を走り回っていた頃の曲で、小樽とはどんなロマンチックなところなのだろうと、子ども心にあこがれを抱いたものでした。そして、人生の晩年を迎えた今、私はついに小樽の地に立ったのです。涙、涙……。

天狗山から街を一望

まずは、小樽の街を知ろう。そう思った私は、郊外の天狗山に上ってみることにしました。バスでふもとまで行くと、「小樽天狗山ロープウェイ」が見えました。これに乗って一気に山頂駅へ。

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運賃は大人が往復で税込み1400円。私は税込み1850円のバスとのセット券を利用しました

この天狗山からは小樽市内が一望できます。

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天狗山からの眺め。海には船も何隻か見えました

海に向かって広がる市街地。港町らしい風景です。

風格ある近代建築を訪ねて

さあ、市の中心部に行ってみましょう。歩き始めると、いきなり古い建物に出くわしました。旧三井銀行小樽支店。

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1927年に建てられた旧三井銀行小樽支店。優れた美術品、工芸品を展示する小樽芸術村の会場の一つとして今は利用されています

なんと風格のある建物でしょう。外壁のアーチがとてもチャーミングです。
小樽では、かつて銀行として建てられた古い建物が目立ちます。明治期から大正期にかけて中央の金融機関が進出し、北海道の金融の中心地だった名残です。

旧三井銀行小樽支店のすぐ隣では色とりどりの風鈴が風に揺れていました。

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風鈴はチリンチリンと涼しげな音を奏でていました

小樽は明治期から北海道の海の玄関口として発達してきました。海運の街であったことを物語るのが、かつて倉庫だった建物群です。たとえば、旧渋澤倉庫。


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三角屋根の旧渋澤倉庫。1892年ごろに建てられたそうです

ユニークな形をしていて味わいがありますね。
そして、旧日本石油(株)倉庫。

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旧日本石油(株)倉庫。運河公園の中にあります

こうしたかつての倉庫は小樽運河の近くに立ち並んでいます。今は飲食店などに使われている旧倉庫も少なくありません。
今度は煙突がにょきにょき出ている建物が見えました。

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工場でしょうか。煙突の数と形にびっくりです

小樽三角市場で海鮮丼に舌鼓

おなかがすいたので昼食を。小樽駅のすぐそばに、海産物を扱う土産店や食堂が集まる小樽三角市場があります。ここで、海鮮丼を食べました。新鮮なボタンエビ、イクラ、ウニがのっています。

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3種の海産物を選ぶことのできる海鮮丼。税込み2090円でした

うまし! イクラとウニはご飯と一緒に口の中にかきこみました。こうしてぶっかけ飯のように味わうと、おいしさが増します。

市街地に戻ると、人力車が走っていました。風情がありますね。

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夏に人力車を引くのは大変そうです

線路を残したまま憩いの場に

小樽駅と港の間には線路が横切っていました。廃線となった旧国鉄手宮線です。

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旧国鉄手宮線の線路。今にも警笛や遮断機の音が聞こえてきそうです

1880年に札幌と結んで開通。石炭を小樽港まで輸送する役割を担いました。廃線になったのは1985年です。鉄道跡というと、線路を撤去して公園などに変えてしまうことが少なくないのですが、ここでは線路を残したまま遊歩道にしています。なかなか粋な演出だと感心してしまいました。

ビール何を飲む? 選んだのは……

歩き疲れて、のどが渇きました。こんな時はビールですよね。さて、何を飲みましょうか。ここは北海道だから札幌? いやいや、放送が再開された大河ドラマ「麒麟(きりん)がくる」も話題になっているしなあ。でも、この「&TRAVEL」は朝日でしょ? 自民党の総裁選と合流新党の代表選さながらの活発な論戦が脳内で交わされました。そして、出た結論は……小樽ビール!

小樽運河のすぐそばのビアパブ「小樽倉庫No.1」に行きました。倉庫だった建物を使った店内は広々。天井が高く、開放感があります。


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小樽倉庫No.1の店内。中央に大きな仕込み釜とろ過釜が設置されています

この店ではビールを醸造しています。その過程を見学させていただきました。
小樽の水は軟水なので、ビールづくりに適しているそうです。仕込み釜、ろ過釜、発酵室を順に見ていきます。

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ろ過釜を開けて見せていただきました。見学は無料です

「飲んでみませんか?」。案内してくれた女性が小さな紙コップを差し出しました。ドンケルというビールの一番搾り麦汁です。なにしろビールだ。ものすごく苦いに違いない。そう確信した私は、バラエティー番組の罰ゲームでわさびが大量に入ったにぎり寿司を食べさせられた時の出川哲朗のゆがんだ表情をスタンバイしました。「ヤバいよ、ヤバいよ」と心の中で唱えながら、おそるおそる飲んでみると……。

私は出川哲朗をかなぐり捨てて、スピードワゴンの井戸田潤に変身せざるをえなかったのです。
「甘ーーい!」。どのくらい甘いかというと、ドラマ「いいね!光源氏くん」に出演していた千葉雄大のルックスと同じくらい甘い! 甘すぎ! びっくりしてしまいました。ビールのあの苦みは、麦汁にホップを加えることでできあがるのだそうです。

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小樽ビールはヴァイス、ドンケル、ピルスナーの3種類。1本税抜き294円で販売されていました

ソーセージとサラダをさかなに小樽ビールを飲んでみました。ビールの種類はピルスナー。ほんのりいい香りがして、さっぱりしたのどごしでした。

幻想的な運河のナイトクルーズ

さあ、日が暮れてきましたよ。運河を見ると、暗闇の中を船がゆっくり近づいて来ました。運河をめぐるナイトクルーズの船です。

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小樽運河クルーズの大人の料金はデイクルーズが税込み1500円、ナイトクルーズが税込み1800円です

乗ってみました。新型コロナ感染予防のために乗客は互いに距離を保って座り、出発しました。

小樽運河は1923年、海を埋め立ててつくられました。運河は陸部を掘ってつくられることが多く、埋め立て式運河は珍しいそうです。船はとても静かで、すべるように進んで行きます。橋をくぐり、いったん小樽港に出て市街地のあかりを眺めた後、運河に戻りました。昼間見た倉庫群を運河側から見ていきます。夜の倉庫群はライトアップされており、遊歩道のガス灯のあかりも見えて、とても幻想的です。

係留されている釣り船が見えてきました。

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釣り船。何が釣れるのでしょうか

そして、運河をはさんで右に倉庫、左に市街地が。約30分間、船から見る独特の夜景を楽しみました。

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船から見る倉庫と市街地。あかりが水面に映ってゆらゆらと揺れていました

やっぱり魚介が食べたい! 寿司屋通りへ

さあ、時刻は午後8時すぎ。小樽に来たからには魚をもっと食べたい! 昼間の海鮮丼だけでは飽き足りません。そこで、寿司屋が集中している寿司屋通りに行ってみました。

しかし、コロナ禍のせいかあかりが灯っている店は少なく、ちょっと寂しげな雰囲気です。その中で、営業していた「鮨(すし)まるやま」という店に入りました。

注文したのは、特選小樽にぎり。トロ、ホタテ、ボタンエビ、ウニ、シャケ、イクラ、ズワイガニなど10貫です。

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どうです、この光沢。税込み3300円でした

うまいなあ。福岡も海産物がうまいのですが、小樽も負けていません。特にイクラはおいしさが違いました。「うーん、やっぱり海産物は日本海側に限るばい」。ひとりごちて、小樽に勝手にエールを送りました。

満腹になって店を出ました。港町の夜は静かにふけていきます。子どもの頃に「小樽のひとよ」を聴いて以来の念願がかなった旅の夜。小樽のひと夜、最高でした。

■小樽天狗山ロープウエイ
https://tenguyama.ckk.chuo-bus.co.jp/

■小樽ビール・小樽倉庫No.1
https://otarubeer.com/jp/?page_id=357

■小樽運河クルーズ
https://otaru.cc/

■小樽観光協会
https://otaru.gr.jp/

<有珠山でへとへと、洞爺湖でのんびり 北海道を訪ねて>

PROFILE

  • 「あの街の素顔」ライター陣

    こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、江澤香織、高松平藏、松田朝子、宮﨑健二、井川洋一、草深早希

  • 宮﨑健二

    旅ライター。1958年、福岡市生まれ。朝日新聞社入社後、主に学芸部、文化部で記者として働き、2016年に退社。その後はアウェイでのサッカー観戦と温泉の旅に明け暮れる。

有珠山でへとへと、洞爺湖でのんびり 北海道を訪ねて

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