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クラシカルな車両でゆったり 1等車と5つ星ホテルで巡るスイス1周鉄道旅(8) モントルー~インターラーケン

スイスで5つ星ホテルを泊まり歩き、鉄道の1等車で国をぐるり1周する――。&TRAVEL副編集長が2019年8月から9月にかけて、そんな旅を体験しました。写真家の猪俣博史さんと二人三脚で巡った9日間の珍道中、第8回はモントルーからユングフラウ山のおひざ元、インターラーケンへ。昼も夜も豪華なコース料理にありつけると喜んでいたものの、またしても予期せぬトラブルに見舞われたのです。本連載はコロナ禍のためしばらく公開を見合わせていましたが、スイスがEU域外からの旅行者受け入れを本格化させたのを受けて再開しました。
(文:&TRAVEL副編集長・星野学 写真:猪俣博史)

第7回<クイーンゆかりの地をめぐる>から続く
第6回<絶景ワインヤードでクラクラ>はこちら
第5回<フレディ・マーキュリーの部屋に?!>はこちら
第4回<涙して見上げたマッターホルン>はこちら
第3回<揺れる車内で酒を注ぐ神業>はこちら
第2回<世界遺産の360°ループ>はこちら
第1回<チューリヒ空港~ポントレジーナ><はこちら

下調べしていたはずの駅で!

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朝日に照らされたレマン湖を部屋から眺める

ロックバンド「クイーン」ゆかりの地で、感慨深く滞在したモントルーと、お別れの時がきました。2019年8月29日朝、ホテルを出てモントルーの駅へ向かいます。

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行きにタクシーで迎えにきてもらった時、歩いても駅からホテルまで10分程度とわかったので、荷物をひいて歩いていきます。駅にエスカレーターがあることも確認済みで、あれに乗ればホームへは楽々上がれるはず。

ところが、こんな時に限ってエスカレーターは動いていません。私たちが乗る列車は8時44分発の特急「ゴールデンパス MOB ベルエポック」。駅に着いたのは8時25分。朝早すぎるのか? 木曜日なのに。故障? 理由はわかりませんが、とにかくエスカレーターは動かない。探せば、エレベーターがあるかもしれません。でも時間のゆとりはあまりないし、見つからなかった時の徒労感を朝から味わうのもくやしい。仕方が無い。荷物を持って階段を上ることにしました。

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エスカレーターが動いておらず、スーツケースを持って階段を上るはめに

国際線の機内へ持ち込める小さなトランクですが、旅の間に手に入れた資料や機材で結構な重さになっています。ちょっと持ち上げて1段上にどすんと置く、を繰り返し、たまに勢いをつけて2段上まで持ち上げて、ため息をつく。5分近くかけて、踊り場も含めてホームまで66段を上りきったときは、もう汗まみれです。

ベルエポック風の豪華な車両

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豪華列車「オリエント急行」のイメージを模したという「ゴールデンパス MOB ベルエポック」

とはいえ、ベルエポック風の豪華な列車を目の前にすれば、そんな疲れも吹っ飛びます。荷物置き場にトランクを置き、予約した席へ腰を下ろします。

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木目調の内装に気品があふれる1等車

これまで乗ってきた絶景列車「グレッシャー・エクスプレス(氷河特急)」や「ベルニナ・エクスプレス」は、いずれもモダンなデザインで、眺望重視のパノラマ列車でした。それに対してこの列車は、クラシカルで洗練され、いすの座り心地もワンランク違います。内装は、JR九州の特急「ゆふいんの森」を思わせる色合いです。

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走る姿も優美な列車

音も立てずにホームを離れた列車は、らせん状にぐんぐん斜面を上っていきます。5分もすると、レマン湖ははるか眼下に。

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外の景色ばかりでなく、「額縁」としての車内も見応えがある

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高級リゾート「西の横綱」に寄り道

この日の目的地は、ユングフラウのおひざもとインターラーケンですが、その前に、立ち寄る街がありました。グシュタードです。世界中のセレブ御用達のリゾート地で、スイスでは、東のサン・モリッツ、西のグシュタードが双璧とのこと。スケジュールの都合で1泊するのは無理でしたが、せめてその「西の横綱」の様子を取材していこう、と考えたのです。

午前10時09分、グシュタード駅に到着。まず、ホテル「グシュタード・パレス」へ向かいました。1913年創業のランドマークのような宿です。セールス&マーケティング・ディレクター、アニヤ・ウルマンさんの案内で、館内を見せていただきました。

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ホテル「グシュタード・パレス」


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ホテルの周囲は、ゲレンデがたくさん

まずは部屋から。デザイン性が際立つこんな部屋がありました。

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アルパイン・スイート・マウンテン・ビュー(2020年8月現在、1泊1780スイスフラン〈約20万8千円〉~)

旅行かばんのようなユニークな机がある部屋も。ゆったりと落ち着いた雰囲気です。

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コーナー・スイート・マウンテン・ビュー(同、1泊1980スイスフラン〈約23万円〉~)

こちらはスパ。夜になると、プールの上に天井から床が下りてきて、ダンスフロアに早変わりするというから驚きです。

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広々としたスパ

屋内プールやテニスコートを見て回るうちに、お昼時に。レストランでランチをいただくことにしました。テラスにあるレストランのルーフの下で、ワインを傾けよう、というもくろみです。

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ランチを食べた「ル・グラン・レストラン&ラ・グラン・テラス」

お昼のコースは2種類。猪俣さんは「インド風」を、私は「日替わり」を選びました。
夏の日差しはルーフで和らげられ、その下を乾いた風が通ってきます。飲み物は、おまかせで選んでもらったスイスワインの白と赤。

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いただいたコース料理。(左上)猪俣さんの前菜・ザクロ果汁とタマネギ、トマト、パクチーで味付けしたエビ、(左下)猪俣さんのメインディッシュ・ゴア風フィッシュカレー、(右上)私の前菜・エビのチャツネとスパイス風味、(右下)私のメインディッシュ、子牛ステーキのスライス

真っ昼間からワインを日にかざし、ぐいと飲む。ああ、幸せ。「これは仕事だ、仕事だ」と、自分に言い聞かせながら。料理は、東洋のエッセンスを加えた創作料理、という趣向でした。質量ともに満足です。

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グシュタードの街で、思わぬトラブル

すっかり満ち足りた私たちは、腹ごなしを兼ねて、街歩きをすることにしました。駅前の観光局でガイドのマルグレット・ミラーニさんと待ち合わせ、荷物を預けて、いざ出発!

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グシュタードの中心街

駅の周辺には石畳の道が通い、ルイ=ヴィトンやプラダといったブランドショップがずらり。富裕層向けのリゾート地なのだと納得しつつ、不思議な統一感があります。よくみると、どのショップも似たような建物。「シャレーと呼ばれるこの地域の伝統建築です。1階が石造りで、2階や3階は木造なのが特徴です」と、ミラーニさんが教えてくれます。

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シャレーと呼ばれる造りの建物


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聖ニクラウス礼拝堂

14世紀に創建された聖ニクラウス礼拝堂を見学し、中心部のメインストリートを歩いていると、暑さがひどくこたえてきました。さっきのランチで、ワインをずいぶん飲んだからなあ……。そんなことを考えながら、うつむいて歩いていると、一瞬、気が緩んで、右手からiPhoneが滑り落ちました。

「バチッ!」

嫌な音をたてて、スマホは石畳に転がりました。慌てて拾うと、タッチパネルのガラスに大きなひびが。動くだろうか……。試したところ、機能に問題はなさそうです。「痛ッ!」。細かい割れガラスが、左手の人さし指に刺さりました。簡単には取れそうもありません。宿についたら何とかしなきゃ。

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グシュタード駅

案内所で荷物を受け取り、グシュタード駅へ。ホームでミラーニさんに「またいつでもいらっしゃい」と見送られて、再び特急「ゴールデンパス MOB ベルエポック」に乗り込みます。途中のツヴァイジンメンで普通列車に乗り換え、合計1時間45分でこの日の宿泊地、インターラーケンに着きました。

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湖の間 インターラーケン

この街のランドマークでもある宿泊先「ヴィクトリア・ユングフラウ・グランドホテル&スパ」の送迎車で、宿に向かいます。建物が数分で見えてきました。

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ヴィクトリア・ユングフラウ・グランドホテル&スパ

「ようこそ、おいで下さいました」。フロントで、ホテルのPR担当、パトリシア・ヘルドさんが迎えてくれました。
「街の名前インターラーケンは、湖の間、を意味します。街の西にはトゥーン湖、東にはブリエンツ湖があります」。なるほど、そのまんまの名前なんですね。

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私が泊まった部屋

チェックインして部屋に入ると、ホテル真向かいにある広場のかなたにユングフラウが見えます。ぼんやりながめていると、次から次へと、広場にパラグライダーが舞い降りてきます。

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部屋の窓から外を見ると、向かいの広場にパラグライダーが降りてきた

ヘルドさんいわく、ホテルの背後にある山からここまで、パイロットと同乗して飛行を楽しむアクティビティーだそうです。高所恐怖症の私には、とても無理……。

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ディナーは創意工夫の塊

一休みした後、地中海料理のレストラン「ラ・テラス」で、お待ちかねのフルコースディナーです。「ここでは、可能な限り近郊でとれる食材を使うことにこだわっています」と、同席したヘルドさんが説明してくれます。

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レストラン「ラ・テラス」から望むユングフラウ

五つ星ホテルをはしごする旅とあって、どの宿の料理も負けず劣らずおいしいのですが、創意工夫という点では、ここが群を抜いていました。

たとえば、これ。

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パイクパーチの料理

こんにゃくのように見えるのは、パイクパーチという大型淡水魚の切り身。キャビアを添えキュウリのソースが。お味はさわやか、あしらいは菜園のよう。

対するこちらは、鉢植え風ですね。

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セロリのムースリーン、リンゴ、ウォールナッツの料理

窓の外に目をやれば、暮れなずむ空にユングフラウがぼんやり浮かび上がります。

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薄暗い空に映えるユングフラウ

「キッチンからお届けするスイス・クリスタルジン&トニック」というメニューがありました。カクテルをわざわざメニューに? しかもコース料理の途中で? と考えていたら、ステファン・ビール総料理長がワゴンにジンのボトルとシャーベットを載せて現れました。

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ステファン・ビール総料理長

総料理長はおもむろにジンのボトルを手にしたかと思うと、中身をシャーベットにかけるではありませんか。シャーベットをトニックウォーターに見立てたカクテル仕立ての箸休めとは、意表をつかれました。きりっとしたジンの風味とシャーベットの爽やかさが、次の料理を待ち受ける心持ちにしてくれます。

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(左上)私のメインディッシュ・豚肉料理(右上)猪俣さんのメインディッシュ・イワナ料理(左下)箸休めに試験管入りのジュースとお菓子(右下)見た目は観葉植物のようなデザート

メインディッシュでは、猪俣さんはイワナ料理を、私は豚肉料理を頼みましたが、やはり見た目は楽しげなガーデン風でした。箸休めに試験管入りのジュースが出てきたかと思うと、見た目はまるっきり観葉植物というデザートが供されたりと、もう、遊び心たっぷりです。心弾む夕食となりました。

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PR担当のヘルドさん(右)と、ビール総料理長

部屋に戻り、ソファでくつろいでいると、次第に酔いがさめてきます。「ん?」。一瞬、左手の人さし指に、チクリとした痛みが。そういえば、昼間割れたスマホのガラスが刺さったことをすっかり忘れていました。

手荷物から縫い針を取り出し、ガラスを抜こうとしますが、破片が細かいうえ、左利きの私が右手で作業をするので、うまくいきません。5分ほどでどうやら取れた気配が。ふう、これで一安心。

明日は、ユングフラウ登山です。

(つづく)

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【取材協力】

スイス政府観光局

スイス インターナショナル エアラインズ

スイストラベルシステム

スイス・デラックス・ホテルズ

スイス1周鉄道旅

PROFILE

&編集部員

国内で、海外で。&編集部員が話題の旅先の新たな魅力を「発見」し最新情報をリポートします。

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