クリックディープ旅

制限時間は2時間! 座間味島乗り尽くしに挑む 沖縄の離島路線バスの旅10

下川裕治さんが沖縄の離島の路線バスを乗り尽くす旅。前回で路線の多い石垣島を制覇。今回の座間味島はフェリーで日帰りするため、滞在できるのはたった2時間! 時間内に乗り尽くすため事前に乗り継ぎ方法を考え、港に到着しますが……。

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと、相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

(写真:中田浩資)

沖縄の離島旅・座間味島

座間味島バス系統図

7月初旬、石垣島からいったん東京に戻った。それほど間を置かず、沖縄本島周辺の離島の路線バスに乗るつもりだった。ずれ込むと沖縄は台風の季節を迎え、思うような旅ができなくなってしまうからだ。ところが新型コロナウイルスの感染が東京で再拡大。続いて沖縄も感染者が急増し、沖縄県には県独自の緊急事態宣言が出てしまった。いったん近づいた沖縄が、また遠のいてしまったような感覚。東京で待機することになった。

沖縄の緊急事態宣言は9月5日で解除。さてという矢先に台風10号が沖縄に接近。沖縄の離島の路線バス旅は、新型コロナウイルスに翻弄(ほんろう)され、台風に振りまわされ……。

9月8日、ようやく座間味島に向かうフェリーにのることができた。

長編動画

那覇の泊港から座間味島へ向かう沖縄の海を。今回、音声は同時収録。船のデッキで動画用のカメラをまわし、その横でまぶしい海を眺めながらの会話。翡翠(ひすい)色の海にみとれて会話も途切れがち?

短編動画

座間味島の島内を走る路線バスの車窓風景を。路線の距離は短いが、なかなか変化に富んだ風景が続きます。

今回の旅のデータ

座間味島へのアクセスは船だけ。通常期は那覇の泊港からフェリーざまみが1日1往復、高速船クィーンざまみが1日2往復の態勢。フェリーざまみは片道約2時間で運賃は往復4090円。高速船クィーンざまみの直行便は片道約50分。運賃は往復6080円。ほかに環境目的税の「美ら島税」がひとり100円。これは船の切符を買うときに払うことになる。
座間味島の島内の村営バスは乗車1回300円。

沖縄の離島旅「旅のフォト物語」

Scene01

国際通り

今年の2月、久米島や宮古島へ向かったときに那覇に寄った。そのとき、すでに那覇の国際通りは寂しかった。コロナ禍で外国人観光客の来日が難しくなっていたからだ。今回、国際通りを歩くと……。沖縄で新型コロナウイルスの感染が拡大し、県独自の緊急事態宣言。ようやく解除されたが、観光客はまだまばら。

Scene02

港

9月6日、台風10号の強風域に沖縄は包まれた。翌7日に那覇入り。天候はすでに安定していた。急いで座間味行きの船が出る泊港へ。しかし船は欠航。台風の余波で波がまだ高いという。そして8日、ようやく座間味島に向かうことができた。台風シーズンの沖縄の旅。のんびり構えていくしかないですなぁ。

Scene03

検温

那覇空港の到着出口で検温。泊港のターミナルで切符を買い、フェリーに向かうときにも検温チェック。そして船に乗り込む前にも検温が行われた。前夜、食堂に入るときも検温が必要だった。いまの沖縄は検温の嵐。新型コロナウイルスの拡大予防が、いちばん徹底しているエリアかもしれない。

Scene04

フェリー

通常、座間味島へはフェリーが1往復、高速船が2往復。しかしこの時期、フェリーと高速船が1日おきの運航だった。理由は新型コロナウイルス。船の運航にかかわるスタッフに感染者が出てしまい、濃厚接触者が働くことができなくなったためとか。この日はフェリーが1往復のみ。1週間ほどで正常に戻るというが。

Scene05

海

沖縄はコロナ禍に揺れていても、この翡翠色の海を目にすると、気分は一気に沖縄になってしまう。太陽が差し込む沖縄の海の色には、いつも言葉を失う。フェリーの甲板からこの海を眺める。なんて優しい海の色だろう。この海を見たらもう満足。座間味島のバスを乗り尽くすという目的を忘れそうになってしまう。

Scene06

バス

座間味島の路線バスの停留所は、港のターミナルの裏手にあった。そこに掲げてあった時刻表を見て、一気に現実に戻された。事前にチェックしていたスケジュールと違う。この日のフェリーで那覇に戻る日程。島の滞在時間は2時間。はたして乗り切ることができる? 焦って乗り継ぎ方法を組みたてていると、バスがやってきてしまった。

Scene07

座席

「聞くしかない」。焦り気味に運転手さんに畳みかける。「30分発の古座間味ビーチ行きに乗った場合、どうやったら阿佐まで行けるんですか?」。すると運転手さんはこういった。「このバスにずっと乗っていればいいさー。全部まわるから。まず座りなさい」。「はっ?」。感染予防用の席を避けて座ったのだが……。

Scene08

車内

乗客は僕と中田浩資カメラマンだけ。車内の座席は妙に少ない配置で、これなら感染予防用の席を設けなくても、などと考える。いや、そういうことではない。2時間で全路線を乗り尽くすことができるのか。事前に調べていた乗り継ぎ方法が通用しなくなったいま、運転手さんの言葉にすがるしかない。

Scene09

運転手の新城薫さん

目的地の古座間味ビーチには3分で着いてしまった。近すぎる。停車時間は2分。運転手の新城薫さん(60歳)が冷静に説明してくれる。「このバスは港に戻って阿真キャンプ場に向かいます。そこからまた港に戻って阿佐へ。そこから港に戻る。それで全路線に乗ったことになりますよ。フェリーにも間に合います」。ほっと胸をなでおろす。

Scene10

バス停

ただ路線バスに乗っているだけでいい。座間味島のバス制覇はとんでもなく楽だった。時刻表は路線ごとに表記されていたが、実は同じバスがぐるぐるまわっているだけだったのだ。港に戻ったバスは、所要3分で阿真キャンプ場に着いてしまった。距離も短すぎる。手づくり感が伝わるバス停。座間味島のバスは本当に小さな離島のバスだった。

Scene11

ビーチ

停車時間は短いが、阿真キャンプ場前のビーチに行ってみた。せっかく座間味島に来て、ビーチも見ずに帰るのも……と運転手さんが気を遣ってくれた。それに甘えて目にしたビーチがこれ。ちょっと気が遠くなりそうな世界でした。時間は1分もなかったが、記憶にはずっと残りそう。

Scene12

道

走る距離は短いが、変化に富んだ車窓風景が続いた。沖縄の濃い緑の林に囲まれた道。漁船が泊まる港の脇も走る。乗客は港から阿真キャンプ場まで乗ったザックを背負った男性がひとり。それだけだった。ほとんど貸し切り状態。なんだかぜいたくな路線バス旅に思えてきた。

Scene13

車窓の風景

バスは海に沿った道を快走した。なんだかうっとりするようなバス旅である。バスに冷房が利いていないが、開け放たれた窓から、沖縄の潮風が吹き込み、心地いい。ずっと乗っていたいのだが、ものの3分から5分で目的地に着いてしまう。そこでしばらく停車して折り返す。急ぎ旅のような、のんびり旅のような。

Scene14

阿佐

バスは阿佐の集落に着いた。この港は琉球王朝が貢物を中国に贈る船の風待ち港として歴史に残っている。台風のときの避難港だったようだ。船の船長は座間味島のある慶良間(けらま)諸島の人がなることが多かったとか。阿佐に残る船頭殿(せんどうろん)という名字がその名残だといわれている。

Scene15

弁当

午後1時10分。港にバスは戻り、乗り尽くし旅は終わった。これだけ乗って運賃は300円。午後2時のフェリーに間に合う。港の前の売店で、天ぷらと漬けマグロが載った丼風の500円弁当を買う。東京なら1500円? そのとき、中田カメラマンがバスのなかに忘れ物をしたことが発覚。でも、心配なし。古座間味ビーチに向かった同じバスが10分後に戻ってきました。これが座間味島のバス、助かりました。

※取材期間:2020年9月7日~9月8日
※価格等はすべて取材時のものです。

【次号予告】次回は伊江島のバス旅を。

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BOOK

制限時間は2時間! 座間味島乗り尽くしに挑む 沖縄の離島路線バスの旅10
世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア大陸横断2万キロ (朝日文庫)
時速35キロの遅すぎる列車に耐え、中国では切符獲得戦争に奮闘。紛争地帯であわや列車爆破テロ、ビザ切れピンチ……そして潜伏。言葉を失う数々のトラブルに遭遇する列車旅。
シベリアからポルトガルまで26夜も寝台列車に揺られた、旅を超えた「冒険」物語。変化する旅事情をコラムに収録。

定価:990円(税込み)

PROFILE

  • 下川裕治

    1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「一両列車のゆるり旅」(双葉社)、「週末ちょっとディープなベトナム旅」(朝日新聞出版)、「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)など。最新刊は、「世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア大陸横断2万キロ」 (朝日文庫)。

  • 中田浩資

    1975年、徳島県徳島市生まれ。フォトグラファー。大学休学中の1997年に渡中。1999年までの北京滞在中、通信社にて報道写真に携わる。帰国後、会社員を経て2004年よりフリー。旅写真を中心に雑誌、書籍等で活動中。

13路線ある石垣島の総仕上げ 沖縄の離島路線バスの旅9

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