宇賀なつみ わたしには旅をさせよ

大学時代、たくさんの仲間と旅した神津島 宇賀なつみがつづる旅(13)

フリーアナウンサーの宇賀なつみさんは、じつは旅が大好き。見知らぬ街に身を置いて、移ろう心をありのままにつづる連載「わたしには旅をさせよ」をお届けします。今回は、大学時代にたくさんの仲間と訪れた神津島(こうづしま)の旅。この頃からすでに旅好きの一面が……。

(文・写真:宇賀なつみ)

「夏休みの終わり 神津島」

夏の終わりに、涼しい風が吹くようになると、
毎年必ず思い出す旅がある。

大学生の頃、伊豆諸島の神津島を、
仲間たちと20人ほどで、訪れた。

どうして神津島だったのか、今はもう思い出せない。
近くて遠いから、よかったのだろうか。

私はあの頃から旅好きで、
出欠確認から予約、集金までを、すべてひとりで担当した。
それなりの人数だったから、大変なこともあったかもしれないが、
今は、楽しくて楽しくて仕方がなかった記憶しかない。

夜遅くに竹芝桟橋に集合して、
大型船に乗り、一晩かけてゆっくりと島に向かう。
お金はなくても、時間はたっぷりとある、学生ならではの旅だ。

皆、テンションが高くて、
ほとんど眠らずに夜明けを迎えた。

あの頃はまだスマホがなかったけど、
トランプをしたり、デジカメで写真を撮り合ったり、
そんなことで十分だったのだ。

眠い目をこすりながら、島に降り立つと、
静かな港と、透明な海に驚いた。

神津島は、当時人口2000人ほど。
観光客は、すぐにそれとわかってしまうはずだが、
島の人は温かくて、
道に迷っていれば声をかけてくれたし、
浮かれている学生たちを、優しく見守っていてくれた。

岩場

毎日海で泳いだ。
遊歩道には飛び込み台があって、皆で順番に度胸試しをした。

飛び込む直前は少し怖いけど、
エイッと一歩踏み出してしまえば、意外となんとかなる。
むしろ、とても気持ち良かったりして、
もっと早く飛び込んでしまえばよかったと思う。

これって、何に対しても言えることかも。

挑戦しないで諦めるより、
怖くても一歩踏み出した方がいい。

そんなことを学んだなんて言ったら大げさだけど、
きっとすべての経験が、今と未来につながっているんだと思う。

大人になること。社会に出ること。
楽しみなようで、少し怖かった。

気の合う仲間と、楽しいだけの時間を過ごしていられるのも、
残り少しだと、気づき始めていた。

海

最後の夜、だんだん暮れていく空の下で、BBQをした。
海辺で火をおこして、野菜を切って、肉を焼いて。
ただそれだけだったけど、最高においしかった。

すっかり暗くなった時間の風は冷たかった。
私たちの住む街では見られない星くずが、
視界いっぱい広がっている空を、ずっと眺めていた。

あの頃は、何でもないようなことのひとつひとつが、
まぶしいくらいに輝いていた。

永遠に続くような気がしていた夏休みも、
いつかは終わるんだということを知った。

あの頃に戻りたいとは思わない。
やり残したことがないから、
きっと戻っても、同じことを繰り返すだけだろう。

それでも、懐かしく思い出すことはある。

温泉に忘れてきた財布を、捜してきてくれたあいつ。
夕食の準備をはりきってしてくれた、料理上手なあの子。

みんな、元気にしてるかなぁ。

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PROFILE

宇賀なつみ

東京都出身。テレビ朝日「報道ステーション」の気象キャスターとしてデビュー。同番組スポーツキャスターとして、トップアスリートへのインタビューやスポーツ中継等を務めた後、「グッド!モーニング」「羽鳥慎一モーニングショー」など、情報・バラエティー番組を幅広く担当。2019年にフリーランスとなり、現在はテレビ朝日「池上彰のニュースそうだったのか!!」や、自身初の冠番組「川柳居酒屋なつみ」を担当。TBSラジオ「テンカイズ」やTOKYO FM「SUNDAYʼS POST」など、ラジオパーソナリティーにも挑戦している。2020年4月からは、MCを務める、関西テレビ・フジテレビ系「土曜はナニする!?」がスタートした。

マルタの海で刻み込まれた思い出 宇賀なつみがつづる旅(12)

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