楽しいひとり温泉

温泉+放熱 塩湯のミストが降り注ぐ驚きの光景 小浜温泉「伊勢屋」

日本の旅に欠かせない温泉。全国47都道府県に温泉がありますが、その個性は様々。今回旅した、長崎県・雲仙市の小浜(おばま)温泉は、あちこちから、もうもうと湯けむりが上がっています。100度を超える高温の源泉と豊富な湯量から、その放熱量は日本一と言われるほどの迫力です。2019年10月に全面改装オープンした伊勢屋へ行ってきました。何といっても圧巻だったのは独自の「源泉放熱装置」がついた大浴場。熱い源泉がモンスターのように湯けむりを上げて流れ落ちる感動の光景を眺めて入る温泉は、“一湯”の価値あり!

(トップ写真:伊勢屋の熱い自家源泉を放熱して大浴場へ注ぎ込む)

■連載「楽しいひとり温泉」は、全国各地の温泉をめぐり、温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する、温泉ビューティー研究家の石井宏子さんが、テーマごとにひとり温泉にぴったりなお宿を紹介します。

スタイリッシュな建物に、もうもうと湯けむりが上がる

伊勢屋

湯小屋から湯けむりが上がる伊勢屋

海沿いの道に立つ伊勢屋は、全ての部屋から海が眺められる自家源泉かけ流しの宿。スタイリッシュな黒い建物の前には、もうもうと湯けむりを上げる湯小屋。この不思議な光景の理由は後ほど、大浴場へ行って明らかになるのです。

中庭

エントランスロビーの奥にはくつろげる中庭

エントランスを入るとロビーの奥には吹き抜けの中庭があります。開放感があり、ソーシャルディスタンスも保てるパブリックスペースでありながら、中庭という囲われた空間で、守られている安心感があります。

全室オーシャンビューで専用の温泉付き

ジュニアスイート

部屋は、ジュニアスイート(写真)とスタンダードの2タイプ

すっきりとした部屋は、フローリングにベッド。琉球畳のリビングには座り心地のいい椅子とテーブルが置かれていてモダンです。畳でごろごろもしたいけど、くつろぐときは椅子に座りたい。そんな現代の生活様式にあったインテリアで、居心地がいい。

温泉

全室専用の温泉付き。窓から海と空が眺められる

各部屋には専用の温泉があります。自家源泉のかけ流しですが、熱い源泉なので入る時に好みに合わせて加水して温度調整をします。窓をあければオーシャンビュー。夜は星を眺めて入ることができます。

熱い塩湯の源泉が流れ落ちる圧巻の大浴場

男女別大浴場

男女別大浴場の奥に、源泉を天井から流す源泉放熱装置がある

いざ、伊勢屋名物の大浴場へ。面出薫氏が率いるライティングプランナーズアソシエーツ(LPA)の照明デザインで、湯けむりが生き物のように動き出します。近寄って見れば見るほどすごい迫力。壁一面に枯れ草のようなものがしつらえてあります。100度を超える源泉を、天井からこの壁をつたわせて流すことで、空気に触れる面積を大きくし時間をかけて放熱させ、温度を下げているのです。この工夫により超高温の源泉でも加水をせずに100%かけ流しで入ることが実現しました。湯けむりの光景の秘密は、この源泉放熱装置だったのです。

熱いけど、やわらかくて包まれるような感触。ぐっとくるけど癒やされる。なんだこれは……。小浜温泉のツンデレの不思議な魅力に、すっかりはまってしまいました。泉質は、ナトリウム-塩化物温泉。弱アルカリ性。人間の体液とほぼ同じ浸透圧である「等張性」の温泉です。塩の成分が肌の上を皮膜となって覆い、熱を逃がさず保温して、ぽかぽかしっとりが持続します。

サンセット

部屋の窓から眺める橘湾のサンセット

温泉から戻ると部屋がオレンジ色に染まっていました。障子を開けると、大きな夕日が海に沈みかけています。海辺の足湯の小屋とヤシの木のようなシルエットが、リゾートのサンセットみたい。刻々と変わる空と海の色をぼんやりと眺めました。

ちょっとぜいたくして、イセエビのお造りも注文

イセエビの刺し身

長崎名産のイセエビの刺し身は追加で注文できる

長崎といえば、イセエビも有名です。夕食のコースに加えて、イセエビのお造りも注文しました。この日は地元の友人と一緒に食べたので、写真は3人前です。お皿の上で、まだ動いている新鮮なイセエビのお刺し身はぷりぷりの歯ごたえ、かむほどにうまみが広がります。

長崎和牛のライム焼き

野菜もたっぷり、長崎和牛のライム焼き

タジン鍋のふたを開けると、ふわっと広がる爽やかな香り。長崎和牛のライム焼きです。佐世保のレモンステーキの文化にヒントを得て考案した創作料理で、色々試した結果、長崎和牛にはライムがぴったりだったとか。パンチのあるかんきつと黒コショウの風味、和牛の甘い味わいとたっぷりの野菜。ゴマダレがついていたけど、そのままでも素材のおいしさでスイスイ箸が進む一品です。

おすし

締めのごはんは、おすし

締めは、おすし。どっしりした肉厚のエビ。タイには和菓子の「のし梅」がのっているのですが、これが意外にもさっぱりと合う。ミョウガずしも爽やかです。

朝湯はまた、違う迫力があります

温泉

温泉に入りながら、塩湯のミストも降り注ぐ

朝も大浴場へ。宿のご主人に源泉放熱装置の秘密を教えてもらいました。昨夜枯れ草のように見えていた、壁にずらりとぶら下がったものは、なんと竹ぼうき。安定的に手に入るもので、体にも安心なものをと探した結果、竹ぼうきがちょうどいい仕事をしてくれることに行き着いたそうです。「すごいなあ」。気持ちよく朝湯につかりながら、伊勢屋の人々の温泉愛のたまものを眺めて感無量。

ドイツの温泉保養地を旅した時に出会った装置を思い出しました。塩の濃い温泉を植物の枝で覆った壁面に流し、吸入浴をしながら散歩して健康づくりをしています。伊勢屋の場合は、放熱のための装置ですが、結果として温泉入浴とミストが同時に楽しめる温泉になっていたのです。

忘れられない「ポテサラ」

朝食

自家製のポテトサラダがおいしい

小浜温泉までの道すがら、赤土の段々畑が広がっています。肥沃(ひよく)な大地で育てられているのはじゃがいも。長崎県の生産量は全国上位です。温暖な長崎県では春と秋の二期作で、ほぼ一年中掘りたての新じゃがいもが手に入るそうです。伊勢屋の朝食の名物は、自家製のポテトサラダ。なめらかで、ふわふわの口どけ、じゃがいもの風味が広がるあっさりめの味付け。ああ。丼でいただきたい。と、思ってしまうのは、わたしだけではなさそうです。

長崎県・小浜温泉 伊勢屋
https://www.iseyaryokan.co.jp/
※Go To トラベルキャンペーン対象宿

■「楽しいひとり温泉」ポイント
1. 感動の源泉放熱温泉
2.うっとりする海の夕日
3.楽しい創作料理の夕食

BOOK

温泉+放熱 塩湯のミストが降り注ぐ驚きの光景 小浜温泉「伊勢屋」

全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!

石井宏子さんの著書「全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!」(世界文化社)。温泉ビューティー研究家・旅行作家ならではの、旅してみつけた、女性がひとりで安心して楽しめる温泉宿を紹介するハンディーな一冊。公共交通機関で行ける、自分へのごほうびで泊まりたい、いい宿を全国から厳選し、あわせて、女性目線で選んだ周辺の立ち寄り先、ランチやスイーツも取り上げます。ひとりでも楽しい観光列車も登場します。税別1400円。

PROFILE

石井宏子

温泉ビューティー研究家・トラベルジャーナリスト。日本・世界の温泉や大自然を旅して写真撮影・執筆をする旅行作家。テレビにも出演。温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する。海外ブランドのマーケティング・広報の経験から温泉地の企画や研修もサポート。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、日本旅のペンクラブ会員、気候療法士(ドイツ)、温泉入浴指導員。著書に「癒されてきれいになる おひとりさま温泉」(朝日新聞出版)、「地球のチカラをチャージ! 海温泉 山温泉 花温泉 76」(マガジンハウス)、「感動の温泉宿100」(文春新書)などのほか、「全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!」(世界文化社)が11月に発売された。

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