魅せられて 必見のヨーロッパ

大作曲家ハイドンの職場“ハンガリーのヴェルサイユ”   エステルハージ宮殿

ツアーの行き先としてはメジャーでないけれど足を運べばとりこになる街を、ヨーロッパを知り尽くした作家・写真家の相原恭子さんが訪ねる「魅せられて 必見のヨーロッパ」。今回は、2019年10月に訪問したハンガリーのエステルハージ宮殿です。「ハンガリーのヴェルサイユ宮殿」とも呼ばれる壮麗な宮殿で、作曲家ハイドンが仕えた貴族の館でもありました。

大貴族エステルハージ家のすまい

昨秋、ショプロンから25キロ余り、ウィーンからは約100キロのフェルテードにあるエステルハージ宮殿を訪ねました。“ハンガリーのヴェルサイユ宮殿”とも呼ばれる豪華で壮大な宮殿です。

エステルハージ家はハンガリーの音楽や文化はもちろん、政治にも大きな役割を果たした大貴族です。オーストリアのアイゼンシュタットにもエステルハージ家の宮殿があります。

ハイドンは1761年からエステルハージ家の宮廷音楽家となることで、その地位を確固たるものとしました。当時のエステルハージ宮殿は“音楽の殿堂”とも呼ばれていました。

大作曲家ハイドンの職場“ハンガリーのヴェルサイユ”   エステルハージ宮殿

堂々としたエステルハージ宮殿

近くに車を止めて、入り口へ向かいます。

大作曲家ハイドンの職場“ハンガリーのヴェルサイユ”   エステルハージ宮殿

堅牢な門構えです


大作曲家ハイドンの職場“ハンガリーのヴェルサイユ”   エステルハージ宮殿

門は結界のようです

中へ入ってみましょう。

大作曲家ハイドンの職場“ハンガリーのヴェルサイユ”   エステルハージ宮殿

正面から見ただけで、壮大な宮殿であることがわかります


大作曲家ハイドンの職場“ハンガリーのヴェルサイユ”   エステルハージ宮殿

特に私の印象に残った舞踏会の広間

絢爛(けんらん)豪華。ハンガリーのヴェルサイユ宮殿と称されることも、理解できます。

宮殿には客室が126部屋あり、それぞれにロココ様式の豪華な装飾が施されています。

宮殿内部の見学は、案内付きのツアーに参加する必要があります。すべての部屋の見学はできませんが、1時間程度かかります。ルートは変更されることもあります。

装飾も絢爛豪華

大作曲家ハイドンの職場“ハンガリーのヴェルサイユ”   エステルハージ宮殿

(左)舞踏会の広間。巨大なシャンデリア、壁面の装飾に目を奪われます。窓からは、広大なフランス庭園が見晴らせます
(右)舞踏会の広間は天井画も見ごたえがあります

案内のアニタさんによれば、天井に描かれている馬車はどこから見ても馬が自分の方向へ走ってくるように見えるそうです。なるほど前後左右から見てみると、こちらへ迫って来る迫力を感じます。

大作曲家ハイドンの職場“ハンガリーのヴェルサイユ”   エステルハージ宮殿

ハイドンの間。コンサートが開かれます

ハイドンがこの宮殿の音楽家であった頃から現在まで、ここで開かれるクラシック音楽コンサートは高い評価を受けています。

オーストリアの女帝マリア・テレジアは1773年にこの宮殿に滞在し、「素晴らしいオペラを見たいのなら、このエステルハージ宮殿へ来なければなりません」と称賛したとされます。ウィーンが音楽の都として華やかだった時代に、高い評価を受けたことは特筆に値します。この宮殿は、エステルハージ家が音楽や文化を理解し、その財力で最高のオペラやコンサートを催した音楽の殿堂でもありました。

大作曲家ハイドンの職場“ハンガリーのヴェルサイユ”   エステルハージ宮殿

細部の装飾にも思わず見とれます


大作曲家ハイドンの職場“ハンガリーのヴェルサイユ”   エステルハージ宮殿

それぞれの部屋が美しく個性的なしつらえです


大作曲家ハイドンの職場“ハンガリーのヴェルサイユ”   エステルハージ宮殿

中国趣味の美術様式「シノワズリ」の壁

こちらの壁は地味ですが、近くで見ると東洋趣味の風景が織り込まれていて見ごたえがあります。

大作曲家ハイドンの職場“ハンガリーのヴェルサイユ”   エステルハージ宮殿

宮殿礼拝堂の丸天井

宮殿向かいのレストランで舌鼓

大作曲家ハイドンの職場“ハンガリーのヴェルサイユ”   エステルハージ宮殿

レストラン「Gránátos Étterem」

宮殿の美を堪能した後、向かいにあるレストラン「Gránátos Étterem(グラーナートシュ・エーッテレム)」でランチ。ここは、元は衛兵用の建物でした。いわゆる観光地の簡単なレストランではなく、きちんとした料理が出てきます。

「エステルハージ・メニュー」があるので、注文してみました。

大作曲家ハイドンの職場“ハンガリーのヴェルサイユ”   エステルハージ宮殿

スープ

レバーで作ったお団子が入ったスープは、オーストリアや南ドイツ各地の郷土料理でもあります。上手に料理されているのでクセがなく、レバーが苦手な私でもおいしくいただけます。

大作曲家ハイドンの職場“ハンガリーのヴェルサイユ”   エステルハージ宮殿

メインの肉料理

ゆでた牛肉に、ハーブ入りのソースをかけた料理。添えられたパンで作ったダンプリングとともにいただきます。脂肪の少ない牛肉で、ソースもサッパリとしていますが、味わい深くおいしい一品です。

大作曲家ハイドンの職場“ハンガリーのヴェルサイユ”   エステルハージ宮殿

デザート

運ばれて来ると、あいにく美的でない風情! でも店内が混んでいてスプーンを替えてもらうのが難しく、記録のためにそのまま撮影してしまいました。ハンガリー語でパラチンタと呼ばれる名物のパンケーキです。オーストリアのドイツ語ではパラチンケンと言います。中にアンズのジャムが入っていて、ボリュームのあるデザートです。

音楽や芸術を深く理解して、支援したエステルハージ家の存在は、今日のハンガリーやオーストリアの文化的価値をも高めているのだと実感する一日でした。

こんな宮殿に暮らして、朝な夕な庭園を散歩したり、音楽を聴いたり、バルコニーから周囲を眺めたりしたら人生観が変わるだろうと想像しながら、フェルテードを後にしました。

駐日ハンガリー大使館
https://tokio.mfa.gov.hu/jpn

駐日ハンガリー大使館観光室
http://www.hungarytabi.jp

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PROFILE

相原恭子(文・写真)

慶應大学卒業。ドイツ政府観光局勤務を経て、作家&写真家。「ドイツ地ビール夢の旅」(東京書籍)、「ドイツビールの愉しみ」(岩波書店)、「ベルギー美味しい旅」(小学館)、「京都 舞妓と芸妓の奥座敷」(文春新書)、「京都 花街ファッションの美と心」(淡交社)、英語の著書「Geisha – A living tradition」(フランス語、ハンガリー語、ポーランド語版も各国で刊行)など著書多数。国内はもちろん、国際交流基金・日本大使館の主催でスペイン、ハンガリー、エストニアで講演会や写真展多数。NHK「知る楽」「美の壺」、ラジオ深夜便「明日へのことば」「ないとエッセー」、ハンガリーTV2、エストニア国営放送など出演多数。
https://blog.goo.ne.jp/goethekyoko

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