クリックディープ旅

乗りっぱなしで伊江島巡り 沖縄の離島路線バスの旅11

下川裕治さんが沖縄の離島の路線バスを乗り尽くす旅。前回は青空の下で海を見ながら座間味島を巡りました。今回は雨のなか伊江島へ向かいます。目的を遂げるため、伊江島ではバスの運転手さんに不思議がられながらも、乗りっぱなしです。2012年の多良間島のバスもご覧ください。

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと、相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

(写真:中田浩資)

沖縄の離島旅・伊江島・多良間島

伊江島バス系統図

主に文章に登場する停留所名を記載するなど、簡略化しています

新型コロナウイルスの感染が広がった沖縄。9月5日までの沖縄県独自の緊急事態宣言が解除され、沖縄に向かった。しかし台風10号の襲来を受け、離島に渡るフェリーが欠航。ようやく9月8日、座間味島に渡り、路線バスを乗り尽くすことができた。続いて伊江島に向かう。感染に気遣う沖縄の離島。伊江島も座間味島同様、宿泊せずに那覇から日帰りの日程を組んだ。利用したのはレンタカー。伊江島に渡る沖縄本島側の本部(もとぶ)港に車を置き、フェリーで伊江島へ渡り、路線バスに乗ることにした。

最後に2012年2月に乗った多良間島のバスも紹介しています。

長編動画

伊江島のバスは単純。伊江港と真謝入口の間を往復している。所要時間は往復で40分ほど。その全車窓風景を。途中、動画撮影用カメラの留め具が折れてしまい、手持ちの撮影。ちょっと見づらい部分が。旅にはいろんなことがあります。

短編動画

伊江島に渡るフェリーをコンパクトにまとめました。船内の様子もわかります。

今回の旅のデータ

伊江島へのフェリーが出るのは本部港。僕らはレンタカーを使ったが、那覇から本部港行きのバスもある。エアポートシャトルとやんばる急行があるが、本部港へ行くにはやんばる急行が便利。所要時間は2時間弱。料金は「県庁北口」から片道1800円。本部港から伊江島に渡るフェリーは1日4往復。所要時間は約30分。運賃は本部港発の往復で1390円。レンタカーを本部港に置く場合は港の駐車場を利用する。1時間100円。

沖縄の離島旅「旅のフォト物語」

Scene01

沖映通り

10年ほど前まで、那覇の定宿は沖映通りのサンキョウビジネスホテルだった。その後、長期滞在者用になったと聞き、近くのホテル山市に。そこがリニューアルされ、料金も高めに。ふと、サンキョウビジネスホテルを見ると1泊でもOKの表示。1泊2900円。僕は10年以上、沖映通り界隈(かいわい)をうろうろしています。

Scene02

レンタカー

伊江島への足……。ネットで検索するとレンタカーが1日2000円。安すぎない? バスは片道1800円だから往復ふたりで7200円。即、予約。ガソリン代や高速代などを加えても5339円ですんだ。しかし、「車はダントツに古く、驚くほど。緊張の運転でした」(運転した中田浩資カメラマン談)

Scene03

本部港

しのつく雨のなか、那覇から1時間20分ほどで本部港に着いた。ターミナル入り口で検温。その先で再び検温、そして「健康状態申告書」に住所や連絡先、健康状態を書き込み、この用紙をもって発券窓口へ。こう書くとなにかものものしいが、そこは沖縄。いたってにこやかにフェリーの切符を受けとりました。

Scene04

体温計

その先でさらに検温、手のアルコール消毒が待っていました。ターミナルの職員は、何人かがまるでセットのように、体温計とアルコール消毒スプレーを手にしている。この時期、沖縄の感染者は減少傾向だったが。島に渡っていいのか、県や伊江村の役場に何回となく連絡をとった。名前も覚えられるほど。

Scene05

フェリー

伊江島に向かうフェリーは30分ほど。船内に売店はないかと思い、本部港で、沖縄ではターイモと呼ばれるサトイモの入ったパンを買っていた。しかしフェリーには売店が……。今回の沖縄の旅では、久米島、与那国島、座間味島に就航するフェリーに乗ったが、そのなかでいちばん豪華でした。

Scene06

伊江島タッチュー

伊江島が近づいてきた。正面に見えるのが、島の人からは、「伊江島タッチュー」と呼ばれる城山。海抜172メートル。島のシンボルだ。島の人にとっては御嶽という祈りの場でもある。頂まで階段がつくられていて登ることができるが、僕らには無縁。なにしろバス旅ですから。

Scene07

バス

伊江港にはバスが待っていた。フェリーの到着に合わせたスケジュールが組まれている。乗り込むと先客が10人ほど。離島バスの感覚に慣れてしまったのか、その乗客の多さに戸惑う。しかし四つ目の診療所前、五つ目の役場前で僕らをのぞく全員がバスを降りてしまう。発車から2分でいつもの離島バスになりました。

Scene08

車窓

乗車の際、運転手さんに、「終点まで乗って、そのまま伊江港まで戻るんですが……」と伝える。「どこも観光しないの?」という離島バスでは繰り返される会話。時刻表を見ると、終点の真謝入口は停車時間なし。ということは、真謝の集落を見る時間もない。乗りっぱなしのバス旅を覚悟する。

Scene09

団結道場

バスの乗客は僕らだけだが、訓練場入り口の一つ手前、団結道場前に停車。「ここに戻ってくるから見学したら?」。バス乗り尽くし旅の意図を運転手さんは理解していない? 最初はそう思ったが、この施設を見てほしかったのでは、と気づいた。島にはアメリカ軍の演習場がある。その土地は島民から接収したもの。島の人はいまも反対運動を続けている。その拠点である。

Scene10

みなと食堂

伊江港に戻り、ミッションはあっけなく終了。バス運賃は500円。フェリーで本部港へ。レンタカーで那覇に戻ろうとすると、「みなと食堂」。漂う沖縄の空気にそそられる。しかし駐車場がない。すると、年配の女性が戸を開け、横に止めなさい、という。隣の家の駐車場では? 「駐車禁止って書いてあるけど、うちのお客さんは大丈夫」

Scene11

煮つけおかず

メニューはしっかり沖縄。頼んだのは、「煮つけおかず」600円。「煮つけ」というと本土では、「魚の煮つけ」を想像する人が多いが、沖縄では、豆腐、三枚肉、野菜、こんにゃく……。「おかず」は難解メニュー。「おかず」とだけ書かれていることも。店によって内容が違う。聞くと、「おかずはおかずさー」といわれることが多い。定食と理解すると無難。デザートに煮豆。店では「ぜんざい」といっていた。

Scene12

バス

伊江島のバスに乗り、残るのは粟国島と伊平屋島。もうひとつ、多良間島がある。この島にも路線バスが走っているが、2012年2月に乗り、このサイトの前身、「どらく」で紹介している。路線は村の集落から空港、集落から普天間港か前泊港まで。いまもしっかり運行しています。当時の多良間島の写真を3枚紹介します。

Scene13

フクギ並木

多良間島は宮古島と石垣島の中間。離島の暮らしや自然が残っている。フクギもそのひとつ。フクギ並木は台風の強風や高潮から島を守ってきた。沖縄では、道路の拡張や住宅建設などでその並木は失われつつあるが、多良間島には健在。うっとりするような並木が島内のあちこちに。島内散歩はフクギ並木歩き。

Scene14

ヤギ

沖縄といったらヤギ。ヤギ汁は祭りのときには欠かせない。しかし多良間島のヤギは、多すぎない?とつぶやいてしまうほどよく見かける。それに比べて店は少ない。島1軒の食堂でそばを食べる。麺が手打ちっぽい。聞くと、やはり……。「島では手打ちが普通です。麺が手に入らないことが多かったからね」。

Scene15

小道

多良間島には、集落から浜に出る小道がいくつもある。その数は40以上とか。この小道はトゥブリと呼ばれる。漁に出かけるときや届いた物資を受けとるとき、島の人はこのトゥブリを歩いた。それぞれに家の名前がついている。ヌヌドウトゥブリ、マイドゥマリトゥブリ……。僕も何回かトゥブリを歩いて浜と民宿を往復した。

※取材期間:2020年9月9日/2012年2月
※価格等はすべて取材時のものです。

【次号予告】次回は伊平屋島のバス旅を。

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BOOK

乗りっぱなしで伊江島巡り 沖縄の離島路線バスの旅11
世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア大陸横断2万キロ (朝日文庫)
時速35キロの遅すぎる列車に耐え、中国では切符獲得戦争に奮闘。紛争地帯であわや列車爆破テロ、ビザ切れピンチ……そして潜伏。言葉を失う数々のトラブルに遭遇する列車旅。
シベリアからポルトガルまで26夜も寝台列車に揺られた、旅を超えた「冒険」物語。変化する旅事情をコラムに収録。

定価:990円(税込み)

PROFILE

  • 下川裕治

    1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「一両列車のゆるり旅」(双葉社)、「週末ちょっとディープなベトナム旅」(朝日新聞出版)、「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)など。最新刊は、「世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア大陸横断2万キロ」 (朝日文庫)。

  • 中田浩資

    1975年、徳島県徳島市生まれ。フォトグラファー。大学休学中の1997年に渡中。1999年までの北京滞在中、通信社にて報道写真に携わる。帰国後、会社員を経て2004年よりフリー。旅写真を中心に雑誌、書籍等で活動中。

制限時間は2時間! 座間味島乗り尽くしに挑む 沖縄の離島路線バスの旅10

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