クリックディープ旅

残り2島! バスを求めて伊平屋島へ 沖縄の離島路線バスの旅12

下川裕治さんが沖縄の離島の路線バスを乗り尽くす旅。前回は伊江島を制覇し、離島路線バスの旅もいよいよ残り2島です。今回は伊平屋島で、イラストがかわいいコミュニティーバスに乗り込みます。

本連載「クリックディープ旅」(ほぼ毎週水曜更新)は、30年以上バックパッカースタイルで旅をする旅行作家の下川裕治さんと、相棒の写真家・阿部稔哉さんと中田浩資さん(交代制)による15枚の写真「旅のフォト物語」と動画でつづる旅エッセーです。

(写真:中田浩資)

沖縄の離島旅・伊平屋島

伊平屋島バス系統図

主に文章に登場する停留所名を記載するなど、簡略化しています

沖縄での新型コロナウイルスの感染は収まりつつあった。9月5日までの、沖縄県独自の緊急事態宣言が解除になり、座間味島と伊江島の路線バスを乗り尽くした。残るのは伊平屋島と粟国島だった。伊平屋島は沖縄県と足並みをそろえて島に渡ることができるようになったが、粟国島は来島中止の要請が9月12日まで続いた。そこでいったん帰京。9月27日に再度、沖縄に渡った。暑い沖縄も、9月になると、やや気温がさがってくる。台風の進路もそれてくれた。まず伊平屋島に向かった。

長編動画

運天港から伊平屋島の前泊港までのフェリーからの眺めを。沖縄の離島のバス旅もそろそろ終盤。新型コロナウイルスに右往左往した旅を中田浩資カメラマンと振り返ります。

短編動画

伊平屋島を一周するバスの車窓風景を。Scene11で説明している沖縄のオバアの会話の妙。じっくり聞いてください。

今回の旅のデータ

伊平屋島に渡るには、まずフェリーが出る運天港まで行かなくてはならない。那覇から「やんばる急行」というバスが便利で、県庁北口から終点の運天港まで約2時間40分、運賃は1900円。運天港と伊平屋を結ぶフェリーは1日2便。運天港発は11時発と15時発。所要1時間20分。運賃は往復で4720円。伊平屋島では「ホテルにしえ」に泊まった。1泊2食付きで7210円だった。

沖縄の離島旅「旅のフォト物語」

Scene01

やんばる急行

那覇市内の県庁北口のバス停から運天港行きの「やんばる急行」に乗る。名護の手前までは高速道路を通るが、運天港まで約2時間40分もかかる。そこからさらにフェリーに乗り換えなくてはならない。「伊平屋島は遠い……」。沖縄本島を北へ、北へと進むバスのなかでつぶやいていると、いつの間にか寝入ってしまいました。

Scene02

フェリーターミナル

やっと運天港に到着。フェリーターミナルは無駄に広く、なかは静まりかえっていた。入って右手に伊是名行きフェリーの切符売り場。左手が伊平屋行き。この港は戦時中、日本海軍が魚雷を隠した港として歴史に残っている。ターミナルの向かいあたりにはその壕(ごう)の跡があるというが、草に覆われ、入り口をみつけることができなかった。

Scene03

待合室

運天港のターミナルには食堂もなかった。しかたなく売店にひとつずつ残っていたサラダ巻きといなりずしを買い、畳敷きの待合室で昼食。伊是名行きの畳敷き待合室では、おじさんが気持ちよさそうに昼寝。なんだかすごくゆるいターミナル。バスのなかで寝たのに、またしても眠くなる。

Scene04

酔い止め薬

売店にお茶を買いに。そこで見つけてしまいました。酔い止め薬。これまで沖縄の離島に向かうフェリーに何回か乗ったが、売店に船酔いの薬はなかった気がする。この船は揺れる……。慌ててネットで調べると、船酔いに苦しんだブログがぞろぞろ出てきた。そういう海域らしい。慌てて酔い止め薬を買った。錠剤はばら売り。箱買いより1錠の値段が高くなり、2錠で320円。

Scene05

フェリーいへやⅢ

船「フェリーいへやⅢ」は一見、立派だった。しかし揺れるとわかると気が重い。乗り込むと、スタビライザーという揺れ止め装置がついた船だった。その図解が表示されていた。それにすがるしかない。船の運賃は往復で4720円だが、そこに環境協力税100円が加算される。

Scene06

ターミナル

薬が効いたのか……。船のなかではまたしても寝入ってしまった。運がよかった気がする。この日の海は比較的静かだった。しかしいいことは続かないのが旅。伊平屋島のターミナルに着き、バス停まで行くと、「運転手が確保できず、令和2年9月から土曜、日曜は運休」という表示。今日は日曜日……。

Scene07

ハブタクシー

翌日のバスに乗るしかない。ふと見ると、港にタクシーが1台。名前は「ハブタクシー」。「ヘビのハブ?」。タクシー会社に聞くと、「隣の伊是名島が、ハブはいない島ってPRしている。伊平屋はハブがいるからね」。冗談でしょ。「英語で中心っていう意味のハブとかけているんですが」。ハブがいることだけはたしかだった。

Scene08

食事

宿は2食付きのホテルにした。日曜日は島の食堂や居酒屋はすべて休みと聞いたからだ。翌朝の朝6時半、村内に流れるラジオ体操の音で起こされた。道端には、子供たちがつくった標語がいくつも掲げられている。「いへやっ子あいさつじょうずできもちいいさ~」。伊平屋島には、昔ながらの離島の空気が流れていた。

Scene09

照島

宿の向かいが、島では数少ない売店のようなスーパーだった。そこで売られていたのが照島(てるしま)という伊平屋島の泡盛。600ミリリットルで690円。宿の夕食。飲み物は自分たちでもち込むスタイル。島の泡盛を晩酌気分で飲んでみました。癖のないあっさりした味わい。飲みやすい泡盛でした。

Scene10

コミュニティーバス

翌朝、前泊港に行くとバスが待っていました。路線バスと呼ばずにコミュニティーバスと呼ばれていた。時刻表では9時40分発だったが、運転手がやってきたのは9時47分。僕らだけを乗せて出発した。島内の集落をすべてまわるバス。ずっと乗っていると最後に港に戻ってくる。簡単に乗り尽くすことができる。

Scene11

車窓の風景

診療所前でひとりのオバアが乗ってきた。運転手さんの、「バスはこっちから行くんだよ」という言葉を無視して、ルートを変えさせ、自分の家の前で止めてもらうところを見ながら、「沖縄のオバアだなぁ」。その絶妙なやりとりは、短編動画をよく聞いてください。運転手の言葉を無視するオバアの間。憎めません。

Scene12

水田

コミュニティーバスは、伊平島のなかをぐるぐるまわる。沖縄の離島のなかでは、伊平屋島は平地が比較的多い。水もあるようだ。ところどころに水田も見えた。沖縄の離島を走っていると、サトウキビ畑ばかり。水田の眺めにホッとする。バスは橋でつながった小さな野甫島に向けて進んでいった。

Scene13

橋

野甫島への野甫大橋を渡る。野甫島には、「世界塩の博物館」や「米崎海浜公園」があるのだが、バスの乗り尽くし旅ではおりることができない。このバスに乗り続けていないと、運天港に戻るフェリーに間に合わないのだ。週末の運休がなければ、もう少し伊平屋島をゆっくり見ることができたのだが。

Scene14

我喜屋集落

1時間20分ほどバスに乗り続け、前泊港に戻ってきた。これで伊平屋島のバスを乗り尽くした。フェリーの出港まで少し時間があったので、近くの我喜屋集落を訪ねてみる。サンゴを積んだ塀が味わい深い集落だった。竹富島のサンゴの塀のように整ってはいないが。静かないい集落だった。

Scene15

自動販売機

前泊港で出合ってしまった。僕が勝手に沖縄自動販売機と呼んでいる自動販売機。海からの潮で、全体がさびつき、廃棄されてもおかしくない姿なのだが、これがけなげに稼働している。最近ではすっかり目にしなくなったが、伊平屋島には……。うれしくなって、つい、コーヒー買ってしまいました。

※取材期間:2020年9月27日~28日
※価格等はすべて取材時のものです。

【次号予告】次回は粟国島のバス旅を。

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BOOK

残り2島! バスを求めて伊平屋島へ 沖縄の離島路線バスの旅12
世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア大陸横断2万キロ (朝日文庫)
時速35キロの遅すぎる列車に耐え、中国では切符獲得戦争に奮闘。紛争地帯であわや列車爆破テロ、ビザ切れピンチ……そして潜伏。言葉を失う数々のトラブルに遭遇する列車旅。
シベリアからポルトガルまで26夜も寝台列車に揺られた、旅を超えた「冒険」物語。変化する旅事情をコラムに収録。

定価:990円(税込み)

PROFILE

  • 下川裕治

    1954年生まれ。「12万円で世界を歩く」(朝日新聞社)でデビュー。おもにアジア、沖縄をフィールドに著書多数。近著に「一両列車のゆるり旅」(双葉社)、「週末ちょっとディープなベトナム旅」(朝日新聞出版)、「ディープすぎるシルクロード中央アジアの旅」(中経の文庫)など。最新刊は、「世界最悪の鉄道旅行 ユーラシア大陸横断2万キロ」 (朝日文庫)。

  • 中田浩資

    1975年、徳島県徳島市生まれ。フォトグラファー。大学休学中の1997年に渡中。1999年までの北京滞在中、通信社にて報道写真に携わる。帰国後、会社員を経て2004年よりフリー。旅写真を中心に雑誌、書籍等で活動中。

乗りっぱなしで伊江島巡り 沖縄の離島路線バスの旅11

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いよいよ最後の粟国島へ 沖縄の離島路線バスの旅13

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