にっぽんの逸品を訪ねて

新鮮なすしと薬草料理 飛驒で味わいたい意外な二つの名物

「飛驒高山はおすしがおいしいよ」「お隣の飛驒古川では薬草料理を食べてみて」。岐阜県の飛驒地方を旅したら、地元の方たちがこう薦めてくれました。飛驒といえば飛驒山脈が連なる山深い地方です。「飛驒で、すし?」そして「薬草料理とは?」と思いましたが、食べてみたら地元の方が自慢するのも納得の味。飛驒のグルメ旅行へ出かけてみませんか?

連載「にっぽんの逸品を訪ねて」は、ライター・中元千恵子さんが日本各地の逸品を訪ね、それを育んだ町の歴史や風土を紹介します。

日本海の幸と地酒がそろう「お多福」 一人旅でも安心価格のセットメニューも

飛驒地方は北アルプスなど深い山並みに囲まれて、「飛驒高山」や「飛驒古川」など時を止めたような美しい町並みが残っています。しっとりとした秋の風情を感じながら旅したいエリアです。

飛驒高山とよばれる高山市は、江戸時代に幕府直轄の天領として栄えました。当時の役所だった高山陣屋や、出格子の商家が並ぶ町並みが繁栄のようすを伝えています。

町並み

重厚な町並みが残る「飛驒高山」

飛驒牛や高山ラーメンなど名物も多いですが、実は富山が近いので、おすしもおいしい町です。古くは「飛驒ブリ」といって、富山湾で水揚げされたブリが塩漬けされ、飛驒を通って信州などへ運ばれていきました。現代では、生きのいいまま日本海の魚介類が入ってきます。

地元でも人気のすし店の一つが「鮨・割烹(すし・かっぽう) お多福」です。

「お多福」

粋な店構えの「お多福」

カウンター前のガラスケースには、毎朝、主人の三塚和也さんが金沢や富山の市場で仕入れた新鮮な日本海の魚介が並んでいます。

店内

家族中心に営む温かな雰囲気の店(現在は新型コロナウイルス感染対策のため、カウンター前にビニールシートを下ろして営業中)

この日のお造りは、歯ごたえがある肉厚のタイ、とろけるような中トロ、濃厚な甘エビなど、深い山間にいるとは思えないおいしさでした。

お造り

鮮度抜群のお造り

自慢のすしは、飛驒の地酒とともにゆっくり味わいました。

すし

味わいのあるネタとシャリの相性が抜群。思い出深い旅の夕食になりました

アットホームな雰囲気だという評判を聞いて、出張族や一人旅の訪れも多いそう。そのため、握りずしにみそ汁、小鉢、揚げ物、ワンドリンクが付いた「お多福ミニ御膳」(税抜き2,200円)など、セットメニューも用意しています。初めてでも気軽に入れます。

「旅して元気になる」 見て美しく、食べておいしい飛驒市の薬草料理

高山市の隣に広がる飛驒市では、薬草料理が注目されています。

飛驒市では昔から植物の活用知識が伝承されてきましたが、約20年前に薬学博士の故村上光太郎氏が調査を行い、市内に245種もの薬草が自生していることが分かりました。そこで村上博士の指導を受け、著書を参考にして薬草を活用しています。

「ひだ森のめぐみ」

薬草を使ったワークショップが体験できる薬草体験施設「ひだ森のめぐみ」は2019年10月にオープンしました

薬草

店内には乾燥させた多くの薬草があり、薬草茶の試飲や販売も行っています

薬草と聞くと「苦いし見た目も地味では?」と思うかもしれませんが、飛驒市の薬草料理はおいしいのが自慢です。例えば、今年10月に開催された「飛騨市薬草フェスティバル2020」の「薬草料理交流会」でふるまわれた薬草料理の一例がこちら。このイベントでは、会場をめぐって和食、洋食、デザートを味わうのですが、和食は見た目には薬草が使われていることはほとんどわかりませんでした。

和食

「薬草料理交流会」の和食(蕪水亭)

緑色の豆腐はクワの葉の粉末入り。トマトやマイタケは薬草入りのだしで煮てあります。味はといえば、薬草が滋味と深みを与え、味わいがいっそう増しているように思いました。クワ豆腐はかすかな渋みが野趣を感じさせ、トマトの薬草煮は薬草の風味がトマトの甘みをぐっと引き立てていました。

煮込み料理

薬草入りの牛肉の煮込みもほろほろとやわらかく、肉のうまみたっぷりでした

洋食は、クズの花の食前酒にはじまり、ハトムギ入りのラタトゥイユや、クロマメを使ったキッシュなど。チキンソテーとキノコソテーにはクワの葉、緑色のビシソワーズにはメナモミという薬草が使われています。

洋食

薬草料理の洋食例(蕪水亭OHAKO)。おいしく、しかもヘルシー

「まずは地元の人を元気に」 歴史の町並みで味わう地元客にも人気の薬草ランチとスイーツ

飛驒市の古川町には、城下町の面影をとどめる白壁土蔵の町並みが残っています。瀬戸川には春から秋にかけて1000匹のコイが泳ぎ、飛驒高山とはまた違った風情の町歩きが楽しめます。

町並み

白壁にヤナギが映える飛驒古川の町並み

コイ

コイを眺めながらのんびり歩きたい町です

情緒あふれる町並みには、薬草を使ったランチやスイーツが食べられる店が点在しています。

薬草の活用を推進しているNPO法人「薬草で飛驒を元気にする会」の理事長・北平嗣二さんは「まずは薬草で地元の人たちを元気にしたかった。私たちが笑顔でないと、飛驒市に来てくださる方々を元気にできませんから」と話します。その言葉通り、笑顔あふれるお店の方々とともに、おすすめの3軒を紹介します。

まずは「飛驒古川まちなか観光案内所」の向かいにある「蕪水(ぶすい)亭OHAKO(おはこ)」。薬草料理と手打ちそば、自家焙煎(ばいせん)コーヒーが人気の店です。

「蕪水亭OHAKO」

レトロモダンな外観が目を引く「蕪水亭OHAKO」

「旬の薬草ランチプレート(薬草スープ付き)」では、季節の食材と薬草がたっぷりと使われています。この日は、自家製トマトソースをかけたメナモミ入りハンバーグをメインに、クワの葉入りキノコソテー、メナモミソースで食べる飛驒野菜の素揚げ、オリジナル薬草ドレッシングのサラダ、黒米ご飯でした。薬草入りとは分からず、どれもおいしくいただけました。

料理

バランスよく、食べごたえもあります

シフォンケーキ

デザートはメナモミ入りシフォンケーキでした

「できるだけ多くの種類の薬草を使い、食べやすくおいしく召し上がっていただけるよう工夫しています」と店長の北平知亜季さん。季節を変えて訪れたい店です。

スタッフ

店長の北原知亜季さん(左)を中心にスタッフが腕を振るっています

そば好きの方には、町並みの中心部にある「福全寺蕎麦(ふくぜんじそば)」もおすすめです。

「福全寺蕎麦」

「福全寺蕎麦」は風流な店構え

「ヨモギとろろぶっかけ蕎麦」は、ヨモギをとろろとあわせて冷やしそばにかけています。とろろやだしがコシのあるそばにからんで、つるりといただけます。

料理

ヨモギの香りと鮮やかな緑が食欲をそそります

そばは、流葉(ながれは)高原産のそば粉を使い、川端克彦さん、美代子さん夫妻が手打ちしています。細くコシがあり、風味豊かで、遠方からもわざわざ食べにくる客がいるほど評判です。

川端さんご夫妻

そばは川端さんご夫妻が手打ちしています

おやつに立ち寄りたいのは、ワッフルの店「カノコヤ」です。店主の中村文香(あやか)さんが1人で切り盛りする小さな店は、地元の人たちの憩いの場にもなっています。

「カノコヤ」

小さな店が集まった「やんちゃ屋台村」の一角にある「カノコヤ」

県産の小麦や飛驒産の卵、牛乳など原材料にこだわったワッフルは9種類あり、中にはエゴマやメナモミを使ったものも。パールシュガーをまぶして焼くワッフルは、表面はカリッと香ばしく、中はふわっ。地元でアブラエとよばれるエゴマは、プチプチとした食感も楽しめます。

ワッフル

手前がアブラエ(エゴマ)、奥はメナモミと、メナモミホワイトチョコのワッフル

「メナモミの粉末は、色や味が抹茶に似ていますし、エゴマは飛驒では五平餅などおやつによく使われます。どちらの薬草もスイーツとの相性抜群ですよ」と中村さん。

中村文香さん

店主の中村文香さん。町歩きの途中に立ち寄りたい店です

薬草の知識が深められる「薬草フェスティバル」

薬草についてもっと知りたい、という方は年1回行われている「薬草フェスティバル」への参加がおすすめです。

薬草が自生する「朝霧の森」を、薬草コンシェルジュの説明を聞きながら歩く「朝霧の森フィールドワーク」など、さまざまなイベントが行われます。

「朝霧の森」

「朝霧の森」で薬草を見ながらさまざまな知識が学べます

今年は飛驒市河合町の女性たちで作る「かわい野草茶研究グループ」による野草茶作りも行われていました。

地元の女性たちから薬草について「小さいころからよく食べていたの」という話を実際に聞くと、飛驒市では薬草がなじみ深いものだったことが分かります。

オオバコ

飛驒では薬草がよく育つそうで、オオバコも写真のように巨大でした

地元の人たちは、薬草を活用して「元気になりたいときは飛驒市へ行こう、と言ってもらえるようになりたい」と語っていました。

【問い合わせ】
・鮨・割烹 お多福
https://www.sushi-otafuku.com/

・ひだ森のめぐみ 0577-73-3400/10:00~16:00/年末年始休
http://www.city-hida.jp/yakusou/

・蕪水亭OHAKO 0577-73-0048/10:00~cafe time、11:00~14:30(LO14:00)lunch time、夜は5人以上の予約制/不定休

・福全寺蕎麦 0577-73-3340/10:30~売り切れ次第/火曜休

・カノコヤ 080-4348-0888/11:30~17:00/木・日曜休
https://www.facebook.com/kanokoyacoffee/

・飛驒市公式観光サイト「飛騨の旅」
https://www.hida-kankou.jp/

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PROFILE

中元千恵子

旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの温泉宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。
全国各地のアンテナショップを紹介するサイト 風土47でも連載中

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