宇賀なつみ わたしには旅をさせよ

空を見上げた初めてのロンドン旅 宇賀なつみがつづる旅(14)

フリーアナウンサーの宇賀なつみさんは、じつは旅が大好き。見知らぬ街に身を置いて、移ろう心をありのままにつづる連載「わたしには旅をさせよ」をお届けします。今回は2019年に訪れたロンドンの旅。この街らしい空の下、思ったことは。

(文・写真:宇賀なつみ)

「当たり前はない ロンドン」

タクシーを降りてすぐに、
薄手のコートしか持ってこなかったことを後悔した。

東京ではまだ上着を羽織るには早い、2019年10月初め。
私は初めて、ロンドンを訪れた。

どんよりとした曇り空が広がっている。
うわさには聞いていたが、本当にずっと雨が降ったりやんだりだった。
毎日この調子で、気がめいることはないのだろうか。

公園や美術館など、初心者らしく、有名観光地をまわった。
伝統と新しさが行き交う街は、
一日中歩いていても疲れを感じない。

ロンドンブリッジのすぐ近くにあるバラマーケットで、
日本が大好きだという青年に出会った。

好きな漫画やアニメのタイトルを次々に挙げ、
「いつか日本に行ってみたくて、お金をためてるんだよ」と言った。
こんな時はいつも、うれしくてたまらなくて、
一緒に連れて帰りたくなってしまう。
実際には、できないけど。

彼の働く店の近くで売っていたパエリヤは、
色々な味が凝縮されていて、とてもおいしかった。

料理

寒くて凍えそうになると、パブに入った。
最初は、グラスのサイズがかなり大きくて驚いたが、
毎日通っていると、すっかり慣れてしまう。

時間をかけてゆっくりとビールを味わう。
飲み終えて外に出ると、体が温まって、元気になっているのがわかった。
この街の空気に、うまく溶け込めているような気がしてくる。

局アナ時代にお世話になったスタイリストさんが、
結婚してロンドンに移住していたので、連絡をしてみると、
アフタヌーンティーに連れて行ってくれた。

3段のティースタンドには、軽食やおやつが並ぶ。
ランチとディナーの間にこれを食べるなんて、
大丈夫かしらと心配になったが、意外と食べられてしまう。

お菓子

お互いの近況報告で盛り上がった。
異国の地で、慣れないことばかりでも、
それを面白がりながら暮らしている姿は、
たくましくてかっこよくて、美しかった。
向かいの席では、彼女の夫がニコニコ笑っていた。

最後の夜の前、夕暮れ時に、
急に雨が上がって青空が広がった。

街

大通りに日が差し込んでいるのを見て、感激してしまった。
空の青さも雲の白さも、見慣れているとなんてことないが、
久しぶりだと、こんなにうれしいのだと気がついた。

この旅以降、海外には行けていない。
次はどこへ行こうかと、本屋でガイドブックを探し、
大きなトランクを持って空港に向かう、
あのワクワク感を、忘れかけている。
こんな状況になるなんて、あの時は想像もできなかった。

当たり前はない。

今すぐ近くにあるものも、何かのきっかけで、
簡単に失われてしまうかもしれないのだ。

ひとつひとつを、大切に。
後悔のないように生きていかないと。

いつかまた海を渡る日を待ちながら、
心に誓った。

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PROFILE

宇賀なつみ

東京都出身。テレビ朝日「報道ステーション」の気象キャスターとしてデビュー。同番組スポーツキャスターとして、トップアスリートへのインタビューやスポーツ中継等を務めた後、「グッド!モーニング」「羽鳥慎一モーニングショー」など、情報・バラエティー番組を幅広く担当。2019年にフリーランスとなり、現在はテレビ朝日「池上彰のニュースそうだったのか!!」や、自身初の冠番組「川柳居酒屋なつみ」を担当。TBSラジオ「テンカイズ」やTOKYO FM「SUNDAYʼS POST」など、ラジオパーソナリティーにも挑戦している。2020年4月からは、MCを務める、関西テレビ・フジテレビ系「土曜はナニする!?」がスタートした。

大学時代、たくさんの仲間と旅した神津島 宇賀なつみがつづる旅(13)

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