あの街の素顔

宿では誰にも会わない! ニューノーマルな古民家宿に泊まってみた

山梨県笛吹市にある古民家一棟貸し宿「るうふ 澤之家」に1泊してきました。ここは、完全非接触で室内完結型地域体験ができる宿として9月にリニューアルしたばかり。当初は感染第二波の到来もあって“公共交通機関での来訪お断り”をうたうほど徹底していました。今は「お断り」はしないものの、8~9割のゲストが自家用車とのこと。私も自家用車で行ったので、中央自動車道に入る前に友人を駅で乗せたら、そこから翌日チェックアウトするまで自分たちだけで過ごせる、というニュースタンダードな旅でした。
(文・写真:こだまゆき トップ写真は「るうふ澤之家」)

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「るうふ」は今年9月、山梨県内に澤之家(笛吹市芦川町)、書之家(身延町)、丘之家(山梨市牧丘町)の3施設がそろってオープン。どれも築100年前後の古民家を再生した宿です

ステイケーションやワーケーション、マイクロツーリズムといった言葉が飛び交い、旅のスタイルや考え方が大きく変わることになった2020年。国内旅行においては「Go To」キャンペーンの効果もあちこちで聞かれるようになりました。とはいえ「人の多いところはやっぱり心配」「公共交通機関に抵抗が」と感じている人も少なくないはず。今回泊まった「るうふ澤之家」は、そんなwithコロナ時代の流れを意識したお宿です。

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四季折々の草花が楽しめる庭。思わずカメラを向けてしまいたくなります


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ポカポカ陽気の日はこの縁側で仲間と語り合うもよし

「るうふ澤之家」があるのは笛吹市にある人口360人ほどの小さな地区、芦川町。東京方面からは中央自動車道の一宮御坂ICか河口湖ICが便利で、どちらから下りても30分ほど。今回はお天気が良かったので富士山がよく見える富士吉田線の河口湖ICを使いました。観光客でにぎわう河口湖畔の商業施設が気になりつつも、寄り道せずドライブ続行。河口湖から15分ほどで宿に到着しました。

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これでも3施設の中で一番コンパクトだという澤之家。ゴザの上で大の字に寝転びたくなります


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チェックイン・チェックアウトの手続きはこのiPadで操作。非対面で完結できる独自のアプリケーションサービスです。もちろん館内はWi-Fi完備

今回はめいっぱい滞在を楽しもうと、チェックインが可能になる15時に着くように向かったのですが、これが大正解。日の短い今の時期、山あいの集落はあっという間に暗くなってしまいます。西日が差し込む板の間に上がってひと息ついたら、さっそく館内のiPadでオンラインチェックイン。テレビ電話という形で事務スタッフさんの笑顔が画面に映った時はちょっとホッとしました。何かわからないことがあれば画面越しでいつでもつながれるので安心です。

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2階に上がって梁(はり)と梁の間からダイニングを眺めたところ。天井は屋根まで吹き抜けの広い空間になっています


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2階はベッドが四つ。籐(とう)のカゴの中には部屋着とアメニティが入っていました

スタッフさんからは食事についての説明などがあります。るうふではチェックインの段階で朝夕の食材は冷蔵庫にすべてそろっているのですが、夕食だけは「非接触」と「接触」を選べるシステム。接触を希望の場合は、時間になると現場スタッフさんが来て、テーブルセットから食材の説明まで一通りやってくれます。

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奥が台所。この家の元々の間取りをそのまま使っているそう


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台所にあるレトロなすりガラスの出窓。この家に元々あった棚など、再利用している備品があちこちにあって感心

今回私たちは「非接触」をチョイスしたので、囲炉裏端に食材を運び、着火剤を使って炭に火をおこし、網に食材を並べるなどの作業はすべてセルフ。とはいえ、これがなかなか楽しい非日常体験! 火バサミを使って火力を調整しながらの炭火焼きの夕食は、たっぷり時間をかけて友人と語らえるぜいたくな時間でした。コロナ禍で凝り固まっていたココロとカラダの緊張が火を眺めているうちに解きほぐされていく、そんな感覚を夕食後のたき火でも覚えました。

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夕食は冷蔵庫に入っている食材を囲炉裏に並べて炭火焼き料理に舌鼓。テーブルセッティングを終えたら、iPad経由でスタッフさんから食材の説明をしてもらえます。前菜のさしみこんにゃくは芦川町の特産品で、生のこんにゃく芋を使う手作り品だそう


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夕食後は星空の下、庭でたき火を楽しみました。炎のゆらぎを見るのって癒やし効果抜群ですね

この「火の体験」こそが、集落に建つ、るうふならではの体験のひとつです。るうふではほかにも、和服をモチーフにした羽織風の部屋着を着て、築100年余の古民家で過ごす「時の体験」や、地域の特産品を使ったクラフト・手仕事などの「土地の体験」ができるとうたっています。

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歯ブラシ、クシ、足袋などが入ったエコバッグ。ほかにもバスタオルやフェイスタオル、シャンプー、ドライヤーなどがそろっています


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お風呂は五右衛門風呂。全身すっぽり入って気持ちがいい

実は「るうふ」は、古民家一棟貸し宿「LOOF」として2014年から営業していました。当時のコンセプトは“イナカに暮らすように泊まる家”。宿を拠点にして近隣の観光地に遊びに行くことを提案するスタイルでしたが、昨年あたりから“時を超える宿”として、宿自体が観光地となる体験型へブランドリニューアルを計画していました。そんな時に起きた新型コロナウイルス感染拡大。このパンデミックがある意味追い風となって、今回のリブランディングにつながったのです。

「ただ、コロナ前はここまで完全非接触のサービスにこだわるつもりはありませんでした」と、「株式会社るうふ」の保要佳江(ほよう・よしえ)社長は言います。「非接触」をチョイスしていた私たちでしたが、取材対応のため1日目の夕方に少しだけ顔を出して下さいました。

「iPadでご案内するシステムは開発していたのですが、リピーターのお客様はスタッフについて下さった人が多かったので、そこは大事にしたいという思いはありました。しかし非接触という需要が多くなってきたこともあって、夕食は非接触、接触を選べるシステムにしました」

旅のスタイルは今後ますます小人数になっていくと思われますが、「るうふ」はそんな流れも織り込んで、定員を「LOOF」時代の10名から今回は6~8名と減らしました。

「ターゲットとしているのは20~30代のファミリー層。以前は2~3家族のグループ滞在もいらっしゃいましたが、今は1家族のみというご利用が一番多いですね。小さなお子様がいらっしゃる親御さんからは、自家用車で来て家族だけで過ごせるので安心と大変喜んでいただいています。お客様はもちろん、従業員や地域の皆さんも可能な限り感染リスクを減らして、誰もが安心できる形を新しい“るうふ”では目指しました」

芦川町生まれで高校時代までこの地で育ったという保要さん、「古民家はワーケーションにも最適です。近くにコンビニなどはないですが、仕事をするとものすごく集中できてはかどりますよ」と話していました。

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暖房設備はエアコンのほかに、このペレットストーブも。ワイングラスを片手に語り合いの時間


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朝食は冷蔵庫に入っているお重を自分たちで配膳。サケと卵はフライパンで調理します

さて最後は、私が楽しみにしていた「土地の体験」をご紹介します。実は山梨県は経済産業大臣指定の伝統的工芸品「甲州手彫印章」というハンコの産地。るうふ澤之家では、誰でも気軽に石のハンコ作りを体験できます。名前の一文字を彫ってもいいし、マークやイラストなど好きなモチーフでも。iPadに収録されているマニュアル動画を見ながら作業を進めれば、30分ほどで完成します。

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約1.5cm角の石のハンコ。材料や道具はすべて用意されています。旅のいい記念になりました

ちなみに和紙の産地・身延町の「るうふ 書之家」では、和紙を使ったうちわ作り。フルーツの産地にある「るうふ 丘之家」ではぶどうなどを使った草木染め体験ができるそうですよ。

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1年先の自分へ書く手紙が用意されています。ゆったりした時間の中でなら筆も進む? 作ったハンコを押すのもいいですね

遠い場所に時間をかけて行かないと旅気分を味わえないと思いがちですが、自宅から2時間弱のドライブで到着した「るうふ澤之家」での滞在は、まさに非日常。なんだか時空を超えて違う次元に行っていたような感覚でした。どこに行くにもマスクをしなくてはいけない昨今、3密回避どころか他の人と一切接触しない古民家泊の旅は、思っていた以上にしっくりきて満足度の高いものでした。

有名観光地に行くことだけが旅じゃない、少なくとも今の私が求めていた旅のスタイルはこれだったんだなぁ、としみじみ思いながら帰路についたのでした。どうやら同行してくれた友人も同じだったようです。

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古民家といっても地域ごとで造りや雰囲気が違うそう。ほかの二つのるうふにも泊まりたくなってしまいます

■るうふ
https://loof-inn.com/

PROFILE

  • 「あの街の素顔」ライター陣

    こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、江澤香織、高松平藏、松田朝子、宮﨑健二、井川洋一、草深早希

  • こだまゆき

    知らない土地での朝食がなによりも楽しみなフォト派のライター。iPhoneで撮るのも一眼レフで撮るのもどちらも好き。自由で気ままな女性ならではの目線で旅のレポートをお伝えしています。執筆業は旅関連の他、デジカメ、雑誌コラム、インタビューなど。趣味は顔ハメパネル。

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