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最後の最後に派手な一撃 1等車と5つ星ホテルで巡るスイス鉄道旅 (10)インターラーケン~チューリヒ空港

スイスで5つ星ホテルを泊まり歩き、鉄道の1等車で国をぐるり1周する――。&TRAVEL副編集長が2019年8月から9月にかけて、そんな旅を体験しました。写真家の猪俣博史さんと二人三脚で巡った9日間の珍道中、最終回はインターラーケンからルツェルン経由でチューリヒ空港へ。災難続きだったこの旅で、何事もなく有終の美を飾るかに思われましたが、最後の最後で、やっぱり、お約束のトラブルが。
(文・動画:&TRAVEL副編集長・星野学 写真:猪俣博史)

【動画】ルツェルン=インターラーケン・エクスプレスの車窓から

第9回<気絶するほど悩ましいユングフラウ>から続く
第8回<クラシカルな車両でゆったり>はこちら
第7回<クイーンゆかりの地をめぐる>はこちら
第6回<絶景ワインヤードでクラクラ>はこちら
第5回<フレディ・マーキュリーの部屋に?!>はこちら
第4回<涙して見上げたマッターホルン>はこちら
第3回<揺れる車内で酒を注ぐ神業>はこちら
第2回<世界遺産の360°ループ>はこちら
第1回<チューリヒ空港~ポントレジーナ>はこちら

ヴィクトリア・ユングフラウ・グランドホテル&スパを探索

2019年8月30日午後3時前。頭はクラクラ、体はフラフラになった標高3454mのユングフラウヨッホから登山電車を乗り継いでインターラーケン・オスト駅に戻ってきました。猪俣さんと連れだって、宿泊先の「ヴィクトリア・ユングフラウ・グランドホテル&スパ」へと、てくてく歩いて戻ります。

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駅から続くメインストリートのヘーエ通りを歩いて宿へ

不思議なもので、標高567mのインターラーケンまで帰ってくると、ユングフラウヨッホで感じたしんどさは、うそのように治まっていました。メインストリートのヘーエ通りを歩くこと約10分。宿に戻り、一休みしたら、宿の広報担当パトリシア・ヘルドさんの案内で、館内取材の始まりです。

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ホテルの両翼を結ぶ回廊。モダンな色彩感覚。奥は団体用の入り口

インターラーケンのシンボルともいえるこのホテルは、1865年にホテル・ヴィクトリアとして開館しました。やがて東隣にあるホテル・ユングフラウを買収、1899年には二つのホテルを回廊で結んで「ヴィクトリア・ユングフラウ」となりました。この回廊、大胆な色使いのモダンな空間で、一見の価値ありです。

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館内のイタリア料理店「サポーリ」

こちらは、この日夕飯をいただく予定のイタリア料理店「サポーリ」です。高い天井とゴージャスな装飾に期待が高まります。テラス席もあり、ユングフラウを眺めながら食事ができます。

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ヘーエ通りに面したサポーリのテラス席には三輪トラックが

テラス席には三輪トラックが。日本でも1960年代の終わりくらいまで街中でよく見かけました、何だかとても懐かしい。

続いて館内の宴会場へ。ひときわ豪華な部屋へ通されたとき、2000年に取材したフランスのヴェルサイユ宮殿がぼんやり頭に浮かびました。「何だか、ヴェルサイユ宮殿みたいですね」とつぶやくと、「はい、こちらはヴェルサイユの間(La salle de Versailles)です」とヘルドさん。

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宴会場「ヴェルサイユの間」

え? そりゃまた奇遇な。バロック様式とベルエポック様式を混合させた造りだそうです。

この宿の自慢の一つはスパです。5500平方メートルもあり、とにかく広々としています。「1992年にここができた時、スイスでは最大、ヨーロッパでも有数の規模でした」とヘルドさん。

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スパエリアにある休憩スペース。飲み物もいただけます


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グリーンを基調にした落ち着いたルーム


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スパエリアにはハーブガーデンなども

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最後の夕飯にしんみり

取材を終え、シャワーを浴びてさっぱりしたところで、先ほどの「サポーリ」へ。前日の夜はフルコースをたっぷりいただいたので、この日は軽く済ませよう、ということで猪俣さんと意見の一致をみました。

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注文したサラダ

天井が高くてゴージャスな屋内も捨てがたかったのですが、スイスの夜もこれが見納め。さわやかな風に当たりたいと、テラス席を選びます。

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トマトソースのパスタ

ワインを飲み、食事をいただいているうちに、何だか感傷的な気分になってきます。暮れなずむ街の余韻に浸りながら、猪俣さんに話しかけました。

「……いろいろ、ありましたね」
猪俣さんも、思うところがあるのでしょう。一呼吸置いて語ります。
「本当ですねえ……」
「明日はいよいよ帰国ですか……。このまま、何事もないといいですね」

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あたりは次第に暗くなってくる

私たちが続けてきたのは、五つ星ホテルに泊まり鉄道の1等車で巡るという、もったいないほどのスイス旅で、紛争地帯や戦場の取材ではありません。それでも、慣れない土地を外国語で取材して歩くのは、なかなかしんどいもの。明日帰国便に乗るんだ、と意識したとたん、旅が長かったような短かったような、いわく言いがたい思いに駆られたのです。

「日本に戻ったら、また一杯やりましょうね」
「ええ、ぜひぜひ」

締めのグラッパをぐいと飲み干すと、あたりはすっかり暗くなっていました。

The VICTORIA-JUNGFRAU Grand Hotel & Spa
https://www.victoria-jungfrau.ch/en

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ルツェルンへ 乗務員さんのヒントに大助かり

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インターラーケンの美しい朝焼け

一夜明けた8月31日。インターラーケン・オスト駅から、午前8時4分発のルツェルン=インターラーケン・エクスプレスに乗り、古都ルツェルンへ向かいます。途中立ち寄る街もなく、車窓からの取材を続けて、そのままチューリヒ空港へ向かうスケジュールです。

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車両はモダンなデザインです。1等車に乗り込んで腰を落ち着け、周りを見渡すと、韓国系の方々が大勢乗っておられました。ツアーに参加のみなさんでしょうか。欧州の電車に乗っていることを、しばし忘れそうになります。

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我々が乗ったルツェルン=インターラーケン・エクスプレス

ほどなくして、女性の乗務員さんが検札に現れました。パスポートと乗り放題乗車券「スイストラベルパス」を一緒に渡そうとすると、「日本のジャーナリストですね。話は聞いてます」とにっこり。第3回で紹介したグレッシャー・エクスプレス(氷河特急)の時もそうでしたが、スイスでは、鉄道内での情報伝達が、実に行き届いていました。

外国での取材では、事前に許可をとったり訪問の連絡をしても、当日現場で「そんな話は聞いていない」と言われて一騒動、ということが結構あります。今回の旅でも、もめたら取り出して説明しようと、路線ごとに取得した撮影許可証をいつもリュックに入れて持ち歩いていました。でも、提示を求められることはありませんでした。話が通っていたからです。

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乗務員のイルマ・キルヒャーさん

乗務員さんにお名前をうかがうと、イルマ・キルヒャーさんとおっしゃいます。「この鉄道は途中のマイリンゲンから、一部区間が(歯車を使って急勾配を走る)ラック式鉄道になります。マイリンゲンから先は進行方向左側がいい景色です。写真、撮られますよね?」

ありがとう、キルヒャーさん。それ、とても重要な情報です。撮りたい場所があっても、どちら側にあるかまではなかなか事前にわからないもの。シャッターチャンスがごく短時間、というケースもあり、あらかじめ教えてもらえると、本当に助かります。キルヒャーさんはこのあとも、節目節目で顔を出して、声をかけてくれました。

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ブリエンツ湖の深い緑色

インターラーケン・オスト駅を出ると、列車はブリエンツ湖に沿って走ります。マイリンゲンからのラックレール区間は、まずブリュニック峠へ向かう上り坂。やがて、この路線最高地点(標高1002m)の、ブリュニック・ハスリベルク駅に着きます。

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ブリュニック・ハスリベルク駅

峠を越えると、進行方向左手すぐに湖、その向こうに山、という景色が、しばらく続きます。

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ルンゲルン湖を望む

ルンゲルン湖沿いの街には、美しい建物が並んでいます。

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湖に浮かぶ釣り船

湖には釣り船もちらほら。これもまた、絵になる風景です。

サルネン湖を抜け、アルプナッハ湖のほとりにあるアルプナッハシュタート駅に着くと、斜面に赤い電車が張り付くように走っていました。「ピラトゥス鉄道です。世界一急な勾配を走る登山電車ですよ」と、キルヒャーさんが教えてくれます。


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中央の赤い列車が、ピラトゥス鉄道の車両

え、こんな場所にそんな鉄道が! 乗りたい……ですが、2000mを超える場所まで上っていく列車です。乗ったら飛行機には間に合いません。やむなく、次の機会に期待することにしました。

およそ1時間50分で、ルツェルン駅に到着です。

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ルツェルン駅

くしくも、ルツェルン音楽祭の真っ最中。湖のほとりで開催される、いつかは聴きにいきたいと思っていた祭典でした。しかし、普通電車に乗り換えてチューリヒ空港に向かわねばなりません。乗り換え時間はわずか15分。「絵画のよう」とたたえられる景観を見ることもなく、空港行き列車がとまるホームへとぼとぼ歩きます。チューチヒ空港への到着は定刻通り、午前11時14分でした。

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出国審査には長蛇の列、そして……

搭乗便へのチェックインを済ませ、空港内で軽く昼食を。おみやげを買ってくるという猪俣さんといったん別れてひとり出国審査場に向かったものの、パスポートと航空券を手にした人が長蛇の列をなしています。待ち時間ゼロでスイスに入国できた行きとは天地の差で、通過までに45分もかかりました。

ようやく搭乗ゲートに着くと、出発まであと20分。あの混雑を思い出し、猪俣さんはどうしただろうと、にわかに心配になってきます。ファーストクラス、ビジネスクラスと、順々に乗客が登場していきます。我々のエコノミークラスの搭乗も始まり、乗客がほぼ乗り込んでしまった搭乗締め切り5分前になっても、猪俣さんはまだ現れません。

「困ったな……。もし搭乗時間を過ぎてしまったら、事情を説明すれば待ってくれるんだろうか? ダメだと言われたら? 猪俣さんを置いて自分だけ搭乗することはできない……」。最悪のケースへ向けて脳内シミュレーションをしていると、締め切り2分前に、ようやく猪俣さんが到着。やはり出国審査で激しく待たされたそうですが、ともあれ、予定の便に搭乗できて一安心です。

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さよなら、スイス、また来る日まで

宙を舞った飛行機がぐんぐん高度を上げ、街が眼下でジオラマのように小さくなっていきます。スイス政府観光局のメディアマネジャー・押尾雅代さんに万事遺漏なく整えていただいたにもかかわらず、自分の落ち度で次々にトラブルに見舞われ続けた旅も、これで無事終わりそうです。

……でも、そうは問屋が卸さないのです。最後の最後に、派手な一発が待っていました。

フライトも半ばを過ぎたころ、機内のトイレから出ようとしたら、2~3歳の女の子が若いお母さんと一緒に待っていました。あ、早く出てあげなきゃ。しかしなぜか、扉は押しても引いてもびくともしません。深呼吸をして思い切り引いたところ、扉は勢いよく吹っ飛んできて額を直撃! 「ドゴッ」という音とともに、一躍、周囲の視線を浴びる存在に。

「Oh! Are you all right?」(大丈夫ですか?)
「No problem, no problem!」(大丈夫、大丈夫です)

心配して声をかけてくれたお母さんにそう返してはみたものの、実は、全然大丈夫ではありませんでした。目から星が出たとはこのこと。右目の5㎝ほど上がみるみるふくれてきます。慌てて最後尾にある客室乗務員の待機場所へ行き、氷をたっぷり入れたビニール袋をもらっておでこにあてます。息が止まるほどの冷たさですが、ここはがまん、がまん。

ついでに、ブランデー、ウイスキーと、酒のミニボトルを何本ももらってきたので、席に戻ったらおでこに氷のうをあてながら、ぐびぐび。こういう時に酒はやめたほうがいいのでしょうけれど、「痛み止めと、このあとぐっすり眠るため」とわけのわからない理屈をつけて飲み続けました。

しかし、そのかいもなく、結局12時間のフライトで、1時間半ほどうとうとしただけ。唯一の救いは、席が離れていて機内で一度も会わなかった猪俣さんに、飛行機が成田に着いた9月1日の朝合流してから「おでこ、どうしたんです?」と指摘されなかったことだけ。

こっそりおでこに触れてみたら、微妙に盛り上がっている、という程度にまで回復していたのでした。

(おわり)

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【取材協力】

スイス政府観光局

スイス インターナショナル エアラインズ

スイストラベルシステム

スイス・デラックス・ホテルズ

スイス1周鉄道旅

PROFILE

&編集部員

国内で、海外で。&編集部員が話題の旅先の新たな魅力を「発見」し最新情報をリポートします。

気絶するほど悩ましいユングフラウ 1等車と5つ星ホテルで巡るスイス一週鉄道旅(9) インターラーケン~ユングフラウヨッホ

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初めてのネバダ州ラスベガス旅行、アウトドアなアクティビティーを満喫

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