ちょっと冒険ひとり旅

清滝川ハイキングと寺巡りも 「京都一周トレイル」で冒険旅#5

近場でも冒険気分を味わいたい……というわけで、京都在住の旅行ライター・山田静さんが選んだ冒険先は地元・京都。京の都をぐるりと囲むトレイルルート「京都一周トレイル」完歩に挑戦。北山コースの後半は、北山杉と「三尾(さんび)」と呼ばれる紅葉の名所である三つの地域を歩く絶景続きのルート。

(トップ写真は氷室集落)

■何回目かのひとり旅、ちょっとだけ冒険してみたい。そんな旅人のヒントになりそうな旅先や旅のスタイルを紹介している連載「ちょっと冒険ひとり旅」。京都で旅館の運営をしながら、旅行ライターとしても活躍する山田静さんが、飛行機やバスを乗り継いで比較的簡単に行ける、旅しがいのあるスポットをご紹介していきます。バックナンバーはこちら

京都一周トレイル 北山コース(3)山幸橋〜高雄白雲橋 11.5キロ

京都一周トレイルのなかで個人的にいちばん印象が強いルートを選ぶとしたら、この部分。賀茂川(鴨川)上流域から山に分け入り、田園と森が織りなす風景が美しい氷室集落、みごとな北山杉の木立を通過し、渓谷に沿って進み紅葉の名所槙尾(まきのお)へと抜ける。

前回に続き熊出没注意のエリアで、足場が悪いところも多いのだが、周囲の風景が疲れも吹き飛ばしてくれた。

ワイルド&ハード! 北山杉の山を抜け高雄へ

山道

標高130mの山幸橋から盗人谷を経て標高395mの小峠へと続く山道は、2018年夏の大雨や台風による倒木が残り、道もところどころ消えている。京都府山岳連盟トレイル委員会などが山道の整備をしており、危険な箇所や分かれ道には誘導テープや案内板、あるいは迂回(うかい)路が用意されている。安全な山歩きを助けてくださる方々に感謝。

空

小峠を越えると空が開ける。集落が近い!

山幸橋から1時間半ほど登り氷室に到着。名前の通り京都周辺にいくつかあった氷室のひとつで、平安時代、夏になるとこの地から氷塊が長い道のりを経て宮中に運ばれていった。集落にはいまも氷室跡が残されている。額田大中彦皇子に氷を献上したとされる稲置大山主神を祭っている氷室神社もある。

この地で目を奪われるのは里山の美しさだ。まっすぐ天にそびえる北山杉の森、田園、花咲く小道、静けさに包まれた神社。お弁当でも広げて半日過ごしたいのどかさだが、特に観光地というわけでもないので、住民の方々の邪魔をしないように静かに通過。京都一周トレイルを歩かなければ出会えなかった風景だった。

道

トレイルルートは集落を突っ切って続く。いつまでも歩けそうな道だ

道

名残惜しいが氷室集落は30分ほどで通過。ここから再び山道に分け入っていく

しばらく車道や林道を歩いたあと、5キロほど続く長い尾根歩きに入る。アップダウンはそれほどないが、前半と同じく、通行できない場所や足場が悪いところがいくつかあり、慎重に道標通りの迂回路をたどる。個人所有の山林も多いので進入禁止の道もあちこちにあり神経を使うが、北山杉の景観、そして台杉や槇(まき)の木など「ウチの宿にもある!」という庭木が数多く育てられているのを見て感心しているうちに道はなだらかな下りへと入り、渓谷沿いを歩くうちあっと言う間に槙尾に到着してしまった。

看板

京見峠から上ノ水峠の間は、秋はマツタケの収穫があり通行禁止となり、迂回路を回ることになる。今年の収穫はどうだったのだろう

沢ノ池

沢ノ池に到着! 周囲に河川がなく水不足に悩まされ、江戸時代に造られたと伝えられる貯水池だ

並木

トレイルルート沿いに続く杉の並木。小さな木から家の柱になりそうな木まで植林されていて、眺めていて飽きない

台杉

ひとつの株からいくつもの幹がフォークのように真っすぐ上に伸びる「台杉」は北山で編み出された育林方法だそう

バス停

「槙ノ尾」のバス停に到着! ここからゴールの清滝までは4キロ。あと少しで北山ルートを完歩だ

<今回のデータ>
歩行時間 約6時間
歩行距離 約11.5キロ
最高地点標高 410m(仏栗峠)
最低地点標高 127m(高雄白雲橋)

<アクセス>
出発点:京都バス・山幸橋バス停
到達点:JRバス・槙ノ尾バス停

京都一周トレイル 北山コース(4)高雄白雲橋〜清滝 3.9キロ

北山コース4回目は3.9キロで、いままでに比べるとぐっと短距離。これには理由があって、トレイルルートから寄り道できる範囲に、高山寺・西明寺・神護寺(じんごじ)という名刹(めいさつ)があり、せっかくなのでゆっくりと参拝しよう、という計画だ。

古寺巡り

三つの寺院がある場所は地名でいうと栂尾(<とがのお>高山寺)、槙尾(西明寺)、高雄(神護寺)であわせて「三尾」と呼ばれ、ぐるりと巡れるように参拝ルートも整備されている。それぞれの本殿に行くには小高い丘をひと登りしないといけないが、トレッキングシューズなら楽々だ。歩いたのは9月1日、晩夏で人出も少なく山寺の静寂を存分に味わえた。

指月橋

西明寺の前にかかる指月橋。清滝川と赤い橋のコントラストも美しく、この日はコスプレイヤーが何組か撮影に来ていた

参道入り口

空海・最澄ゆかりの名刹(めいさつ)、神護寺の参道入り口。ここからひと登りする間に、茶店や休憩所がいくつもある。訪れた日はほとんど人がいなかったが、紅葉シーズンでそろそろにぎわいを取り戻しているだろうか

素焼きの皿

神護寺名物・かわらけ投げ。展望台から錦雲渓めがけて素焼きのお皿を投げ、厄よけを祈願する

ひやしあめ

茶屋でひやしあめを1杯。「今年の夏はあんまりひやしあめも売れなくてなあ」と店員さんも寂しそうだった

梅おろしそば

神護寺の参道にある茶屋で梅おろしそばをいただく。今頃は周囲の風景が紅葉で真っ赤に染まっているはず

昼食をすませ、三尾をあとにして目指すは北山コースのゴール、清滝だ。清滝川沿いに整備された錦雲渓のハイキングコースは平らで歩きやすく、そそりたつ岩壁と渓流、森が続く風景は見飽きない。三尾とこのハイキングコース、紅葉の時期はさぞ美しいだろう。また来なければと心に誓いながら、京都一周トレイル随一の楽ちんルートをのんびり歩いた。

崖

錦雲渓の川岸。崖が好きなので、こういう風景はたまらない

清滝川

清滝川を眺めながらのハイキング

滝

小さな滝やわき水にも出合う。残暑が厳しい日だったので、こんな水の流れに癒やされる

清滝川

清滝川の風景。紅葉したらさぞ見事だろう

およそ1時間半で、清滝バス停に到着! これにて北山コース完歩だ。足場が悪いところも多かったが、大原や氷室の里山風景、北山杉の森、鞍馬や三尾の山寺巡りと期待以上にすばらしく変化に富んだコースだった。

標識

清滝金鈴橋近くにある北山コースの標識94。これにてゴール!

次回はいよいよ最後に残った西山コース。清滝から嵐山へと歩く、観光もたっぷり楽しめる山歩きだ。

<今回のデータ>
歩行時間 約4時間
歩行距離 3.9キロ
最高地点標高 127m(高雄白雲橋)
最低地点標高 80m(清滝金鈴橋)

<アクセス>
出発点:JRバス・槙ノ尾バス停
到達点:京都バス・清滝バス停

京都一周トレイルWebサイト
https://ja.kyoto.travel/tourism/article/trail/

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BOOK

清滝川ハイキングと寺巡りも 「京都一周トレイル」で冒険旅#5

京都で町家旅館はじめました(双葉社)

京都に開業した町家旅館のマネジャーをつとめることになった著者が、開業準備から実際の運営に至るまでのドタバタとドキドキ、そして京都のお気に入りスポットなどを綴(つづ)ったエッセーガイド。1540円(税込み)。

 

清滝川ハイキングと寺巡りも 「京都一周トレイル」で冒険旅#5

旅の賢人たちがつくった
女子ひとり海外旅行最強ナビ(辰巳出版)

連載「ちょっと冒険ひとり旅」著者の山田静さんが、海外ひとり旅に行きたいすべての人にお届けする、旅のノウハウをぎゅっと詰め込んだ1冊。行き先の選びかた、航空券やホテルをお得に効率よく予約する方法、荷物選びと荷造りのコツ、現地での歩きかたのツボ、モデルルート、遭遇しがちなトラブルとその回避法など、準備から帰国までまるっとカバーしました。旅の達人によるコラム記事やアンケートも満載で、ひとり旅の準備はまずこの1冊から。1650円(税込み)。

PROFILE

山田静

女子旅を元気にしたいと1999年に結成した「ひとり旅活性化委員会」主宰。旅の編集者・ライターとして、『旅の賢人たちがつくった ヨーロッパ旅行最強ナビ』『旅の賢人たちがつくった 女子ひとり海外旅行最強ナビ』(辰巳出版)、『決定版女ひとり旅読本』(双葉社)など企画編集多数。最新刊『旅の賢人たちがつくった スペイン旅行最強ナビ』(辰巳出版)。2016年6月中旬、京都に開業した小さな旅館「京町家 楽遊」の運営も担当。

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