京都ゆるり休日さんぽ

禅寺アートと紅葉色づく「建仁寺」 秋の祇園そぞろ歩き

京都らしい街並みや文化がそこかしこに息づく、祇園。その中心地にある「建仁寺」は、京都最古の禅寺であり臨済宗建仁寺派の大本山です。長い歴史と信仰に支えられているだけでなく、本坊はまるで、庭園と絵画、名画と現代アートが競演する美術館のよう。今回の散歩では、紅葉に彩られた境内と禅アートとともに、おいしい食事と手みやげのスポットもご案内します。
(メイン写真=photolibrary〈https://www.photolibrary.jp/〉)

■暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。
(文:大橋知沙)

絵画や庭園……紅葉が彩る、時空超えた禅の美

境内に10以上の<a href="https://kotobank.jp/word/%E5%A1%94%E9%A0%AD-93606">塔頭</a>を有する建仁寺通常拝観可能な箇所は本坊のみ(画像=<a href="https://www.photolibrary.jp/">photolibrary</a>)

境内に10以上の塔頭を有する建仁寺。通常拝観可能な箇所は本坊のみ(画像=photolibrary

建仁寺といえば、にらみをきかせた法堂の天井画「双龍図」や、国宝「風神雷神図」が思い浮かぶ人も多いのではないでしょうか。まさに、建仁寺は京都きっての「お寺アート」の宝庫といえる禅寺。火災や戦乱、災害で何度も荒廃の危機に陥りながらも、時の禅僧や幕府の保護、そして絵師たちの協力によって、復興を遂げてきました。安土桃山時代や平成の作など、境内を彩る時代を超えた芸術作品は、文化発信地としての建仁寺を支え、愛してきた人々を物語るものでもあるのです。

「三門」をくぐり、法堂に入ると迎えられる小泉淳作氏・筆の「双龍図」(画像=<a href="https://www.photolibrary.jp/">photolibrary</a>)

「三門」をくぐり、法堂に入ると迎えられる小泉淳作氏・筆の「双龍図」。「阿吽(あうん)」の口の描写にも注目したい(画像=photolibrary

大迫力の法堂の天井画「双龍図」は、2002年に創建800年を記念して奉納された、日本画家・小泉淳作氏によるもの。青みがかった墨で描かれた龍は神秘的で、強い眼力ながらどこかユーモラスな表情にも見えます。この現代の龍は、龍の名手とたたえられた安土桃山〜江戸初期の絵師・海北友松(かいほう・ゆうしょう)のふすま絵へのオマージュともいえる作品。かつて、建仁寺の復興のため50面ものふすま絵を奉納した友松の作品も、境内の方丈で高精彩複製を見ることができます。

四方が廊下で囲まれた「潮音庭」(画像=<a href="https://www.photolibrary.jp/">photolibrary</a>)

四方が廊下で囲まれた「潮音庭」は360度どこからでも眺めることができる(画像=photolibrary

建仁寺には三つの庭があり、中でも紅葉がひときわ美しいのが「潮音庭」。現役の作庭家・北山安夫氏が監修し、向かいの枯山水庭園「◯△□(まるさんかくしかく)乃庭」とともに、現代の建仁寺の空間美の核となる存在です。庭園をぐるりと囲む廊下のどこからでも眺めることができ、秋は燃えるような紅葉が三尊石を包みます。

中央の三尊石の凜(りん)とした均衡に姿勢を正される(画像=<a href="https://www.photolibrary.jp/">photolibrary</a>)

中央の三尊石の凜(りん)とした均衡に姿勢を正される。秋は色づいたモミジがひときわ美しい(画像=photolibrary

晩年の俵屋宗達の傑作「風神雷神図」(画像=<a href="https://www.photolibrary.jp/">photolibrary</a>)

晩年の俵屋宗達の傑作「風神雷神図」。落款(らっかん)はないものの、宗達独自の技法が各所に見られる(画像は陶版複製)(画像=photolibrary

「潮音庭」をのぞむ大書院には、俵屋宗達の代表作「風神雷神図」の高精彩複製の屛風(びょうぶ)画が。斬新な構図と躍動感たっぷりの筆致で宗達の傑作と名高く、復興のため建仁寺派の禅寺・妙光寺から寄贈されたと伝えられます。また、方丈前の庭園「大雄苑」は昭和の作庭家・加藤熊吉が手がけたもの。簡素ながらも雄大な存在感のある「大雄苑」は、1934年の室戸台風で倒壊した建物の再建に際して、作られました。

昭和の名作庭家・加藤熊吉による「大雄苑」(画像=<a href="https://www.photolibrary.jp/">photolibrary</a>)

昭和の名作庭家・加藤熊吉による「大雄苑」。現役の北山安夫監修の「潮音庭」と、二つの世代の庭を同時に観賞できるのも建仁寺の魅力(画像=photolibrary

いくつもの時代をまたぎ、建仁寺に息づく芸術作品の数々。それらは、禅の思想と文化芸術を絶やすまいと心を砕いてきた、人々の願いの象徴でもあります。アートと紅葉と禅寺の、時空を超えたコラボレーションをぜひ堪能してみてください。

建仁寺
https://www.kenninji.jp/

行き帰りに和朝食と手土産 祇園のお立ち寄りスポット

建仁寺にほど近い路地にたたずむ「朝食喜心 kyoto」は、参拝の前後に立ち寄りたい上質な和食店。朝7時半から14時50分まで営業(L.O.13時半。五つの食事時間帯から要予約)しているので、朝一番にぜいたくな朝食を味わうのも、ブランチとしてゆっくりと食事を楽しむのもおすすめです。土鍋で炊き上げ、みずみずしい煮えばなから、少し蒸らしたしゃっきりとした歯ごたえまでを味わえるごはん、身体にしみわたる季節の汁物など、ていねいに作られた献立がしみじみと心を満たします。

土鍋で炊き上げたごはんと汁物を基本とした「喜心の朝食」(2500円・税別)(撮影:津久井珠美)

土鍋で炊き上げたごはんと汁物を基本とした「喜心の朝食」(2500円・税別)。汁物は3種類から選べる(撮影:津久井珠美)

朝食喜心 kyoto
https://www.kishin.world/

祇園まで足を運んだら、のぞかずにいられない手土産の専門店が「白(はく)」。完売必至の名物「おはぎ」は現在休止中ですが、洗練されたパッケージと繊細な風味の手土産は、贈る側もいただく側も幸せになれるひと品です。季節の草花の美しいしつらえと、包装を待つ間の中国茶のもてなしにも癒やされます。

パッケージも美しい手土産が並ぶ(撮影:津久井珠美)

パッケージも美しい手土産が並ぶ。日持ちのする菓子や「むしやしない」といった小腹を満たす軽食もある(撮影:津久井珠美)

白(はく)
https://haku.kyoto.jp/
(過去記事はこちら

文化を知り、アートに出会い、大人の上質を味わう祇園歩き。舞妓さんや修学旅行のイメージの強い祇園も、違う角度から味わえば、より洗練された素顔に出会えるかもしれません。

 

■「京都ゆるり休日さんぽ」のバックナンバーはこちら

BOOK

禅寺アートと紅葉色づく「建仁寺」 秋の祇園そぞろ歩き

京都のいいとこ。

大橋知沙さんの著書「京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が2019年6月7日に出版されました。&TRAVELの人気連載「京都ゆるり休日さんぽ」で2016年11月~2019年4月まで掲載した記事の中から厳選、加筆修正、新たに取材した京都のスポット90軒を紹介しています。エリア別に記事を再編して、わかりやすい地図も付いています。この本が京都への旅の一助になれば幸いです。税別1200円。


PROFILE

大橋知沙

編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

「おいしい野菜」から始まる輪 西陣の八百屋食堂「ベジサラ舎」

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秋の特別公開・紅葉の大徳寺塔頭と、洛北おすすめ店

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