永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(84) 灰の数ほど捧げられた祈り 永瀬正敏が撮った台湾

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回は台湾で撮った、お線香と灰。なぜ、カメラを向けたのでしょうか。

(84) 灰の数ほど捧げられた祈り 永瀬正敏が撮った台湾

©Masatoshi Nagase

台湾にもたくさんの立派な寺院がある。
台湾にうかがった際は参拝する機会が多々ある。
この写真もその時のものだ。

台湾で驚くのが、普通の商店街の中にいきなりとても立派な寺院があったりすること。
それも近隣に多数建っていたりする。

映画の撮影がクランクインする際、よくお祓(はら)いの儀式をする。
安全を祈願し、現場に神主さんを招いたり、神社にうかがったりして、式を執り行っていただく。
ヨーロッパやアメリカなどではあまりお祓いをした記憶はないが、アジア圏ではよく行われる。

日本の場合は、激しいアクションシーンや死を描く場面がある場合、ホラーなどは必ずお祓いをするが、
恋愛ものとか青春ものとかでは行わないこともある。

中華圏の作品のお祓いはものすごくゴージャスだ(いつかこの連載でも紹介したい)。
お供えの果物やお菓子などを大量に祭壇に並べ、お線香をつけて祈りを捧げる。
たまに子豚の丸焼きなどをお供えする時もあって、その後ランチ等でそのお肉はみんなでいただく。
ある作品の時は毎朝お線香でのお祈りをし、セットやロケ場所が変わる時も必ずお祈りした。

ここでも今までたくさんの祈りが捧げられただろう。
たくさんの願い事や感謝の気持ちが伝えられただろう。
長い歴史の中、この細かい灰の粒子のように、たくさんの願いが。

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PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作にオダギリジョー監督「ある船頭の話」、周防正行監督「カツベン!」、甲斐さやか監督「赤い雪」 、大森立嗣監督「星の子」など。 写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2021年1月16日から3月21日まで、愛知県の「高浜市やきものの里かわら美術館」で写真展が開催される。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

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