楽しいひとり温泉

温泉+時代空間 箱根登山鉄道で行く塔ノ沢「元湯 環翠楼」

箱根の旅は楽しみがたくさんあります。温泉宿へ直行してのんびり過ごすのもいいけれど、あれこれと立ち寄りたい場所もあるし、どんなランチをどこで食べるかも重要。車でなくても、様々な乗り物を駆使して巡ることができるのも、旅が楽しくなる要素になります。中でも箱根登山鉄道は、旅気分が盛り上がります。豪雨水害からいち早く復活をとげ、山の急斜面をスイッチバックして登っていく小さな登山鉄道の姿に元気をもらえる気がします。今回のひとり温泉は、渋滞をさけて、ストレスフリーの乗り物旅。箱根エリアの交通機関が乗り放題の箱根フリーパスを片手に箱根を巡りました。

■連載「楽しいひとり温泉」は、全国各地の温泉をめぐり、温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する、温泉ビューティー研究家の石井宏子さんが、テーマごとにひとり温泉にぴったりなお宿を紹介します。

塔ノ沢駅から穴場の遊歩道、絶品鯛ごはんランチ

山の急斜面をゆっくり登っていく箱根登山鉄道

山の急斜面をゆっくり登っていく箱根登山鉄道

箱根登山鉄道・塔ノ沢駅は、意外に降りる人が少ない穴場です。ひとつは、ホームに隣接する「銭洗弁財天」、風情たっぷりでご利益がありそう。そして、ゆっくりと下っていく野趣あふれる遊歩道。秋は、燃えるような紅葉、春は桜の隠れた名所なのです。道路へ下ると石の橋、国指定重要文化財「千歳橋」です。ここを渡ったところに、鯛(たい)ごはん懐石の「瓔珞」(ようらく)があります。

手こねでふんわりとした仕上がりの鯛ごはん

手こねでふんわりとした仕上がりの鯛ごはん

ひとりひとり注文にあわせて作る鯛ごはんは、一度食べたら忘れられないおいしさ。この鯛の器をぱかっと開けるのが楽しみです。ふんわりふっくら炊き上げた鯛のうまみたっぷりのごはんに、ふわふわしっとりな鯛の身がぎっしりのっています。こんなに食べられるかしらと思いきや、あまりのおいしさにぺろりとたいらげてしまいます。一番お手軽なランチのセット「わかば」(税別2,980円)でも、たくさんの小鉢のお料理がついていて大満足です。

登録有形文化財の元湯 環翠楼、やわらかな自家源泉の大浴場

元湯 環翠楼 本館の部屋「清流」

元湯 環翠楼 本館の部屋「清流」。広縁から早川の流れが望める

国の登録有形文化財の木造4階建て、磨き上げられた廊下や手すきガラスの窓など、風流な旅気分を味わえる元湯 環翠楼。1919(大正8)年に現在の環翠楼の建設と同時期に登山鉄道が開通、出山の隧道(トンネル)を掘っている際に出た湧水(ゆうすい)を、環翠楼では現在も飲料水や料理に利用しています。

今回は少しぜいたくをして温泉付きの部屋「清流」に泊まりました。部屋は1階で広縁からそのまま早川沿いの道へと出られるつくり。その道は宿の中からしか進入できないようになっているので安心です。温泉で温まって、川沿いの道を浴衣でそぞろ歩いて夕涼み。寒くなったら、また、温泉へ。

レトロモダンな大浴場の入り口

レトロモダンな大浴場の入り口

館内の意匠がレトロで絵になる場所ばかり。大浴場の入り口は洋風のしっくい彫刻と照明、箱根の草花や風景をモチーフにしたステンドグラスのあしらいなど、モダンな雰囲気です。

タイル紋様が美しい大浴場

タイル紋様が美しい大浴場

タイル紋様が美しい大浴場。天井の八角形の穴は湯気を逃がす窓で、中庭へ湯小屋の頭がでている仕組みになっています。奥の湯船はぬるめでゆっくり入ることができます。その横にある洞窟は、冷たい源泉の打たせ湯。温泉でほてった体に気持ちいい。手前の丸い湯船は深くて熱めの湯です。新鮮な源泉がとうとうと注がれていてお湯のやわらかさ、フレッシュさを満喫、首まですっぽり入って「ふぅううう」っと温まります。

3本の源泉を駆使して一番いい状態に湯を調える

3本の源泉を駆使して一番いい状態に湯を調える

アルカリ性単純温泉の魅力をとことん満喫。単純温泉は、成分総計が少なめで優しい作用の温泉ですが、含まれている成分のバランスにより微妙な個性の違いを感じられる通好みの湯でもあります。この宿では3本の源泉を大浴場、露天風呂、部屋温泉と、それぞれブレンドを変えて注いでいるそうで、入り比べてみると、少しずつ感触や香りが違います。大浴場の湯口では、硫酸塩泉系の個性が感じられます。ほんのり湯の香が漂い、肌を包み込むような感触は薄絹の衣をまとうかのようで、夢心地です。

迫力ある渓流の水音をきく露天風呂

中庭を通って露天風呂へ向かう

中庭を通って露天風呂へ向かう

露天風呂は中庭を歩いていきます。途中に稲荷がまつられている神社があり、商売繁盛、仕事の成功を祈願できます。その先に露天風呂が二つ。男女別になっていて、夜は貸し切りで入ることができます。

二つある露天風呂のひとつ。夜は貸し切り利用できる

二つある露天風呂のひとつ。夜は貸し切り利用できる

渓流を見渡す場所にある露天風呂は、水音の迫力がすごい。爽やかな風を感じながら入る湯は、ずっと入っていたい気持ちよさ。こちらは、少しブレンドが違うようで、感触は、さらりとした塩化カルシウム系でした。

月替わりで季節を味わう部屋食の幸せ

部屋でのんびり食事ができるのも魅力

部屋でのんびり食事ができるのも魅力

環翠楼本館は、全室が部屋食。他人の存在を気にせず、のんびり食事ができるので気楽です。箱根の山の幸や、相模湾や小田原の海の幸の両方を懐石風に楽しみます。地酒は「箱根山」。秋を感じる盛り付けの前菜で、お酒をひと口。お造りを味わいながら、もうひと口。ぜいたくな晩餐(ばんさん)です。

薄衣のようなこんにゃくと、うに白玉のお吸い物

薄衣のようなこんにゃくと、うに白玉のお吸い物

おだしの深い味わいに感激したお吸い物。薄衣のようなこんにゃくの下にあるのは、うに白玉。もっちりした白玉をほおばると、中から濃厚なウニが口の中にはじけます。最後は湧き水で炊き上げたつやつやの白ごはん。ほっこり幸せになる夕食でした。

箱根づくしの「環翠楼のあさげ」

宿泊した部屋は大理石の内湯付き。露天風呂の部屋もある

宿泊した部屋は大理石の内湯付き。露天風呂の部屋もある

朝の光で目が覚めたら、部屋の温泉へ直行。清流の部屋は大理石の内湯。深くてすっぽり全身がお湯に包まれる湯船の中ほどに穴があり、そこからぷくぷくと源泉を注いでいます。これにより、空気に触れることなく新鮮な湯の状態が保たれる、湯船全体のお湯が適温になる技ありの造りなのです。お湯の感触は、つるつる感があり、塩化物っぽさも感じられます。

地元のおいしいものが並ぶ朝ごはん

地元のおいしいものが並ぶ朝ごはん

朝ごはんもお部屋で。「環翠楼のあさげ」と名付けられた献立表には、地元食材の細かな情報がのっています。アジの干物は、老舗・山安のもので箱根の自然水とミネラル豊富な天然塩で仕上げ。籠清の角焼きかまぼこは、手焼きで弾力がすごい。菊大の焼きのりは自然天日干しだから風味豊か。みそ汁は地元の「いいちみそ」。茶わん蒸しは地卵。サラダは地元・八百忠の野菜。そして、箱根の湧き水で炊いた白ごはん。まさに地元づくし。そんな情報をふむふむと読みながら、ひとつひとつ味わう楽しい朝ごはんでした。

箱根フリーパスでロープウェイのダイナミックな景色を満喫

箱根フリーパスでロープウェイのダイナミックな景色を満喫

元気いっぱいに宿を出発、2日目は、フリーパスを駆使して箱根巡りへ出発です。荷物は宿から箱根湯本駅まで運んでくれるキャリーサービスを利用。身軽に旅ができます。箱根登山鉄道に乗り、強羅でケーブルカー、早雲山で「箱根ロープウェイ」に乗り換えて大涌谷へ。もうもうと立ち昇る迫力の温泉噴気の向こうには、雄大な富士山。やっぱり、箱根に来たらこの風景を拝まなければと思いました。

神奈川県・塔ノ沢温泉 元湯 環翠楼
https://www.kansuiro.co.jp/
※Go To トラベルキャンペーン対象宿

鯛ごはん懐石 瓔珞(ようらく)
https://www.youraku.co.jp/

■「楽しいひとり温泉」ポイント
1.豊富な自家源泉を満喫
2.歴史を刻んだ時代空間
3.部屋食でのんびり

BOOK

温泉+時代空間 箱根登山鉄道で行く塔ノ沢「元湯 環翠楼」

全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!

石井宏子さんの著書「全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!」(世界文化社)。温泉ビューティー研究家・旅行作家ならではの、旅してみつけた、女性がひとりで安心して楽しめる温泉宿を紹介するハンディーな一冊。公共交通機関で行ける、自分へのごほうびで泊まりたい、いい宿を全国から厳選し、あわせて、女性目線で選んだ周辺の立ち寄り先、ランチやスイーツも取り上げます。ひとりでも楽しい観光列車も登場します。税別1400円。

PROFILE

石井宏子

温泉ビューティー研究家・トラベルジャーナリスト。日本・世界の温泉や大自然を旅して写真撮影・執筆をする旅行作家。テレビにも出演。温泉・自然・食で美しくなる旅を研究する。海外ブランドのマーケティング・広報の経験から温泉地の企画や研修もサポート。日本温泉気候物理医学会会員、日本温泉科学会会員、日本旅のペンクラブ会員、気候療法士(ドイツ)、温泉入浴指導員。著書に「癒されてきれいになる おひとりさま温泉」(朝日新聞出版)、「地球のチカラをチャージ! 海温泉 山温泉 花温泉 76」(マガジンハウス)、「感動の温泉宿100」(文春新書)などのほか、「全国ごほうびひとり旅温泉手帖 いい湯、いい宿、旅ごはん!」(世界文化社)が11月に発売された。

温泉+信州 共同湯の街並みと宿をつなぐ 浅間温泉「松本十帖」

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