にっぽんの逸品を訪ねて

足利将軍を癒やした名庭園とは? 戦国時代を感じる滋賀の歴史さんぽ(2)

今回は前回に引き続いて、滋賀県大津市で行われている「びわ湖大津・光秀大博覧会」(2021年3月31日まで)の会場で明智光秀の足跡をたどりました。さらに琵琶湖畔を北上し、隣の高島市へ。織田家ゆかりの城跡や、大河ドラマ『麒麟(きりん)がくる』で向井理さんが演じた将軍・足利義輝(よしてる)も滞在した朽木(くつき)を訪ねました。期間限定の「光秀パフェ」もご紹介します。

(トップ写真は興聖寺、画像提供:興聖寺)

連載「にっぽんの逸品を訪ねて」は、ライター・中元千恵子さんが日本各地の逸品を訪ね、それを育んだ町の歴史や風土を紹介します。

謎の多い明智光秀 あなたが思い描く「光秀像」は?

大河ドラマ『麒麟がくる』の放映で注目される戦国武将・明智光秀は、謎の多い人物です。前半生は不明。「本能寺の変」で主君の織田信長を討った確かな動機も不明です。その後、“逆賊”というレッテルを貼られた光秀は長らく顧みられず、ゆかりのある地域も関わりを隠したので、光秀に関する資料はあまり公表されてきませんでした。

明智光秀供養米寄進状

前回紹介した「明智光秀供養米寄進状」(西教寺所蔵)は光秀の部下思いの一面が垣間見えます

そんな謎の多い明智光秀の生涯とその時代を紹介する「びわ湖大津・光秀大博覧会」が、大津市で開催されています。四つのメイン会場をめぐり、光秀の書状や逸話を見聞きすると、戦国という非情な時代を懸命に生きた姿や、情の深い一面も感じられ、500年ほど前の人物が身近に思えます。自分だけの「光秀像」を描くのも歴史さんぽの楽しみかもしれません。

大津市歴史博物館では比叡山焼き打ち直前の書状を展示

前回の坂本の3会場に続いて訪れたのは大津市街にある大津市歴史博物館です。2021年2月21日までは常設展示室で「明智光秀と戦国時代の大津」展を行っています。

大津市歴史博物館

眺めのいい高台にある大津市歴史博物館

展示

現在、光秀関連の資料も多く展示しています

貴重な資料の一つが、織田信長による比叡山焼き打ちの10日前に、光秀が雄琴(おごと)の土豪・和田氏にあてて書いた書状です。軍備のようすを伝え、ほかの土豪の帰順に礼を述べるなど、歴史上の一大事件直前のようすが伝わってきます。太い文字で書いた文章の間に、さらに細い字で追伸が書き足されているのは、伝達事項が次々に思い浮かんだのでしょうか。

「大津市指定文化財 明智光秀書状〔元亀2年(1571年)〕 9月2日付 個人蔵」(画像提供:大津市歴史博物館)

「大津市指定文化財 明智光秀書状〔元亀2年(1571年)〕 9月2日付 個人蔵」(画像提供:大津市歴史博物館)

書状

行間に細い字で追伸が書き足されています

「幻の城」とよばれる坂本城についても、映像や写真で詳しく解説しています。光秀が築城し、城主となった坂本城は、今は建物がなく、絵画も残されていないので詳細が分かりません。ただ、宣教師ルイス・フロイスは『日本史』のなかで、「信長が安土山に建てたものにつぎ、この明智の城ほど有名なものは天下にないほどであった」(『完訳フロイス日本史3 安土城と本能寺の変』より)と、その豪壮華麗さを伝えています。

解説映像

映像でも坂本城を解説

琵琶湖に面した坂本城で、光秀はしばしば茶会や連歌会を開催し、要人をもてなしたようです。屋形船で城周辺をこぎまわりながらの酒宴や、湖魚を捕まえる実演なども行った記録が残っています。光秀の茶の湯や連歌についての教養の深さもうかがえます。

ミニ企画展「明智光秀と坂本城」(2021年1月11日まで)では坂本城の発掘調査のようすや出土品を展示しています。黒い瓦に交じって、3割ほど赤い瓦が使用されていたようで、それがどのように使われていたのか、華麗な城の姿を想像するのも楽しみです。

瓦

坂本城跡から発掘された赤と黒の瓦

戦国を味で表現した「光秀パフェ」でちょっとブレーク

歴史さんぽの途中でぜひ味わいたいのが、「びわ湖大津プリンスホテル」の「光秀パフェ」です。滋賀県で開催中の観光キャンペーン「戦国ワンダーランド滋賀・びわ湖」と連動した期間限定メニュ―(12月30日まで)。

「光秀パフェ」

「光秀パフェ」

黒豆きな粉アイスや抹茶アイスを使った和風パフェで、明智光秀をイメージしたかぶと風のチョコレートと桔梗麩(ききょうふ)がトッピングしてあります。見た目はかわいらしいですが、味は本格的な大人の味。渋みのきいた抹茶アイスのおいしいこと。もちもちとした桔梗麩やなめらかなムース、プルンとしたゼリーなどさまざまな食感も楽しめます。

ロビーラウンジ

「光秀パフェ」は1階の「ロビーラウンジ ポート ニオ」で味わえます(画像提供:びわ湖大津プリンスホテル)

「びわ湖大津プリンスホテル」は、琵琶湖のほとりに立つ38階建て。湖畔でもひときわ目を引く地域のランドマーク的存在です。客室はすべて湖に面したレイクビュー。窓に広がるのびやかな風景や、館内のリゾート感あふれるぜいたくな空間に、非日常へと誘われます。

「びわ湖大津プリンスホテル」(画像提供:びわ湖大津プリンスホテル)

「びわ湖大津プリンスホテル」。設計は世界的な建築家の丹下健三氏(画像提供:びわ湖大津プリンスホテル)

ホテルでは期間限定で、「光秀パフェ」がセットになった宿泊プランや、「びわ湖大津・光秀大博覧会」の3施設の入場券がセットになった宿泊プランなどもあります。

琵琶湖畔を北上して高島市へ 光秀ゆかりの城跡も

大津市の北に広がる高島市にも、戦国史跡が残っています。JR近江高島駅から徒歩7分の大溝城跡は、安土桃山時代に築城された大溝城の本丸跡。明智光秀の設計と伝承されています。初代城主は信長のおいである織田信澄で、妻は光秀の娘でした。

大溝城跡

のどかな田園風景の中に大溝城跡が現れます

石垣

近づくと石垣が残っています

大溝城跡の脇には、万葉の時代から風光明媚(めいび)で名高い乙女ヶ池が広がっています。大溝城はこの池を外堀とする水城であり、「鴻湖(こうこ)城」ともよばれました。乙女ヶ池に架かる太鼓橋はNHK朝の連続テレビ小説「ごちそうさん」のロケ地です。主役2人が抱き合う名シーンに使われただけあって、風情ある景色です。

乙女ヶ池

乙女ヶ池周辺は散策にぴったり

JR近江高島駅の周辺には、武家屋敷地への出入り口だった「総門」や生活用水路の「町割り水路」など城下町の面影も残り、のんびり歩いて歴史さんぽが楽しめます。

足利将軍が住んだ朽木に残る名庭園は必見

高島市でぜひ訪れたいのが、朽木(くつき)の興聖(こうしょう)寺です。戦国時代は、都での戦乱を逃れ、室町幕府の12代将軍・足利義晴や13代将軍・義輝は、ここ朽木で幕府の政務を行いました。領主の朽木氏が将軍の親衛軍である奉公衆であったこと、そして朽木は越前と京都を結ぶ街道沿いにあり、いざとなれば日本海側へ避難できることも理由だったようです。義輝は計6年あまり滞在し、1万人の勤め人が居住したといわれます。

興聖寺

鎌倉時代の寛元元年(1243)に創建された興聖寺(画像提供:興聖寺)

興聖寺は鎌倉時代創建の古刹(こさつ)。江戸時代に、現在の場所に移りました。ここはかつて、義晴や義輝が居館とした岩神館跡。境内には、当時、将軍を慰めるために作庭した国指定の名勝「旧秀隣寺庭園(足利庭園)」が残っています。池のなかに鶴や亀に見立てた岩島を配し、樹齢500年近い老ツバキや、モミジなどが見事な枝ぶりで茂っています。岩を覆うコケが長い年月を物語り、厳かで幽玄な世界へ誘われます。この庭は千利休も訪れたといわれています。

「旧秀隣寺庭園(足利庭園)」(画像提供:興聖寺)

旧秀隣寺庭園(足利庭園)は、長い歴史を重ねた風雅なたたずまいが印象的。現在修復中ですが、庭園拝観は可能です(画像提供:興聖寺)

庭(画像提供:興聖寺)

庭は四季折々に表情を変えます(画像提供:興聖寺)

ツバキ(画像提供:興聖寺)

散ったツバキも色鮮やか(画像提供:興聖寺)

本尊は木造釈迦如来坐像。平安時代の名作といわれ、国の重要文化財に指定されています。

本尊

本尊は優美さと尊厳を兼ね備えた名作といわれる

朽木氏は戦国時代から明治時代まで、実に600年の間、朽木を治めました。そのため多数の古文書が代々伝えられ、「朽木文書(もんじょ)」は歴史を知る貴重な資料として知られています。朽木には、金ケ崎の戦いで敗走する信長が隠れたと伝わる「信長の隠れ岩」などの見どころもあり、歴史探訪が楽しいエリアです。

【問い合わせ】
・大津市歴史博物館
http://www.rekihaku.otsu.shiga.jp/

・びわ湖大津プリンスホテル
https://www.princehotels.co.jp/otsu/

・びわ湖大津・光秀大博覧会
https://otsu.or.jp/mitsuhide/

・びわ湖高島観光ガイド
https://takashima-kanko.jp/

・興聖寺
http://koushoji.jp/

・戦国ワンダーランド滋賀・びわ湖
https://sengoku.biwako-visitors.jp/

PROFILE

中元千恵子

旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの温泉宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。
全国各地のアンテナショップを紹介するサイト 風土47でも連載中

明智光秀はどんな人物? 戦国時代を感じる滋賀の歴史さんぽ(1)

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