あの街の素顔

世界遺産の地で、最高峰のリースリングに出会った ドイツ・ラインガウ

ドイツはビールだけでなく、じつはワインもおいしい国。なかでも、世界中で高く評価されているリースリングの銘醸ワインは格別です。2019年春、リースリングの最高峰とも称されるワインに会いに、名産地ラインガウを訪ねました。
(文・写真 坪井由美子=在ドイツ)

「ラインの真珠」リューデスハイム・アム・ライン

ドイツの空の玄関口、フランクフルトから電車で約1時間。窓の外には、雄大なライン川とブドウ畑が織りなす風景が流れ、旅情をかきたてます。これぞ世界遺産「ライン渓谷中流上部」のロマンチックな絶景! うっとりと「世界の車窓から」気分に浸っていると、ほどなくして目的地のリューデスハイム・アム・ラインに到着です。

世界遺産の地で、最高峰のリースリングに出会った ドイツ・ラインガウ

ロマンティックな景観とおいしいワインが楽しめるリューデスハイム・アム・ライン

リースリングの名産地、ラインガウの中心地であるリューデスハイム・アム・ラインは、「ラインの真珠」と異名を持つほど可愛らしい町。ライン川クルーズのハイライトとなっているため、大勢の観光客がやってきます。町一番の名所であるドロッセルガッセ(つぐみ横丁)の両脇には、レストランやワイン酒場、みやげ物屋がぎっしり。長さわずか150mほどの狭い小路は人で埋め尽くされ、まるでお祭りのようなにぎわいです。

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ワイン酒場が連なるドロッセルガッセは、世界で最も陽気な路地かも?

実演が見もののご当地名物「リューデスハイマー・カフェー」

陽気な生バンドの演奏に誘われてふらりと入ったのは、中庭が素敵なホテル・レストラン「リューデスハイマー・シュロス」。


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ホテル&レストラン「リューデスハイマー・シュロス」。建物は1729年築

店内は音楽に合わせて歌い、踊り、ワインを楽しむ人々でいっぱい。ちょうどブランデー入りの名物コーヒー「リューデスハイマー・カフェー」のデモンストレーションが行われ、おおいに盛り上がっているところでした。

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名物コーヒーのデモンストレーション。団体客のために大量に作っているところ

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ブランデー入り「リューデスハイマー・カフェー」

リューデスハイムの飲食店では、この飲み物を注文すると、店員さんが道具一式を運んできて目の前で作ってくれます。まず、地元のワインを蒸留してつくる名物ブランデー「アスバッハ」を角砂糖にかけ、火をつけてフランベ。そこへコーヒーを注ぎ、生クリームをこんもりと盛り付け、ココアをトッピングしてできあがり。一見甘いデザートのようですが、思いのほかアルコールがきいた大人味にびっくり。

すっかりほろ酔い気分になって、町の散策に出かけました。

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美しい木組み家屋がいっぱいで、カメラのシャッターを押す手が止まりません

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ワインにまつわる壁画が描かれたカフェ。看板にはバウムクーヘンが

ワイン樽の中で眠れるホテル

ドロッセルガッセの一角で、ワイン樽(だる)の中で眠れるというユニークなホテルを発見。特別に中を見学させてもらいました。


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実際に使われていたワイン樽を改造して客室にした「ホテル・リンデンヴィルト」

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ワイン樽の中のベッドルーム。なかなか寝心地が良さそう

ワイン樽でできた客室の扉を開けると、そこはもう寝室。奥には狭いながらもリビングスペースや浴室まであります。中は思った以上に広く、モダンなしつらえで居心地が良さそう。何より、ワイン樽の中で眠れるだなんて、想像しただけでわくわくする体験! いつか泊まってみたいものです。

ブドウ畑の大海原を、ゴンドラで空中散歩

リューデスハイム・アム・ラインは、急斜面のブドウ畑に囲まれた町。この斜面に垂直に日光があたるため、最高のブドウが育ち、最高のリースリングができるのだそうです。この「ブドウ畑の大海原」の上を往還するゴンドラは、リューデスハイムの楽しみの一つ。ニーダーヴァルトの丘まで、ゼクト(ドイツのスパークリングワイン)片手に、なんともぜいたくな空中散歩を楽しみました。

世界遺産の地で、最高峰のリースリングに出会った ドイツ・ラインガウ

ゴンドラに揺られ、ブドウ畑ごしのライン川の景観とゼクトを楽しむ

丘の頂上には、普仏戦争後のドイツ統一を記念し建設されたゲルマニアの女神像「ニーダーヴァルト記念碑」が、威風堂々と立っています。展望台からは、たおやかに流れるライン川とブドウ畑、美しい町並みや古城が一望のもと。


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1871年のドイツ帝国再建を祝し、1883年に建てられたゲルマニア像

このあたりはハイキングコースが整備され、絶景ポイントが点在しています。宿泊予定のホテルまでは2kmほどの距離だったので、森の中をのんびり散歩しながら向かうことにしました。

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ロマンチック・ラインの絶景を楽しみつつ、森の中をハイキング

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「ラインガウ・リースリング街道」の標識

この日の宿は、静かな森の中にある「ヤークトシュロスホテル・ニーダーヴァルト」。かつて貴族の狩猟用の城館だったという由緒ある建物ながら、一般的な古城ホテルよりもこぢんまりとしていて、アットホームな雰囲気です。


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丘の上に位置する「ヤークトシュロスホテル・ニーダーヴァルト」。鹿牧場も併設するのどかな環境

料理と眺望が評判のレストランで、待ちに待ったディナータイム。

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飲み物はもちろんリースリング。そして隣町アスマンスハウゼン名産の赤ワインも忘れずに

昼間のリューデスハイム・アム・ラインの喧騒(けんそう)とは対照的な、静寂に包まれた夜。こういう時間が、旅をより味わい深くしてくれるんですよね。それにしても、今日はよく飲みました。大人のコーヒーに始まり、泡(ゼクト)、白、赤まで堪能し、夢にもワインが出てきそう……。

ドイツワインの聖地へ

翌日は、リューデスハイム・アム・ライン近郊にある「ドイツワインの聖地」といわれる場所を訪ねました。

森とブドウ畑に囲まれてひっそりとたたずむエーバーバッハ修道院は、12世紀に建設されたシトー会の修道院。ほぼ当時のまま現存している建物はとても貴重なもので、ショーン・コネリー主演の映画「薔薇(ばら)の名前」のロケ地としても知られています。

世界遺産の地で、最高峰のリースリングに出会った ドイツ・ラインガウ

歴史的ワイン醸造所でもあるエーバーバッハ修道院。この日はイベント開催中でした。

この修道院は、中世から現在に至るまでワイン造りが続けられてきたという、ドイツワイン史を語るに欠かせない聖地。修道院が廃止され施設がヘッセン州のものとなった現在も、ラインガウ各所のブドウ畑で優れたワインを産み出しています。

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有名な特級畑「シュタインベルク」には、試食用ブドウやカフェも用意されています

なかでも銘醸畑として名高いのが、修道士たちによって開墾された「シュタインベルク」。ドイツ語で「石の山」という名前のとおり、高い石の壁で囲まれています。この壁が冷気を遮断し、ブドウの熟成に好影響を与えるのだそう。この畑のブドウから造られる「シュタインベルガー」は、かの鉄血宰相ビスマルクが愛したという伝説のワインです。
その味や、いかに……!?

世界遺産の地で、最高峰のリースリングに出会った ドイツ・ラインガウ

銘酒「シュタインベルガー」(右)と隣町ヴィースバーデンにある畑「ネロベルク」のリースリング


世界遺産の地で、最高峰のリースリングに出会った ドイツ・ラインガウ

修道院内部も見学可。ブドウ圧搾機が置かれたセラーなど丸ごと博物館のよう

修道僧たちがワイン造りに使っていた器具が置かれたセラーで、お待ちかねの試飲タイム。
かつてここで、日々ワイン造りに励みながら、慎ましく暮らした修道士たちがいたのだなあ……。当時に思いをはせつつ飲んだリースリングは、きりっとした酸味と豊かなアロマを併せ持ち、なんとも奥深い味わい。

なるほど、これはリースリングの最高峰に違いありません。旅の思い出も相まって、生涯忘れられない1杯となりました。

秋のドイツでしか飲めない、甘いアルコール飲料

世界遺産の地で、最高峰のリースリングに出会った ドイツ・ラインガウ

ドイツ語で「白い羽」を意味する「フェーダーヴァイサー」は発酵途中のワイン

ドイツでは、秋のブドウ収穫時期になると、「フェーダーヴァイサー」と呼ばれるアルコール飲料が出回ります。ブドウジュースがワインになる前の発酵途中で出荷されるため、期間限定のお楽しみ。濃厚な甘みは、一度飲むとやみつきになります。

来年の秋には、黄金色に染まるブドウ畑ときらめくライン川の情景をつまみに、おいしいワインを心ゆくまで堪能できますように!

■ドイツ観光局

■リューデスハイマー・シュロス

■ホテル・リンデンヴィルト

■ヤークトシュロスホテル・ニーダーヴァルト

■エーバーバッハ修道院

PROFILE

  • 「あの街の素顔」ライター陣

    こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、江澤香織、高松平藏、松田朝子、宮﨑健二、井川洋一、草深早希

  • 坪井由美子

    日本では食の仕事に従事。商品開発、メディアの監修、執筆に携わり、テレビ東京「TVチャンピオン・甘味王選手権」で優勝するなど食いしん坊ぶりを発揮する。 2003年より欧州に居住しフリーライターとして活動。「All About」やドイツ大使館「YOUNG GERMANY」、共同通信などで、食文化や旅の記事、コラムを執筆。暮らすように旅をしながら特技のおにぎり作りで異文化交流することが喜び。2020年秋にレシピ本『在欧手抜き料理帖』(まほろば社)を出版予定。

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