楽園ビーチ探訪

四日市「工場萌え」も海の楽しみ 隣町で美食と温泉も

「ビーチ」とひと口に言っても、その表情は千差万別。ヤシの木&白砂の浜のみならず、「おっ!」と心ひかれる景色は、いろいろとあります。たとえば、「工場萌(も)え」という言葉が生まれた海辺の工業地帯を探訪するのも、海の楽しみ方のひとつではないでしょうか。
(トップ写真:「四日市ドーム前」から望む第3コンビナート。運河の水面に反射する光もきれい。空気が乾燥し、水蒸気によるモヤがなくなる冬は、夜景ウォッチングに格好の季節)

連載「楽園ビーチ探訪」は、リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信するビーチライターの古関千恵子さんが訪れた、世界各地の美しいビーチや、海のある街や島を紹介いたします。

「工場萌え」とは、昼間は無機質なコンビナートが日没を境にライトアップされる光景に魅了されること。力強い無数の光、入り組んだパイプ、煙突から噴き出す水蒸気や煙、まるで未来都市のよう。2008年あたりから観光資源として注目を集め、2017年には「全国工場夜景都市協議会」も発足、12都市が加盟しています。

「聖地」の夜景は宝石箱 観賞スポットも充実

そんな工場夜景の中でも「聖地」とされているのが、三重県四日市市。

塩浜・石原地区(第1コンビナート)、午起(うまおこし)地区(第2コンビナート)、霞ヶ浦地区(第3コンビナート)の3カ所があり、観賞スポットも高層タワー、巨大な橋、堤防、ヒルサイドなど、あらゆる角度やシチュエーションから堪能することができます。「3D夜景」と呼ぶファンもいるようです。

四日市「工場萌え」も海の楽しみ 隣町で美食と温泉も

「四日市港ポートビル」のうみてらす14から望む第3コンビナート。この展望室は土日祝日21時まで営業。入場料310円(一般)

四日市市が工業地帯となったのは、昭和30年代。旧海軍燃料廠(しょう)跡地に築かれた、 石油化学コンビナートを軸に工業地帯として発展しました。かつては大気汚染や水質悪化などの環境問題が起きたこともありましたが、市民・事業者・行政の努力によって大幅に改善。今は良好な環境のもと、工場夜景が楽しめるようになりました。

四日市市で工場夜景ウォッチングをするなら、まず手に入れたいのが「四日市コンビナート夜景マップ 」。四日市観光協会が発行するこのパンフレットには11の工場夜景の名所が紹介され、それぞれのスポットのQRコードをスマートフォンで読み込めば、地図アプリで行き方が表示されます。これが、レンタカーで回るのに便利!

四日市「工場萌え」も海の楽しみ 隣町で美食と温泉も


四日市観光協会が発行する「四日市コンビナート夜景マップ」

今回訪れたのは、第3コンビナートを望む「四日市港ポートビル」と「四日市ドーム前」。どちらも駐車場が完備されています。

四日市港ポートビル14階の展望展示室「うみてらす14」は地上100メートルから工場夜景を見下ろせます。大小の煙突や貯蔵タンク、きらきらと光がまたたく一帯は、「まさに宝石箱やぁ~!」。21時まで営業している土日祝日には、カップルやファミリーも多数訪れています。

もうひとつの四日市ドームは霞ヶ浦緑地公園内。閉園時間を迎えたドームの脇道を抜けると、運河の向こうに燦然(さんぜん)と輝く第3コンビナートが現れます。運河の幅は200メートルほど、すぐ近くに夜景が感じられるロケーションです。

隣町の山麓にはアートとグルメの宿泊スポット

四日市「工場萌え」も海の楽しみ 隣町で美食と温泉も

「湯の山 素粋居(そすいきょ)」のヴィラは自然素材をテーマに各棟でデザインが異なります。プロデュースした陶芸家・造形作家の内田鋼一さんの引き出しの多いこと!

四日市市を訪れたのは、そこから車で約30分走った鈴鹿山系の麓(ふもと)、お隣の菰野(こもの)町に今年オープンしたヴィラ「湯の山 素粋居」もお目当て。陶芸家・造形作家の内田鋼一さんがプロデュースした12棟のヴィラで、それぞれ石や木、ガラス、漆、和紙、鉄、しっくいなどをテーマに、独立した世界観を展開しています。しかも、すべてのヴィラに源泉かけ流しの露天温泉付き。

湯の山 素粋居に併設しているレストランは、パリのミシュラン一つ星レストランのオーナーシェフ手島竜司さんがプロデュースする直火料理や、創業90年の老舗うなぎ卸問屋から生まれたうなぎ店、完全自家製粉の手打ちそばを広めたとされる「翁達磨(おきなだるま)」の流れをくむ店などえりすぐり。

四日市「工場萌え」も海の楽しみ 隣町で美食と温泉も

「湯の山 素粋居」内には三つの一軒家レストランが。こちらは「うなぎ四代目菊川」

湯の山 素粋居 https://sosuikyo.com/

鈴鹿の山々のふもと、食と癒やしの複合温泉施設も

四日市「工場萌え」も海の楽しみ 隣町で美食と温泉も

鈴鹿山系の麓、1万5千坪にわたって広がる、斬新なデザインの食と温泉の複合施設「アクアイグニス」

さらにヴィラから徒歩5~6分のところには、「『癒やし』と『食』をテーマにした複合温泉施設」をコンセプトに掲げる同系列の「アクアイグニス」も。

この施設がオープンしたのは2012年のこと。当時、ここ片岡温泉では温泉の熱を利用した農園のイチゴが甘くて評判に。もっと広くこのイチゴを知ってもらいたい、そして湯の山地域全体を盛り上げたい。そんな思いから片岡温泉を運営していた立花哲也さんが、世界的に活躍するパティシエ・辻口博啓さんのもとへ相談に行きました。

パティシエの辻口博啓さんの心を動かした、施設内の農園で育つイチゴ

パティシエの辻口博啓さんの心を動かした、施設内の農園で育つイチゴ

現地を訪れ、納得した辻口さんの人脈から、イタリアンの奥田政行シェフをはじめとする名だたるシェフのプロデュースするレストラン群が、四日市近郊の 山麓(さんろく)にこつぜんと登場することになったのです。美食と温泉が楽しめる、癒やしのスポットが誕生しました。

アクアイグニス https://aquaignis.jp/

アクアイグニスで有名シェフが腕を振るう一方、近くには、自然豊かな環境で作る家庭の味をテーマに、クッキングクラスも体験できる「季節ごはん教室niwacoya(ニワコヤ) 」もあります。

niwacoyaでは、地元の四季折々の食材を使った家庭料理を教えている

niwacoyaでは、地元の四季折々の食材を使った家庭料理を教えている

きらめくコンビナートの夜景だけでなく、温泉にグルメ……。三重県北部の四日市・菰野エリアでは、心満たすショートトリップが楽しめます。

【取材協力】
湯の山 素粋居 https://sosuikyo.com/
四日市観光協会 https://kanko-yokkaichi.com/

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PROFILE

古関千恵子

ビーチライター。リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信する。ダイビング雑誌の編集者を経てフリーとなり、“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”を繰り返すこと四半世紀以上。『世界のビーチ BEST100』(ダイヤモンド・ビッグ社)の企画・執筆、『奇跡のリゾート 星のや 竹富島』(河出書房新社)の共著のほか、ファッション誌(『Safari』『ELLE Japon』など)やウェブサイトに寄稿。ブログも配信中。

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