あの街の素顔

フグ養殖は陸上で 肉も魚介も味わい尽くす 壱岐の旅(下)

長崎県・壱岐の島旅。先日公開した「上」では、ダイナミックな景観や神社、壱岐神楽、麦焼酎の酒蔵などを紹介しました。しかし、見どころはまだまだありますよ。イルカと触れ合うことができるほか、きれいな貝殻などを使った工作体験も。そして壱岐では、なんと地元産の牛肉と魚介類の両方を味わうことができるのです。今回は地元グルメをたっぷり味わいながら壱岐の旅を続けます。
(文・写真、宮﨑健二)

焼きガキ、サザエ、ヒオウギガイ……貝ざんまい

壱岐の中心地、郷ノ浦町の朝の景色を見ていただきましょう。青空の下、入江にはイカ釣り船が停泊していました。

フグ養殖は陸上で 肉も魚介も味わい尽くす 壱岐の旅(下)

郷ノ浦町の風景。朝の空気はとても澄んでいました

さっそく地元グルメを紹介しましょう。島の東側、内海(うちめ)湾の近くにあるカキハウス内海湾にやってきました。食べたのは焼きガキ。ほかにサザエ、ヒオウギガイも焼きました。

フグ養殖は陸上で 肉も魚介も味わい尽くす 壱岐の旅(下)

網の上でカキ、サザエ、ヒオウギガイをどんどん焼いていきます

十分に焼いたカキの殻を開けると、中いっぱいに大きな身が。熱いので注意をしながら身を口に含むと、まずツルリとした感触が。そして、やわらかい身と汁が口中を満たしていきます。一緒に旅をした人たちと内海湾を眺めながらバーベキュー気分でわいわい食べました。ちなみに、カキはざる1杯分相当の1キロが税込み1000円。一緒に食べた人たちからは「安い!」という声が上がっていました。

締めに出てきたのが、特製の内海うどん。店のご主人によると、汁のエキスはカキ。うどんの上にはアオサが載っていました。驚いたのは、アコヤ貝(真珠貝)の貝柱が入っていたことです。

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内海うどん。アオサの上に見えているのが、アコヤ貝の貝柱です

実はご主人は内海湾で真珠の養殖を手がけています。アコヤ貝の貝柱を初めて食べましたが、適度なやわらかさで上品な味でした。麺もまたやわらかすぎず、固すぎずで、私好みの固さ。アオサとの相性も良く、おいしく食べることができました。

「巨大なサイコロ」壱州豆腐

この日の夕食も充実していました。まずアラカブ(カサゴ)のから揚げ。うまか! 身がとてもやわらかいのです。

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アラカブのから揚げ。まるで泳いでいるような格好ですね

地元で愛されている食品が出てきましたよ。壱州豆腐です。

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壱州豆腐。力を入れないと切れません

でかい! びっくりです。一辺約10センチの立方体で、大きなサイコロみたいです。地元の人から、特徴は固いことだと聞きました。しょうゆをつけて食べてみると、たしかに木綿豆腐や沖縄の島豆腐よりも歯ごたえがありました。
壱岐の地元グルメがイキつく間もなく出てきます。次は、ひきとおし。もともとは農村集落のおもてなし用の鍋料理だそうです。

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ひきとおし。野菜がたっぷり入っています

鶏肉に白菜、長ネギ……。おっと、ここにも壱州豆腐が。いやはや、おなかがいっぱいになりました。満足、満足。

壱岐イルカパーク&リゾートでふれあい体験

翌日は、島の北部、勝本町にある壱岐イルカパーク&リゾートに行きました。

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壱岐イルカパーク&リゾート。入場料は大人が税込み500円。壱岐の人は、なんと無料です

この施設は入江を利用してつくられた海浜公園です。ストレスを与えないように、なるべくイルカの自由にさせているそうです。

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イルカが見えました。この施設は海とつながっています

さあ、お待ちかね。イルカたちの登場です。2頭が近づいて来ました。人が来ると、遊んでほしいので寄って来るのだそうです。

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イルカたちは愛くるしい姿を見せてくれました

水面から出ている頭をなでてみました。かわいいです。しかし、イルカはやがて離れていってしまいました。再び呼ぼうとしても、今度は一定の距離を保ちながらこちらをうかがっています。まるでソーシャルディスタンスを知ってイルカのようです。

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こちらをうかがうイルカたち

でも、エサを見せると、また近づいてきました。

イルカを見つめながら、私は1980年にこの勝本町で起きたイルカをめぐる事件を思い出しました。当時、近海の魚を食べてしまうイルカの食害に困った漁師たちがイルカを網に追い込んで捕獲し、処分していました。これを知った米国の動物愛護団体などが「残酷だ」と反発。メンバーの米国人が壱岐を訪れ、捕獲したイルカを囲っている網を切って逃がしてしまったのです。実は、今回の壱岐の旅の「上」で紹介した辰ノ島がその現場でした。この事件は国際的に大きな反響を呼びました。生活を脅かされた漁民によるイルカ退治と、動物愛護の考え方とが真正面からぶつかりあったのです。

あれから40年。壱岐ではイルカをとらえることはなくなりました。そして、飼育されたイルカが人々を楽しませています。

壱岐イルカパーク&リゾートを運営する「IKI PARK MANAGEMENT」の代表取締役、高田佳岳さんによると、園内のどこにいてもイルカを感じられる場所、というのがコンセプトだそうです。ふれあいプログラムもあります。たとえば、「イルカにごはん」「タッチタッチドルフィン」はそれぞれ税込み1000円で体験できます。

築140年以上の古民家カフェで壱岐牛バーガー

イルカたちに別れを告げて、同じ勝本町にある「MOCHAJAVA CAFE(モカジャバカフェ)大久保本店」にやって来ました。築140年以上という2階建て木造住宅を改装したカフェです。もともとは海産物問屋として建てられたとのことで、「大久保本店」の名称は、その屋号なのだそうです。

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風情のある外観のモカジャバカフェ。とてもカフェに見えませんね

ここで食べたのは、壱岐牛バーガー。

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壱岐牛バーガー。単品は税込み950円、ポテト付きは同1050円です

地元産の壱岐牛の肉がパティに100%使われています。食べてみると、レタス、キャベツ、タマネギのシャキシャキとした食感が主役の肉のおいしさを引き立てています。昨年食べた、長崎県の佐世保バーガーと対馬バーガーもおいしかったのですが、壱岐牛バーガーは味のバランスがとてもよくて感心しました。

ところで、壱岐牛は壱岐で生まれ育った黒毛和牛のことです。エサや肉質などの基準を満たした牛だけが認定されています。壱岐で生まれた子牛は肉質がよいため、他地域の肥育農家に買われて育てられ、その土地のブランド牛として出荷されていることが少なくないということです。

食通の方は「うまい。さすがは○○牛だね」と舌鼓を打つ前に、壱岐のことを思い出してくださいね。そのブランド牛の肉が、実は壱岐生まれの牛だった……という可能性もありますから。

ステーキでも壱岐牛を味わう

壱岐牛として出荷されるのは年間1000頭ほどだそうで、食べることのできる機会は限られます。そこで、壱岐牛をもっと味わうために、芦辺港のすぐ近くにある「味処うめしま」に行きました。肥育牧場直営の店です。注文したのは、オリジナルステーキ。

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オリジナルステーキ。ご飯、サラダ、スープ、コーヒー付きで税込み2200円です

肉はとてもやわらかく、おいしさは格別です。店のご主人によると、壱岐は米作りが盛んなのでエサの稲わらが豊富なこと、海からの潮風で運ばれた塩分が牧草に含まれていることなどが、上質な肉につながっているとのことです。

季節によっては手摘みも 壱岐オリーブ園

おなかが十分膨れたところで、観光施設をもう一つ、ご紹介しましょう。郷ノ浦町にある壱岐オリーブ園です。

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壱岐オリーブ園。入園料は税込み200円です

園内には約1600本のオリーブの木が植えられています。散策するとオリーブが黒い実をつけていました。

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オリーブの実。大きさ1~2センチほどの黒い粒です

残念ながら手摘み体験の期間は終わってしまいましたが、園内には庭園もあり、海を眺めながらゆったりと過ごすことができます。壱岐でひとイキ。

養殖トラフグは陸上で

さて、最後の地元グルメです。壱岐ではトラフグの養殖がおこなわれています。地元の企業「なかはら」が郷ノ浦町につくった養殖場を見学させていただきました。ユニークなのは、地下水と地下海水をくみ上げて海水の3分の1ほどの低塩分濃度で育てていること。トラフグのストレスが少なくなり、成長が早く、身も上質になるそうです。壱岐でイキのいいトラフグが育つわけですね。

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トラフグの養殖場は海ではなく陸上の建物の中にあります。すごい数です

養殖場の見学を終えた後、この養殖のトラフグを使った料理を味わうことのできる石田町の民宿宝来荘に足を運びました。1人あたり税別4000円ほどの会席料理の夕食です。フグ刺しが出てきましたよ。

フグ養殖は陸上で 肉も魚介も味わい尽くす 壱岐の旅(下)

きれいに盛りつけられたフグ刺し。見るだけでおいしさが伝わってきますね

そして、てっちりも。

フグ養殖は陸上で 肉も魚介も味わい尽くす 壱岐の旅(下)

てっちり。フグは鍋でもおいしいですね

フグざんまいですっかり満腹に。これまで食べてきたものも含めて、壱岐の地元グルメはとても多彩だなとあらためて思いました。

悪戦苦闘 シーキャンドル作り

旅の最後に、石田町の工房如月でシーキャンドル作りに挑戦しました。これ、女性に人気だそうですよ。

あらかじめ砂が入れられたグラスに小さな貝やタイルをピンセットで入れていきます。インストラクターの女性からは「感性とセンスでがんばってください」と激励されました。でも、どちらも欠けている私はうまくいきません。壱岐でイキ消沈。

フグ養殖は陸上で 肉も魚介も味わい尽くす 壱岐の旅(下)

細かい作業が続くシーキャンドル作り。私は苦戦しました

インストラクターの方々に手伝ってもらい、最後にジェルを注いで固めてどうにか完成。海をバックに撮影しました。なかなかのもんでしょ。壱岐でイキ軒昂(けんこう)。

フグ養殖は陸上で 肉も魚介も味わい尽くす 壱岐の旅(下)

シーキャンドル作り体験は税込み1720円(小サイズ)。申し込みの窓口は壱岐市観光連盟です

2回に分けて紹介してきた壱岐、いかがでしたか。私は郷ノ浦港から帰りの船に乗りました。ついにお別れの時です。船の窓から遠ざかる壱岐が見えました。滞在中の楽しかった出来事を振り返りながら、私は思ったのです。「壱岐はやはりイキな島。またイキたいな」と。

【問い合わせ先】

カキハウス内海湾
https://iki-kaki.wixsite.com/kaki

壱岐イルカパーク&リゾート
https://ikiparks.com

モカジャバカフェ大久保本店
https://www.facebook.com/mochajavacafe.iki/

味処うめしま
http://umeshima.com/

壱岐オリーブ園
https://ikiolive.jp

民宿宝来荘
http://hourai-sou.com/

壱岐市観光連盟
https://www.ikikankou.com

PROFILE

  • 「あの街の素顔」ライター陣

    こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、江澤香織、高松平藏、松田朝子、宮﨑健二、井川洋一、草深早希

  • 宮﨑健二

    旅ライター。1958年、福岡市生まれ。朝日新聞社入社後、主に学芸部、文化部で記者として働き、2016年に退社。その後はアウェイでのサッカー観戦と温泉の旅に明け暮れる。

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