世界遺産の宮殿で生活する人々 クロアチアの旅(5) スプリット
文: 相原恭子(文・写真)

ツアーの行き先としてはメジャーでないけれど足を運べばとりこになる街を、ヨーロッパを知り尽くした作家・写真家の相原恭子さんが訪ねる「魅せられて 必見のヨーロッパ」。2018年秋に訪れたクロアチアの旅、今回は南部のスプリット。世界遺産の宮殿の中に街の人々が暮らしている、趣のある街です。
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住居もオフィスも宮殿の中
前回紹介したシベニクから南へ、約1時間余りのドライブでスプリットに到着。人口約18万人。首都ザグレブに次ぐ第2の都市です。「スプリットの史跡群とディオクレティアヌス宮殿」として、世界遺産に登録されています。この町の旧市街は、ディオクレティアヌス宮殿そのものといった趣で、そこで人々の生活が営まれています。住居はもちろん、オフィスや商店なども宮殿の中にあります。地下空間も迫力があって、見ごたえ十分です。

スプリットに到着
まだ日差しが強いとはいえ10月末なので日没が早く、午後6時過ぎに到着するともうかなり暗くなっています。

旧市街を歩く
早速、宮殿(旧市街)を散策してみましょう。スプリットを訪ねるのはこれが3度目ですが、夜の散歩は神秘的な雰囲気を感じて好きです。

地元の人はもちろん、ヨーロッパ各国、アジアからも観光客が訪れます
引退したローマ皇帝ディオクレティアヌスの住まい
ここスプリットに近いサロナ(現在のソリン)に生まれたローマ帝国のディオクレティアヌス帝(在位284~305)は、退位して故郷へもどり、老後を過ごす宮殿を建設しました。それが、このディオクレティアヌス宮殿です。自ら退位して隠居したローマ皇帝は珍しいようです。

ロマンチックな霧雨の中を散策するカップルも

子供連れで散歩する人も
路地には洗濯物が干してあり、生活感があります。

まさに遺跡を実感する住居
現代人の日常が、1700年も前に建設が始まった宮殿に息吹を与えています。建物が時を越えて利用されていることが、究極のエコロジーにも思えてきました。

修復した部分とオリジナルの部分の対比が、不思議な空間を作っています

宮殿の地下
宮殿の地下へ入ってみると、その広大さに圧倒されます。ディオクレティアヌス帝が建設を始めた当時の広さは3万平方メートルと言われています。
異民族に追われた人々が宮殿に逃げ込み都市化

迷路のようで、別世界に迷い込んだ気持ちになります
サロナの人々は、7世紀初頭にアヴァール人とスラブ人の攻撃を受けました。逃げ場を失った彼らは、堅牢なこの宮殿の中へ逃げ込み、住居を作りました。その頃の遺構も残っています。

いかにも文化財といった雰囲気です
保存のために「立ち入り禁止」とせず、時を越えて人々と共存しています。まさに「生きている歴史」ですね。

たくさんの部屋があります
立て札の説明によると、この古い木は、1950年代に発掘されたディオクレティアヌス時代のものとされる木製の梁(はり)です。

ディオクレティアヌス帝の胸像も展示されています
地上部分は修復や増築、部分的に壊されるなどされてきましたが、地下は建設当時の姿が比較的残っています。

外から眺めるディオクレティアヌス宮殿
プロムナードを歩く人たちの群れに加わって、私も海面に明かりが揺らぐ港を眺めました。タイムトンネルから出てきたような気持ちです。
一夜明け、街の美しさを堪能

朝のディオクレティアヌス宮殿
出発の朝です。

美しいスプリットの町の眺望
スプリットの港からヴィス島へ向かうフェリーに乗り、スプリットの町を眺めました。山々が海に迫るユニークな風景。その美しさに見とれました。
次回はヴィス島の港町コミジャを歩き、お料理とお菓子も楽しみます。
■クロアチア・ハートフルセンター
https://croatia.heteml.jp/chc/
■Croatian National Tourist Board
https://croatia.hr/en-GB