永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(91) 人間の可能性と歴史に脱帽 永瀬正敏が撮ったトルコ

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。今回は、圧倒的な存在感がある古代遺跡を写した一枚。この場所で永瀬さんの心によぎった思いとは?

(91) 人間の可能性と歴史に脱帽 永瀬正敏が撮ったトルコ

©Masatoshi Nagase

歴史の刻まれた建造物が世界中に残っている。

ここはトルコのアスペンドス遺跡。
僕が古代遺跡を訪れるのは初めてだった。

まず、スケールの大きさに圧倒された。
これを、重機のない時代に人々の手と足と知恵だけを使って造ったのかと思うと、驚くばかりだ。
切り出された大きな岩を、当時の人々がこの場所まで運び込み、
緻密(ちみつ)な計算のもとさまざまな形に合わせ研磨し、
一つ一つ積み上げ、このすり鉢状の巨大な建物が完成した。
それが何世紀にもわたってここにあり、今も残っている。

この場所へ来て、人間の持ちうる可能性のすごさと歴史の偉大さを痛感した。

全体像を捉えたくて整備されていない道をしばらく歩いた。
カメラを抱え息を切らせながら、たまに休憩して。
途中、遠くにはまた別の小さな遺跡が点在しているのが見えた。
その姿もカメラに収めながら、ようやくたどり着いた高台から見下ろす光景もまた圧巻だった。

おそらく古代の人々も同じようにその道を登ったのだろう。
そして自分たちの成し遂げた偉業を目にし、祝ったに違いない。

日本にも歴史や伝統を感じる建物が多々ある。
その職人さんたちの匠(たくみ)の技は今見ても本当に素晴らしい。
歴史ある技から未来へつながる新しい技も今後ますます生まれてきてほしい。

受け継がれるもの、それを守ろうとする力。
そしてそれを未来へ紡ぐ新風。
新しい年を迎え、改めてそのことを考えてみる。

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PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作にオダギリジョー監督「ある船頭の話」、周防正行監督「カツベン!」、甲斐さやか監督「赤い雪」 、大森立嗣監督「星の子」など。 写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2021年1月16日から3月21日まで、愛知県の「高浜市やきものの里かわら美術館」で写真展が開催される。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

世界中に歴史が刻まれた建造物が残っている。

ここはトルコのアスペンドス遺跡。
僕は古代遺跡を訪れるのは初めてだった。

まず、スケールの大きさに圧倒された。
これを重機のない時代に人々の手と足と、知恵だけを使って造られたのかと思うと驚くばかりだ。
切り出された大きな岩を、当時の人々がこの場所まで運び込み、緻密な計算のもと様々な形に合わせ研磨し、一つ一つ積み上げ、このすり鉢状の巨大な建物が完成した。それが何世紀にも渡り、今も残っている。

この場所へ来て、人間の持ちうる可能性の凄さと歴史の偉大さを痛感した。

全体像を捉えたくて整備されていない獣道をしばらく歩いた。
カメラを抱え息切れしながら、またに休憩を入れて。
途中、視界の遠くにはまた別の小さな遺跡が点在していた。
その姿もカメラに収めながらようやくたどり着いた高台から見下ろす光景もまた圧巻だった。

おそらく古代の人々も同じようにその道を登られたのだろう。
そして自分たちの成し遂げた偉業をその目にし、祝ったに違いない。

日本にも歴史や伝統を感じる建物が多々ある。
その職人さんたちの匠の技は今見ても本当に素晴らしい。
歴史ある技から未来へ繋がる新しい技も今後ますます生まれてきてほしい。

受け継がれるもの、それを守ろうとする力。
そしてそれを未来へ紡ぐ新風。
新しい年を迎え、改めてその事を考えてみる。

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