京都ゆるり休日さんぽ

底冷えの体にしみる ふわもち食感手打ちうどん「饂飩店よこやま」

底冷えのする京都の冬は、あたたかい湯気が立ち上る料理がひときわおいしく感じられます。今回訪ねたのは、京都御所にほど近い路地にたたずむ「饂飩(うどん)店よこやま」。両手をこすり合わせながらのれんをくぐる人々のお目当ては、自家製手打ち麺と体に沁(し)み入るだしが至福の一杯です。(*2020年12月取材)

■暮らすように、小さな旅にでかけるように、自然体の京都を楽しむ。連載「京都ゆるり休日さんぽ」はそんな気持ちで、毎週金曜日に京都の素敵なスポットをご案内しています。
(文:大橋知沙/写真:津久井珠美)

「ふんわり」も伸びがよい「もちもち感」も追求

カウンターには、釜揚げうどん用の桶やどんぶりが並ぶ。ビールや自家製梅酒などは金曜日のみの夜営業で提供

カウンターには、釜揚げうどん用の桶やどんぶりが並ぶ。ビールや自家製梅酒などは金曜日のみの夜営業で提供

ふんわり柔らかな麺が、「やわやわ」と評されることも多い京うどん。一方、コシが強く食べ応えのある讃岐うどんの人気は、京都でも健在です。「饂飩店よこやま」のうどんは、そのどちらでもない、ふわりとした歯触りともちもちと程よいコシが記憶に残る一杯。ひと口目には柔らかい印象を受ける麺ですが、かむともっちりとして伸びがよく、また無性に食べたくなる独特の食感です。

九条ネギと油揚げの入った「刻みきつねうどん」(850円・税込み)。+100円であんかけにもできる

九条ネギと油揚げの入った「刻みきつねうどん」(850円・税込み)。+100円であんかけにもできる

うどん好きが高じて、洋食の料理人から一転、香川の製麺所で修業を積んだ店主の横山功司さん。一昨年の夏、妻の史子さんと御所東にこの店を構えると、うどん好きの間で瞬く間に評判が広まり、すっかり人気店になりました。

「自分では、京風とか讃岐風とか特に意識してはいないんです。好きな食感を追求していった結果、今のうどんになりました。京都のかたでもコシのあるうどんの方が好きって人もいるし、コシが強すぎるのは食べにくいという人に『ちょうどいいコシで伸びがいい』と喜んでもらえたり……。お客さんがそれぞれに解釈してくれています」

手打ち・手切りの麺は表面にだしがよく絡み、ふわりとした歯触りと程よいコシがクセになる

手打ち・手切りの麺は表面にだしがよく絡み、ふわりとした歯触りと程よいコシがクセになる

香川の製麺所から取り寄せた小麦粉や、ミネラル豊富な天日塩を独自に配合して生地を練り、何百回と踏むことから横山さんの一日は始まります。生地は一晩寝かせ、ていねいに手切りして、注文が入ってからゆで上げる。効率を重視する飲食店では省かれがちな工程を、時間と手間をかけて行うからこそ、独特の食感と風味に仕上がるのです。

普通の毎日に必要な、普通のうどん屋でありたい

「天ぷら釜あげうどん」(1300円・税込み)。天ぷらはエビ、季節の野菜数種が付く

「天ぷら釜揚げうどん」(1300円・税込み)。天ぷらはエビ、季節の野菜数種が付く

ゆでたての釜揚げうどんと天ぷらのセットは、「よこやま」の定番。最新の揚げ調理器で、通常よりも油を50%カットして揚げた天ぷらはサクッと軽く、うどんのもちもち感との対比を楽しめます。やや甘めのつゆは、横山さんの故郷・福岡のなじみの味。利尻昆布や厳選した削り節でていねいに引いただしと無添加の調味料を合わせ、かけうどん、つけつゆ、あんかけなどうどんの種類に合わせた風味に仕立てています。

和モダンな空間は、和紙の間仕切りや小さな花のしつらえなどが心地よい

和モダンな空間は、和紙の間仕切りや小さな花のしつらえなどが心地よい

「特別なことはない、普通のうどん屋です。うどんってそういう、日常のものでしょう? 写真映えや創作メニューなど目新しさはなくても、自分好みの普通のうどん屋が近くにあったら、行きたいなと思うから」

そう話す横山さん。人々の「普通の毎日」に寄り添い、手作り・できたてに真摯(しんし)に向き合う姿勢は、自然と食べる側にも伝わっているかのよう。年配の客から子ども連れまで、地元客から観光客まで、どんぶりの最後の一滴まで飲み干して帰り際には「ごちそうさま」と笑顔になります。

元は仕出屋だったという店を改装。シンプルでクリーンな雰囲気も入りやすい

元は仕出屋だったという店を改装。シンプルでクリーンな雰囲気も入りやすい

何度食べても飽きがこず、思い浮かべると恋しくなる。もちもちのうどんと優しいだしの香りは、まさにそういうもの。日常になくてはならないのは、もしかするとハレの日のごちそうよりも、そうした普通の食堂なのかもしれません。食べ終えたあと、おなかだけでなく心もじんわりあたたまる。そんな、普通だけれども「ないと困る」うどん屋ののれんを、ぜひくぐってみてください。

饂飩店よこやま
https://www.instagram.com/yokoyama_udon_kyoto_demachi/?hl=ja

■「京都ゆるり休日さんぽ」のバックナンバーはこちら

BOOK

底冷えの体にしみる ふわもち食感手打ちうどん「饂飩店よこやま」

京都のいいとこ。

大橋知沙さんの著書「京都のいいとこ。」(朝日新聞出版)が2019年6月7日に出版されました。&TRAVELの人気連載「京都ゆるり休日さんぽ」で2016年11月~2019年4月まで掲載した記事の中から厳選、加筆修正、新たに取材した京都のスポット90軒を紹介しています。エリア別に記事を再編して、わかりやすい地図も付いています。この本が京都への旅の一助になれば幸いです。税別1200円。


PROFILE

大橋知沙

編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブックやWEB、ライフスタイル誌などを中心に取材・執筆を手がける。本WEBの連載「京都ゆるり休日さんぽ」をまとめた著書に『京都のいいとこ。』(朝日新聞出版)。編集・執筆に参加した本に『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

名もなき物の小さな声に耳をすませ 週一度だけ開く店「古い道具」

一覧へ戻る

読んで楽しむ 春の花見歩きを夢見て……「二条城」周辺エリア

RECOMMENDおすすめの記事