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食や宿、とっておきの体験明かす! 下川裕治×三井昌志トークイベント「旅をするために生まれてきたの?」(前編)

&TRAVELで連載を手がける旅行作家の下川裕治さんと写真家の三井昌志さんが旅を語り合うオンライントークイベント「旅をするために生まれてきたの?」が、1月8日に開かれました。コロナ禍で旅がままならない中、旅の魅力を再発見したいと開催されたこの企画。個性的な旅を長く続けてきたお2人にしか語れない貴重な体験談が次々に飛び出します。東京都内のスタジオからライブ配信した当日の様子を、2回に分けてご紹介します。(文:&TRAVEL編集部・福宮智代)

(トップ画像:左から辻川舞子&編集長、下川裕治さん、三井昌志さん)

なぜ旅を仕事に?

連載「クリックディープ旅」の筆者である下川さんと「美しきインドの日常」を連載された三井さんの対談は、辻川舞子・&編集長の司会で進みました。旅を表現する仕事をされているお2人には、以前は別の仕事をされていた、という共通点があります。旅を表現するようになった経緯から、話は始まりました。

下川さんは新聞記者を経て、フリーランスのライターに。別のテーマでライターをしながら、2~3カ月海外に旅に出る、という生活をしていました。旅の記事を書くようになったのは、「12万円渡すから、どこまで行って帰ってこられるかやってみないか」と編集者から提案されたことでした。「旅に行っている間は12万円で過ごせるから楽かなと思ったら、大きな間違いだった」と振り返ります。

食や宿、とっておきの体験明かす! 下川裕治×三井昌志トークイベント「旅をするために生まれてきたの?」(前編)

パキスタンのギルギット(撮影:中田浩資)

「1人で旅してたときは僕、牧童もしまして」と、下川さんは、パキスタン・ギルギットの写真を紹介しました。40年ほど前に訪れた際、山を見にいって羊飼いの子どもと一緒に帰ってくると、翌朝泊まっていたコテージに、羊が押し寄せてきたそう。「一緒にいくのでしょう?という顔で子どもに誘われて、何の疑問もなく一緒に山へ行っていた」と当時のエピソードを話しました。

三井さんはメーカーでエンジニアとして2年間働いたあと退職して、2001年に10カ月間世界を旅し、その後写真家の道へ。2005、2006年ごろからバイクで取材するようになったといいます。「貧しいけれど、美しい」と感じる働く人たちの姿を追ってインドを回っています。最近は、ハレの日ではない労働の現場で、カラフルな民族衣装で働く女性をよく撮っています。「伝統を大事にするというか、こういうところが今でもあるのがインドの奥深さ」と語りました。

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インド北西ラジャスタン州、ガラシア族の女性たち(撮影:三井昌志)

旅を表現する仕事とは

旅に向き合うときはどんな心持ちなのでしょうか。

「不安」と、下川さんが切り出します。「たとえばインドのコルカタで『リキシャ』(人力車)に乗る。ちゃんと行ってくれるか、だまされないか、と不安でドキドキしながら見ていた風景は、ものすごく印象に残る。不安の中に入らないと言葉が生まれてこない、というか。僕はどこに行っても不安。成田空港出たときから不安なんですよ」

食や宿、とっておきの体験明かす! 下川裕治×三井昌志トークイベント「旅をするために生まれてきたの?」(前編)

一方で三井さんは「インド人はフレンドリーだし、写真も撮りやすい。旅行者が大勢いる都市では危険もあるけれど、バイクを使わないと行けないような場所だとかえって怖くないし、来て良かったなと思う。旅のモチベーション、原動力は写真ですね」

2人とも事前の準備はあまりしないといいます。

下川さんは、宿がとれなかった経験はこれまでに2回だけだそう。「その国に身を投げ出すので、ホテルもあまり予約しない。その日どこまで行くかわからないし。アジアは、宿はなんとかなる。決めたらそこまで行かないといけないし」

三井さんも「最初の宿はとっても、そのあとディープな場所に入っていくときは予定を立てない。縛られたくないから」と言います。「右の道と左の道があったら、『今日は左へ行こうか』という気持ちでいたい。そういう自由さが旅だから。今の世界でここまで自由になれる瞬間は、旅くらいかなと思う」

紅茶とコーヒー混ぜたお味は?

次いでお2人が、食事、宿、ハプニングといった「忘れられないできごと」を披露。

まずは下川さんが、香港で飲んだ「ユンヨンチャ」を挙げます。「紅茶コーヒー」のような飲み物で、日本でいうファミレスのような「チャチャンテーン」などにもあるメニューで、香港の人はよく飲んでいるそう。

食や宿、とっておきの体験明かす! 下川裕治×三井昌志トークイベント「旅をするために生まれてきたの?」(前編)

香港の茶餐廳(チャチャンテーン)(撮影:阿部稔哉)

作り方は様々あり、どうすれば同じ味を再現できるかと、帰国後に試行錯誤した結果、紅茶にインスタントコーヒーを混ぜると近い味になると感じたそう。スタジオで3人がさっそく、濃い目の紅茶に、それぞれスプーン1杯分くらいのインスタントコーヒーを溶かして、一口。

食や宿、とっておきの体験明かす! 下川裕治×三井昌志トークイベント「旅をするために生まれてきたの?」(前編)

カップに入れた紅茶にインスタントコーヒーを溶かす

「(味の)入り口が紅茶で出口がコーヒーですね」と三井さん。辻川編集長は複雑な表情で「紅茶の渋みとコーヒーの苦みが一緒にやってくる」。

食や宿、とっておきの体験明かす! 下川裕治×三井昌志トークイベント「旅をするために生まれてきたの?」(前編)

下川さんが「香港の人が愛した自由って、こういうことだと思う」と吐露します。「メニューの中で、西洋と中国をどんどん混ぜてしまう。底なしの食の自由みたいなものがある」。三井さんも同じ文脈で、ベトナムで飲んだ、アイスコーヒーと緑茶を混ぜた飲み物について語りました。

食や宿、とっておきの体験明かす! 下川裕治×三井昌志トークイベント「旅をするために生まれてきたの?」(前編)

続いて三井さんは、インド北西部ラジャスタン州で食べた全粒粉を使った郷土料理「バティ」を紹介。おいしくなかったそうですが、当地で燃料として使われている牛ふんの上に直接バティを置いて焼く様子を目にしてさらに衝撃を受けたとのこと。「牛ふん食べたんや……、と数日食欲不振に陥りました」

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牛ふん燃料で焼かれるバティ(撮影:三井昌志)

三井さんのおすすめは「タンドリーロティ」。小麦粉を発酵させた生地をタンドリー窯で焼いた香ばしい主食で、ナンより安くて、多くの店で出されているとか。店頭の窯を目印に出す店を探すそうです。

海外の宿での天敵はあの虫!

食や宿、とっておきの体験明かす! 下川裕治×三井昌志トークイベント「旅をするために生まれてきたの?」(前編)

ホテルへの階段(撮影:三井昌志)

次は忘れられない宿。三井さんが、ビルの階段を撮影した写真を示します。インドでは雑居ビルの一部がホテルということも多く、ビルの階段が汚くて戦々恐々として部屋に入ったら……。

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ホテルの部屋(撮影:三井昌志)

「床も掃除されていてきれいだった。自分の領域だけはきっちり掃除するのがインドらしいと思いました」(三井さん)

2人が「嫌なもの」として意気投合したのが南京虫(トコジラミ)。刺されるとかゆみや発赤がでます。

「僕、ノミは許す。いっぱい血を吸ってどこかに行ってしまうから。南京虫はチョ、チョ、チョ、と刺す。嫌なんですよ、あの刺し方」(下川さん)

「猛烈にかゆい。最初はかゆみが1週間とか続いてたけど、いまは数時間で消えます。ひどい人は2週間くらい続くそうです」(三井さん)

虫の気配を感じたらベッドを使わず床に寝ることもあるとか。寝る間も息が抜けない過酷な旅に共感を深める下川さんと三井さんでした。

旅先でのハプニングや、コロナ禍での旅への思いなど、まだまだ続くお話は後編で。

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