中も外も目を見張る世界遺産の住宅 ガウディ建築巡り#2
文: 山田静

そろそろ遠くに旅したい!とうずうずしている人も多いのでは。旅行ライターの山田静さんがちょっぴり冒険できる旅を紹介するシリーズ、2019年3月に訪れたバルセロナでのアントニオ・ガウディの建築巡りを紹介しています。2回目は、サグラダ・ファミリアとセットで訪れたい、市内のガウディ名建築。
(トップ写真はグエル邸の屋上)
※新型コロナウイルス感染防止のため、現在サグラダ・ファミリア聖堂をはじめバルセロナの主要な見どころは閉鎖されています。
世界遺産建築を巡るルート
バルセロナはさほど大きな街ではない。カテドラル(サンタ・エウラリア大聖堂)をはじめ歴史的建造物が集まる「旧市街地区」、サグラダ・ファミリア聖堂など、モデルニスモ建築が集まる「アシャンプラ地区」は、それぞれ半日もあれば徒歩で回れる。各スポットでの観光時間も入れて、各エリアで1日ずつ見ておけば、急ぎ足にはなるがだいたい大丈夫だ。
今回の記事は、ガウディ建築ざんまいがテーマ。なので、ガウディに的を絞ったときに効率がいい歩き方を考えていこう。
同じエリアにある見どころ、特に世界遺産に登録されている建築を回るなら、たとえばこんな感じだ。
・1日目 サグラダ・ファミリア聖堂
・2日目 アシャンプラ地区とグエル邸(カサ・ミラ、カサ・バトリョなど)
・3日目 グエル公園とカサ・ビセンス
・4日目 コロニア・グエル教会
時間がない場合、急ぎ足にはなるが、1日目と2日目は同じ日にしてもいい。
街の中心・カタルーニャ広場からサグラダ・ファミリア聖堂まで徒歩30分。サグラダ・ファミリア聖堂からカサ・ミラなどがあるグラシア通りまで徒歩20分。地下鉄も通っているが、建物があるアシャンプラ地区は19世紀に都市計画に基づいて開発された場所。モデルニスモ建築の宝庫なので、徒歩で周囲を眺めながら歩くのも楽しい。
上記の日程2日目に入れたグエル邸は旧市街に位置しているので、2エリアの街並みの違いを比較しながら歩くのもおすすめだ。
どのような回り方をするにしても、バルセロナはガウディ以外にも見どころの多い街。地図を見ながら事前にルートを決めて、ガウディ建築についてはネットで事前入場予約をしておくのがいい。チケットを買う列に並ばなくてもいいし、ほとんどの場所で少し値段が得になる。
外せない三つのスポット
ここからは上記2日目に設定した、アシャンプラ地区のカサ・バトリョとカサ・ミラ、そしてグエル邸を写真でご紹介していこう。どれも世界遺産だ。
まずは「カサ・バトリョ」。繊維業で財を成した富豪・バトリョ家の依頼で、1904年から2年間かけて改築された地上6階、地下1階の住宅だ。外観は海、内観は海の中を表現していると言われる。訪れたとき(2019年3月)はちょうど工事中で外観の撮影ができなかったが、隣には同時代に建てられたモデルニスモ建築のカサ・アマトリエール、カサ・リェオ・イ・モレラもあり、ガウディ作品との違いも観察できる。
カサ・バトリョではぜひ、日本語オーディオガイドを借りよう。スマホと連動式になっており、館内に置かれた番号のところで立ち止まると、解説だけでなくアニメーションや当時の写真などが次々現れて楽しい。

内部にふんだんに使われた青いタイルは、差し込む日光を受けて海の泡のように光る

この日は中央広間も工事中で、壁の補強作業が行われていた。ちなみにこの広間で式を挙げるウェディングプランもあって、日本人にも人気だという

暖炉の部屋。キノコ型の暖炉がかわいい

後から設置されたエレベーターの扉には、波打つようなガラスが使われている。すべてが海中世界のイメージ

屋上に出ると、奇抜な形をした煙突や造形に囲まれる。不思議な形をした煙突は、ガウディ建築のひとつの特徴だ

当時の富裕層のサロンを再現した部屋もある。東洋趣味も感じさせる

階段。波や水をイメージさせる造形で、だんだんと海の底に向かっているような錯覚を起こさせる。壁のタイルは横から見ると平らではなく、このカーブが光の反射を生むことがわかる
次は「カサ・ミラ」。「カサ・バトリョ」から歩いて10分ほどの場所で、バルセロナの名家、ミラ家のために1910年まで数年かけて建てられた住宅。カサ・バトリョの「海」に対して、「山」を表現したとも言われるが定かではない。直線がまったくない、波打つような外観は奇妙だが美しい。居住者がいるが、内部には博物館があり見学可。残念なことに訪れた日は行事のため非公開で、外観のみの撮影となった。

石灰岩を積み上げたような外観から「石切り場」(ラ・ペドレラ)とも呼ばれる

ガウディはタイルや鉄など、廃材をよく利用した。建物の外にあるテラスの装飾も、くず鉄から作られているそう。よく見ると植物や動物などが表現されている部分も
最後は「グエル邸」。ガウディ最大の理解者でスポンサーだった実業家、エウセビ・グエルの邸宅として1886年から4年かけて建てられた、ガウディ初期の傑作だ。アシャンプラ地区の南、旧市街の目抜き通りであるランブラス通りから少し入ったところにある。細部にわたって凝った造作で、後年のガウディ作品のエッセンスが詰まっていると言われている。

華麗な中央サロン。吹き抜けで、イベントもできるパブリックスペースとしても使えるよう考えられていた

中央サロンの真上に広がる天井ドーム。無数の六角形の板を組み合わせて作られていて、ところどころに窓が開き光が差し込むようになっている。まるで星空のよう

館内でもひときわ装飾が凝っている応接サロン

応接サロンの天井。鍾乳石のような飾りが無数に下がり、光にきらめいている

屋上。ここにもさまざまなタイルで彩られた煙突が立ち並ぶ

屋上からはふつうの旧市街の家並みも見えて楽しい

ステンドグラス、照明、燭(しょく)台など全てが見どころ


メインフロアへ上がる階段。重厚な内装だが、自然光がたっぷり入るように設計されている

建物正面に掲げられたオブジェ。カタルーニャの旗がデザインされたこのオブジェの奥に守衛室があり、のぞき窓にもなっている
以上、三つの見どころをご紹介した。次回は3日目の見どころ、グエル公園とカサ・ビセンスを歩いてみよう。
※新型コロナウイルス感染防止のため、現在サグラダ・ファミリア聖堂をはじめバルセロナの主要な見どころは閉鎖されています。
■カサ・バトリョ
https://www.casabatllo.es/en/
■カサ・ミラ
https://www.lapedrera.com/en
■グエル邸
https://www.palauguell.cat
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