にっぽんの逸品を訪ねて

サクラエビとプラモデル 静岡が誇る“全国ナンバーワン”(後編)

“静岡のナンバーワン”を訪ねる旅、3回目のテーマは「サクラエビ」と「プラモデル」。どちらも圧倒的なシェアを誇る静岡市自慢の名産品です。静岡市清水区由比(ゆい)と、約300点のプラモデルを展示する駿河区の「静岡ホビースクエア」を訪れました。(取材は昨年12月までのものです)

“駿河湾の宝石”といわれるサクラエビ 水揚げされるのは静岡県だけ

透き通るような美しい紅色をした「サクラエビ」は、駿河湾の特産品です。日本では本格的な漁が行われるのは駿河湾だけで、漁獲されたサクラエビは、静岡県内の二つの漁港、由比漁港(静岡市)と大井川港(焼津市)に水揚げされます。

サクラエビ(画像提供:静岡市)

光り輝くようなサクラエビ(画像提供:静岡市)

「サクラエビ漁が行われるのは、春漁と秋漁の年2回。サクラエビは日中は深海で生活し、夜になると上層まで浮上してくるので、漁は浮き上がってきた夜間に行われます」。そう話してくれたのは、由比の町で江戸時代から続く原藤(はらとう)商店の15代目、原藤晃(はら・とうこう)さん。原さんは由比漁港の仲買人を務め、競り落としたサクラエビやシラスを自社で加工し、販売しています。

サクラエビの習性や資源保護なども考慮して、サクラエビ漁は春と秋の限られた期間に行われます(画像提供:静岡市)

サクラエビの習性や資源保護なども考慮して、サクラエビ漁は春と秋の限られた期間に行われます(画像提供:静岡市)

原さんが営む「由比・むつみ市場」には、「桜えびご飯の素」「桜えび塩」「桜えびの揚げ玉」などサクラエビを使った商品が数多く並んでいました。サクラエビといえば乾燥させた「素干しサクラエビ」をよく目にしますが、原さんは「サクラエビのおいしさをもっと伝えたい」とさまざまな商品をそろえ、オリジナル商品も開発しています。

「由比・むつみ市場」

「由比・むつみ市場」は元は清水銀行由比支店だった建物

原藤晃さん

「由比のサクラエビはおいしいですよ」と原藤晃さん

店内で特に目を引いたのは「生(なま)桜えび」と「原藤グラタン(桜えび)」です。

「なまのサクラエビは、ぷりぷりとした食感で身はもっちり。甘みが濃いのが特徴です。丸ごと食べるのでエビみそのうまみも味わえます」と原さん。サクラエビは主に「生」「釜揚げ」「素干し」の状態にすることが多いのですが、生は甘さ、釜揚げは香り、素干しは香ばしさなど際立つ特徴が変わり、それぞれのおいしさが楽しめるそうです。

「生桜えび」

新鮮なサクラエビを急速冷凍した「生桜えび」。漁期には冷凍しないノーフローズンのサクラエビもあります

「原藤グラタン(桜えび)」は、原さんが開発した原藤商店オリジナルの人気商品。刺し身でも食べられるほど鮮度のいい生のサクラエビをバターソテーしてマカロニとホワイトソースの上にのせ、チーズをかけて焼き上げます。ホワイトソースも静岡県産の牛乳や2時間炒めたアメ色玉ネギなどで作るこだわりの味。「サクラエビの香ばしさをクリーミーなホワイトソースが引き立てます」と原さん。

「原藤グラタン(桜えび)」

人気の「原藤グラタン(桜えび)」

サクサクのかき揚げや釜めし サクラエビが味わえる「くらさわや」

由比にはサクラエビが食べられる店もあります。旧東海道沿いにある「くらさわや」は、グルメマンガ『美味(おい)しんぼ』にも登場した人気店。「生桜えび」や「桜えびかき揚げ」「桜えび釜めし」などが単品やセットメニューで味わえます。

「桜えびかき揚げ」

甘くて香ばしい「桜えびかき揚げ」

「桜えびかき揚げ」は薄衣でさっくりと軽やかに揚がっています。軽く塩をふっていただくと、サクラエビの甘さが際立ち、香ばしさが口いっぱいに広がります。

「桜えび釜めし」

うまみたっぷりの「桜えび釜めし」

「桜えび釜めし」は、カツオだしやシイタケ、サクラエビのうまみがご飯にしみわたって奥深い味わいです。

巣ごもり需要で注目度アップのプラモデル 静岡市がシェア80%以上

日本でプラモデルを見かけたら、それは静岡市で作られている可能性がかなり高いです。静岡市内に模型・プラモデルメーカーが10社以上あり、プラモデルの出荷額は全国の80%以上(2018年「工業統計調査」<経済産業省>を基に静岡市が算出)。「青島文化教材社」、「タミヤ」、「BANDAI SPIRITS」など世界的模型メーカーの本社や生産拠点が集まっていることから、「模型の世界首都・静岡」ともよばれています。

©創通・サンライズ

静岡市ではたくさんのプラモデルが作られています

それを実感できるのがJR静岡駅南口から徒歩1分の「静岡ホビースクエア」(入場無料)。模型メーカー6社のプラモデル約300点が展示され、歴史を紹介するコーナーやオフィシャルショップ、工作室もあり、プラモデルの情報発信拠点となっています。

看板

看板も楽しい「静岡ホビースクエア」

ミニ四駆のサーキット

期間限定のミニ四駆の有料サーキット。工作室には無料で利用できるサーキットもあります

長い歴史が支える高い技術とデザイン 見学すると思わず笑顔に

なぜ、これほど静岡市で模型産業が盛んになったのでしょうか。原点ともいえるのは、一人のパイロットの大空への思い、そして徳川家康も関係しているそうです。

静岡ホビースクエアの館長・山田公之(きみゆき)さんによれば「静岡市初の模型メーカーは、1924(大正13)年に設立された青島飛行機研究所(現青島文化教材社)です。創業者の青嶋次郎氏はパイロットで愛機を所有していましたが、昭和になって飛行機が飛ばせない時代になり、大空への思いを模型飛行機に託して製造販売を始めました」。やがて模型飛行機は文部省の学校教材に指定され、需要が増え、市内に模型飛行機を作る人が増えました。

解説コーナー

静岡市初の模型メーカー「青島飛行機研究所」の解説コーナーも

さらに時代をさかのぼれば「江戸時代初期、徳川家康が静岡浅間(せんげん)神社を再建するために駿府には全国から大工や彫刻家、塗師などの優れた職人が集められました。その技術が受け継がれ、腕のいい職人がいたことも木製模型作りの礎になりました。戦前は木製、戦後は金型を使ったプラスチック模型へと進化しました」(山田さん)。

展示

木製模型の発展は徳川家康のおひざ元だったことも関係しているといわれます

プラモデルが並ぶ展示室の光景は圧巻です。「BANDAI SPIRITS」のコーナーには、1979年に放送が始まった大人気アニメ「機動戦士ガンダム」に関するプラモデル「ガンプラ®」がずらり。1980年に販売を始めたガンプラは2020年に40周年を迎え、累計出荷数は7億個を突破。現在は、年間販売額の半分が海外となるなど、世界各国で人気となっています。

©創通・サンライズ

精巧な作品に目が釘付け

プラモデル

棚にもぎっしりのプラモデル

「タミヤ」のコーナーでは無線で操作するRCカーシリーズや、ミニ四駆が並んでいます。本物の車のような精巧さに見入ってしまいました。

プラモデル

今にも走り出しそう

プラモデル

こんなかわいらしいものも

見学し終わって、自然と笑顔になっていることに気づきました。童心に返ってほっとできる、そんなスペースでした。

【問い合わせ】
・由比・むつみ市場 静岡市清水区由比町屋原120/054-377-1005/9:00~17:00、土曜11:00~14:00、日曜・祝日休

・原藤商店
http://haratou.com

・くらさわや
http://www.sakuraebi.org/

・静岡ホビースクエア
https://www.hobbysquare.jp/

・静岡市広報課シティプロモーション係
https://www.shizuokacity-cp.jp/

PROFILE

中元千恵子

旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの温泉宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。
全国各地のアンテナショップを紹介するサイト 風土47でも連載中

「甘い!」と日本茶に感激 静岡が誇る“全国ナンバーワン”(中編)

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