永瀬正敏フォトグラフィック・ワークス 記憶

(100) 少年2人の背中に重ねたもの 永瀬正敏が撮ったカタール

国際的俳優で、写真家としても活躍する永瀬正敏さんが、世界各地でカメラに収めた写真の数々を、エピソードとともに紹介する連載です。つづる思いに光る感性は、二つの顔を持ったアーティストならでは。連載100回を迎えた今回はカタールの風景。乾いた大地を歩く少年2人の背中に、永瀬さんが重ねたものは?

(100)  少年2人の背中に重ねたもの 永瀬正敏が撮ったカタール

©Masatoshi Nagase

カタールの乾いた大地を力強く踏みしめながら歩いていく少年2人。
その後ろ姿。

空までがなんだか乾ききっている気がする。

遠くではラクダたちがくつろぎ、数本のヤシの木(?)が立つ。
一方で4WDの車が走り、トラックがその後ろを走り抜け、キャンピングカーを利用した店が鎮座し、
建築途中の建物や道路が、押し寄せる近代化の波を予感させる。

カタールの皆さんはとても伝統を重んじる。
それでいて率先して近隣諸国の人々を受け入れ、多様化している国でもある。

僕が訪れた時、ドーハの街は建設ラッシュに沸いていた。
いたるところで工事が行われていて、重機や建築資材を大量に積んだトラックが駆け巡り、
様々な国籍の人々が現場にあふれていた。
聞いたところによると、これまで存在しなかった地下鉄も大規模な工事が行われているとのこと。
そして2022年11月に始まる予定のFIFAワールドカップへ向けて、
スタジアムや様々な施設の準備にも、すでに取り掛かっていた。

ドーハは一部で“リトル・ドバイ”とも呼ばれているらしく、
ドバイに追いつけ追い越せで、国全体が盛り上がっているのだそうだ。
中心部には近年建てられた、ドバイのような珍しい形のビルも多数存在する。

僕はこの場所に伝統と近代化が共存する、二面性を見たのかもしれない。
都会ではなく、少し外れた場所にあるこの砂漠の中に。

バックナンバー

PROFILE

永瀬正敏

1966年宮崎県生まれ。1983年、映画「ションベン・ライダー」(相米慎二監督)でデビュー。ジム・ジャームッシュ監督「ミステリー・トレイン」(89年)、山田洋次監督「息子」(91年)など国内外の約100本の作品に出演し、数々の賞を受賞。カンヌ映画祭では、河瀬直美監督「あん」(2015年)、ジム・ジャームッシュ監督「パターソン」(16年)、河瀬直美監督「光」(17年)と、出演作が3年連続で出品された。近年の出演作にオダギリジョー監督「ある船頭の話」、周防正行監督「カツベン!」、甲斐さやか監督「赤い雪」 、大森立嗣監督「星の子」など。 写真家としても多くの個展を開き、20年以上のキャリアを持つ。2021年1月から3月まで、愛知県の「高浜市やきものの里かわら美術館」で写真展が開催された。2018年、芸術選奨・文部科学大臣賞を受賞。

(99)女の子の笑みと我が家の雛祭り 永瀬正敏が撮ったカタール

一覧へ戻る

(101) 砂漠の太陽が味方してくれた 永瀬正敏が撮ったカタール

RECOMMENDおすすめの記事