あの街の素顔

友人が転覆! 「あの人たち」に再会 カヌーでユーコン川下り(2)

写真家の野呂美帆さんがカナダで挑んだ、2019年7月27日から8月2日までのカヌーによるユーコン川下り。初心者が6泊7日で370kmを進む冒険紀行の第2回は、2日目から4日目まで。友人のカヌーがついに転覆、山火事の跡で思いをはせ、「あの人」たちとの思わぬ再会も。
(文・写真:野呂美帆)

第1回〈GPS使えず迷子 動物の足跡におびえる〉から続く

友人が転覆! 「あの人たち」に再会 カヌーでユーコン川下り(2)

目覚めたらテントの中 すがすがしい朝

友人が転覆! 「あの人たち」に再会 カヌーでユーコン川下り(2)

2日目。目が覚めるとテントの中だった。
キャンプの朝はいつも思う。「ここはどこだっけ……」
ここはカナダ。アラスカに近い大自然の中。目の前にはユーコン川へと続くテスリン川が流れている。
昨日の出来事が夢のようだが、見渡す景色は現実だった。
すがすがしい朝を迎え、気持ちはゆっくり晴れていった。

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朝食はハムとチーズのホットサンド、そして熱々のコーヒー。朝は寒いので温かいものがうれしい。

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地図に載っているキャンプ地にはたき火場があり、そこから少し離れた場所にテントが張れる。
キャンプはどこでしてもいいわけじゃなく、森のダメージを最小限にするため、むやみに足を踏み入れてはいけない。「たき火場を新たに作らない」「植物が少なく耐久性がある場所で行動する」が森を守ることにつながると聞いた。

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自然のオーラを実感したとたん、友人が転覆

昨日の疲れもあり、朝はのんびり過ごして11時に出発。
誰が先頭ということもなくあうんの呼吸で進み、誰かが声をかけるわけでもなく休憩が始まる。
カヌーを寄せ合い雑談し、お菓子を食べたり、写真を撮ったり。何ということのない時間が心地いい。

友人が転覆! 「あの人たち」に再会 カヌーでユーコン川下り(2)
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岩肌の崖が多くなり、見える景色が変わってきた。
何百年、何千年という時間をかけてできたであろう自然のかたち。
そこには近寄れないオーラのようなものがあった。

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そんな自然を目の当たりにした直後、友人が転覆した。中州の分かれ目、流れが少し速い蛇行した場所に流木がたまり、そこに入り込んだらしい。
カヌーは転覆するものと聞いてはいたが、実際に転覆すると、とても焦る。
幸い友人は無事だった。私たちが駆けつけると照れながら笑い、この状況をたのしんでいるようだった。

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身の回りのもの、テントや寝袋はすべて、ザックタイプの防水バッグに入れていたので無事だった。

早めに切り上げキャンプ ステーキをほおばる

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びしょぬれになった仲間がいたこともあり、早めに切り上げてキャンプすることにした。
地図を見ると、キャンプ場にはEXCELLENT、GOOD、POTENTIALなどと記され、いくつか種類がある。EXCELLENTから順に上、中、下という印象だった。
なるべくいい場所に、と思ったけれど、そんなに都合よくEXCELLENTは見つからず、たいていの日はGOODで過ごした。
それでもテントを三つ張るには十分なスペースがあり、不自由はない。

友人が転覆! 「あの人たち」に再会 カヌーでユーコン川下り(2)
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夕食はステーキ。ようやくキャンプらしくなってきた。
水も食料も途中で買い足せないので、あらかじめ献立を考え、必要な量を買い込んであった。
生モノや新鮮な野菜は旅の前半で用い、後半は根菜や加工肉、缶詰などを利用する。
食器や服を洗うには川の水が使えるけれど、飲用ではないから、ミネラルウォーターは多めに持っていった。これがなかなか重い。

手にはマメ、腰は痛く 座りっぱなしのカヌー

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3日目。友人がホワイトホースのカフェで食べたという、サーモンを載せたベーグルを作ってくれた。
たき火で少し焼いたベーグルにクリームチーズとサーモン、スライスした玉ねぎ。お店で出てくるような朝食だった。
ユーコン川の上流域には、体が大きく脂ののったキングサーモンも生息しているという。

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日が経つごとに体のあちこちに支障がでてくる。パドルを握る手にはマメができ、座りっぱなしの腰はたまに伸ばさないと固まってしまいそうなくらい痛い。
みんな口々に、背もたれが欲しいとか、ドリンクホルダーも付けたほうがいいとか……。
アイデアなのか愚痴なのか、そんなたわいもない話もカヌーの上だととてもたのしい。

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シンプルな川の地図。カーブや岩場、中州を目印に、自分たちがどこにいるのか確認しながら進む。立ち寄った場所にはマークをつけていった。
日本に帰ってきて見返すと時間の流れが頭に浮かぶよう。水にぬれてふやけたページも、今となってはいとおしい。

山火事の跡に咲くヤナギラン

友人が転覆! 「あの人たち」に再会 カヌーでユーコン川下り(2)
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ところどころにある山火事の跡。地図には「BURN’95」のように、いつ起きたかも書いてある。
自然発火が原因のこともあれば、人為的な原因のこともある。きちんと処理されなかったたき火が原因になることもあるようだ。

友人が転覆! 「あの人たち」に再会 カヌーでユーコン川下り(2)
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ヤナギラン。焼け跡に花を咲かせることからファイアウィードと呼ばれている。
ユーコン準州の州花でもあり、傷ついた山を癒やしているかのよう。

釣りするも釣果なし のどかな場所でキャンプ

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早めにキャンプ地に着いたので釣りをする。このあたりではグレーリング(カワヒメマス)やパイク(カワカマス)という魚が簡単に釣れて味もおいしいという。しかし全く釣れない。貴重なタンパク源にもなるので期待していたが、残念だ。
ユーコンで釣りをするにはフィッシングライセンスが必要。アウトドアショップなどで簡単にとれる。

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丸太のイスがちょうど三つ。リスが駆け回るのどかな場所が今日の宿だ。

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夕食は飯盒(はんごう)で炊いたごはんとグリーンカレーにした。
電波が全く入らないのでスマホを触る時間もなく、自然と会話が弾む。

流れに任せてのんびり 初日に会った人々に再会

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4日目。カヌーの扱いにも慣れ、のんびり過ごす時間が増えてきた。
穏やかな天気の日は川の流れに任せて下っていくと、漕がなくても自然の力が先へ先へと運んでくれる。
寝転がったり、ぼーっとしたり。聞こえるのは水の音と鳥の鳴き声だけ。
ぜいたくな時間が流れている。

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人影が見えたので写真を撮らせてもらおうと近づくと、初日に現在地を教えてくれたカナダ人のグループだった。あの時はゆっくり話をする時間もなかったけど、聞けばユーコンは3度目だという。ポール(一番右)はフォトグラファーをしていたらしく、私が持っていたフィルムカメラに興味を示していた。

旅のスピードはそれぞれ違うけど進む道は同じ。すれ違う度にカヌーの上から手を振り合い、自然と顔なじみになっていく。ユーコンで出会ったのは優しくて、寡黙そうな、落ち着いた人ばかり。回数も2度目、3度目、毎年来てるなど、リピーターが多かった。

初日は「なんて所に来てしまったんだ……」と嘆いたけど、少しずつ、確実に、ユーコンの魅力にはまりだしている。

PROFILE

  • 「あの街の素顔」ライター陣

    こだまゆき、江藤詩文、太田瑞穂、小川フミオ、塩谷陽子、鈴木博美、干川美奈子、山田静、カスプシュイック綾香、カルーシオン真梨亜、シュピッツナーゲル典子、コヤナギユウ、池田陽子、熊山准、藤原かすみ、矢口あやは、五月女菜穂、遠藤成、宮本さやか、小野アムスデン道子、石原有起、江澤香織、高松平藏、松田朝子、宮﨑健二、井川洋一、草深早希

  • 野呂美帆

    フォトグラファー
    三重県出身。旅、アウトドア、ライフスタイルを中心に、雑誌、広告などで幅広く活動。街も自然も同じくらい楽しみたいと、WEBメディア「日非日非日日」で、日常でも使えるアウトドアアイテムを紹介するコラムを連載している。

GPS使えず迷子 動物の足跡におびえる カヌーでユーコン川下り(1)

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