にっぽんの逸品を訪ねて

カツオと屏風絵を楽しむ南国土佐の旅 高知県高知市・香南市

  • 文・写真 中元千恵子
  • 2016年11月8日

秋は脂ののった戻り鰹(かつお)の季節

 高知県といえば“南国土佐”といわれる黒潮洗う温暖な土地。陽気でお酒好き、豪快で人情味あふれる……そんな気質のイメージがある。

 その土佐で愛された独特の屏風(びょうぶ)絵があると聞いて、高知駅に降り立った。

 屏風絵を見に行く前夜、まず訪れたのは高知市街にあるひろめ市場だ。約40の飲食店のほか、土産物店や雑貨店などが集まった屋台村のような場所で、地元客も観光客も集う。

 名物の鰹(かつお)のたたきとお酒を買ってテーブルに座ると、周りでは「まっこと……」「知っちゅう」「~ぜよ」などと高知弁が飛び交い、活気あふれる。しばし、高知の雰囲気に浸ることができた。

 翌日は、香南(こうなん)市赤岡(あかおか)町へ。土佐湾に面した赤岡は、江戸時代に高知城下の物資の集積地として整備された町。当時は廻船問屋や商家が立ち並んで大いににぎわったそうだ。

 往時の面影を残す町の一角に「絵金蔵(えきんぐら)」がある。

「絵金蔵」の館内

 “絵金”とは、江戸時代末期に赤岡で活躍した一人の絵師の呼び名だ。二つ折りの屏風に歌舞伎や浄瑠璃の場面を描く“芝居絵屏風”を確立した。それが人気を呼び、商家のだんな衆はこぞって絵金の作品を買い求め、夏祭りの夜に軒先に飾って和ろうそくで照らしたという。

 絵金蔵では23枚の芝居絵屏風を収蔵し、祭りの夜さながらの雰囲気で鑑賞できる。

かつてはろうそくで鑑賞した(画像提供:絵金蔵)

 これらの絵の妖しい魅力を何と表現したらいいのだろう。

 芝居絵屏風は、物語のいくつかの場面を1枚にまとめる異時同図法を用い、物語を忠実に再現している。大胆な構図、鬼気迫る表情、赤が印象的な鮮やかな色づかい。

 物語の一瞬を切り取り、凝縮して表現した絵は、見る者の本能に訴えかけ、心をギュッとつかむような迫力がある。

構図も大胆

絵金の緻密な絵画も見られる

 館内では、絵金の生涯や製作風景、他の作品なども紹介している。

絵金は本名を広瀬金蔵といい、もとは土佐藩家老桐間家の御用を務める狩野派の絵師だった。贋作の疑いをかけられて城下追放となり、叔母を頼りに赤岡に移り住み、酒蔵をアトリエとして絵を描いた。

 絵には、絵金の人生を反映したさまざま想いも込められているのだろう。

製作風景も再現

 絵金の芝居絵屏風は、赤岡町では年に2回、本来の鑑賞方法である、屋外でろうそくを灯して見ることができる。

 1回は、毎年7月14、15日に行われる赤岡町の須留田(するだ)八幡宮神祭の宵宮(よいみや)だ。神社から約1.5キロ離れた商店街の氏子たちの家の軒先に点々と飾られる。

 また、7月の第3土・日曜の夜には、商店街で芝居絵屏風を並べる絵金祭りも行われる。

 芝居絵屏風の迫力は、実際に目にしないと分からない。現地に出かけ、土佐独特の文化に触れてみてはいかがだろう。

芝居絵屏風が並ぶ絵金祭り(画像提供:絵金蔵)

アクセス・問い合わせ

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■絵金蔵は土佐くろしお鉄道ごめん・なはり線あかおか駅から徒歩10分

■絵金蔵 0887(57)7117

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PROFILE

中元千恵子(なかもと・ちえこ)フリーライター

中元千恵子

旅とインタビューを主とするフリーライター。埼玉県秩父市生まれ。上智大卒。伝統工芸や伝統の食、町並みなど、風土が生んだ文化の取材を得意とする。また、著名人のインタビューも多数。『ニッポンの手仕事』『たてもの風土記』『伝える心息づく町』(共同通信社で連載)、『バリアフリーの宿』(旅行読売・現在連載中)。伝統食の現地取材も多い。
全国各地のアンテナショップを紹介するサイト 風土47でも連載中

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