あの街の素顔

こびとたちが見守る美しい大学の街 ポーランド・ヴロツワフ

  • 文・カスプシュイック綾香
  • 2017年1月3日

カラフルな建物が並ぶ中央広場

 最近、首都ワルシャワからの日帰り旅行先として注目を浴びている都市がある。それがポーランド南西部に位置する第4の都市、ヴロツワフだ。

 人気観光都市のワルシャワやクラクフから列車を使うと3.5時間かかってしまうが、ワルシャワとヴロツワフの空港を結ぶ飛行機は1日9便、所要時間は約1時間である。格安航空も乗り入れ、2016年からは大幅に増便となった。ヴロツワフはコンパクトに見どころがあり、1日でも十分に観光を楽しむことができる。

中央広場

 この街は千年以上の歴史を持ち、時代によって様々な国の領地となったため、独特の景観を持つ。ヴロツワフは10世紀にボヘミア公によって建設されるが、まもなくポーランド王国の領土となった。14世紀にはボヘミア、17世紀から第2次世界大戦まではハプスブルグ家、プロイセンやドイツに領有され、1945年に再びポーランドの地となった。

 観光はまず、旧市街の中心にある中央広場からスタートしたい。ヴロツワフの中央広場はポーランドで2番目に広く、またひとつ一つの建物が何ともユニークで面白い。この広場はポーランドの領土であった13世紀初頭に建設された。中世の伝統ある建築様式を多く見ることができるが、よく見てみると西側には現代風の建物もある。

250年かけて増改築が繰り返された旧市庁舎

 最も目を引く建築物は、ゴシック装飾が大変華やかな印象を与える旧市庁舎だ。13世紀に建設が始まり、約250年もの年月をかけて改築や増築が加えられたという。特徴ある中央の時計やベルのある塔は14世紀に取り付けられた。現在は市庁舎として機能していないが、街に要人が訪れた際は今でも伝統的にこの場所へ招待しているそうだ。内部はアート博物館となっており、地下にはヨーロッパで最も古いといわれるレストラン "Piwnica Świdnicka" がある。カラフルで見ているだけでも楽しい中央広場は何十分といても飽きないが、広場から伸びるにぎやかな通りにもぜひ目を向けてもらいたい。

ヴロツワフは「こびとの街」と呼ばれる(カスプシュイック綾香撮影)

 南にはシフィドニツカ通りという、ヴロツワフのメインストリートがある。注意深く観察すると幾つかの可愛らしい「こびと」を見つけることができるだろう。実はヴロツワフは「こびとの街」と呼ばれており、第1号は2001年に設置された「こびとのお父さん」だ。

 第1号はメインストリートにあるのだが、この通りで最も存在感があるため端の方まで歩けばすぐにどれか分かる。多くの観光客に撫でられ、さらに丸くなった姿が愛らしい。

 第1号が設置された後、こびとは観光向けアトラクションとして注目され、2003年に第2号が設置されてから、現在までどんどん数が増えた。250体以上はあると言われるが、個人・企業と関係なく自身の土地であれば自由に設置できるため市ですらその数は把握できていない。しかも、そのうち40体ほどは「成長」しているという。

ヴロツワフ大学博物館入り口前の「教授」(カスプシュイック綾香撮影)

 こちらは、後に紹介するヴロツワフ大学博物館の入口前にあるこびとだ。名前は「教授」、ヴロツワフに存在する数々のこびとの中で最も教養が高く、いつも本を読んでいる。遅れてきた学生に警告をすることもあるらしい。

 このようにすべてのこびとには名前と職業や役割があり、伝説を持つこびとまでいるのだから面白い。ヴロツワフのこびとは、まるでそこに住んでいるかのように行き交う人々をこっそり見守っているのだ。今ではこびと祭りや、こびとに服を着せて良い作品を競うコンテストを開催したりと、地元の人々とも密着している。

 観光案内所やお土産屋さんで「こびとマップ」を入手できるので、興味のある方は観光しつつこびとも探してみてほしい。

聖エルジュビェタ教会(カスプシュイック綾香撮影)

 広場の北側を見ると、聖エルジュビェタ教会の90mをも超す塔が目に入る。かつては130mの高さを誇り、この地方で最も美しい建築物とまで言われていた。この塔には4月から10月の夏期シーズンのみ上ることができる。200段の階段を上り、てっぺんから見下ろす広場の眺めは素晴らしい。美しい旧市街全体はもちろんのことヴロツワフの起源であるオストルフ・ツムスキ島も見ることができる。

 次は、教会の東側にあるビエンジェンナ通りを歩いてみる。「ビエンジェンネ」はポーランド語で「刑務所」という意味で、昔ここには牢獄があった。もちろん牢獄に入ったこびとも見つけることができる。この通りの突き当たりにはヴロツワフ大学があり、普段は学生でにぎわう通りだ。ピザやパスタなどイタリアンレストランが軒を連ね、どれもお手ごろな価格なので学生や若いカップルに人気がある。

ヴロツワフ大学(カスプシュイック綾香撮影)

ヴロツワフ大学のレオポルディヌム講堂(カスプシュイック綾香撮影)

 ヴロツワフ大学も人気の観光スポットの一つ。創立は16世紀にさかのぼるが、実際に機能し始めたのはその200年後の1702年であり、当時は「レオポルト・アカデミー」と呼ばれていた。現在、一部はヴロツワフ大学博物館として公開されており、特に1階のレオポルディヌム講堂は豪華絢爛(けんらん)でため息が出るほど美しい。

 天井には「神の知恵」を象徴する絵があり、威厳を感じる。両横に並ぶ16枚の肖像画は当時の教授やハプスブルグ家の一員、ローマ教皇であり、ヴロツワフ大学の発展に大きく貢献した人物である。

 20世紀初頭以来、ヴロツワフ大学は9人ものノーベル賞受賞者を輩出してきた。一部を挙げると、『ローマ史』を代表とする歴史作家の巨匠テオドール・モムゼン、マイナスイオンの健康効果を発見したフィリップ・レナード、量子力学の波動力学を提唱したエルヴィン・シュレーディンガーなどであり、特に科学者が多く、現在の大学も中心は科学分野である。

オストルフ・ツムスキ島(カスプシュイック綾香撮影)

 博物館を後にしたら、広場から見て北にあるオストルフ・ツムスキ島を目指そう。徒歩約10分の場所にあり、途中には美しいオッソリネウム庭園、橋の前には地元の人でにぎわうマーケットがある。

 川の向こうに見える美しい2つの塔を持つ建築物は、洗礼者ヨハネ大聖堂だ。14世紀にゴシック建築で建てられたが、最近の発掘調査によると元となった教会は10世紀頃には存在していたという。大聖堂はまさに中世のポーランドを象徴する姿であり、また97mの塔にはエレベーターで上ることも可能だ。こちらも6月から9月までの夏期限定だが、見晴らしの良さは先に紹介した聖エルジュビェタ教会の塔に引けを取らない。

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ヴロツワフ大学の展望台から旧市街を眺める(カスプシュイック綾香撮影)

 主な見どころを紹介したが、ヴロツワフにはまだまだ観光スポットと呼べる場所がある。しかしその多くが徒歩で移動できる範囲にあるため、地図があれば1日でも効率よく観光できるだろう。空港から市街まではバスで約35分、ワルシャワ中央駅から空港も列車で約20分の距離だ。ワルシャワに数日と滞在するのであれば、ぜひ気軽にヴロツワにも足を運んでほしい。

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