「生きるレシピ」を探す旅 ―志津野雷―

まだまだ春スキー、亡き友と雪山で心を通わす

  • 文・写真・動画 志津野雷
  • 2018年4月13日

雪山と海が眺められる。新潟県・柏崎

近年、旅の目的として、水の循環を意識する。

海水が蒸発し、季節風が吹き、雲が雪や雨を降らせ、それによって地下に長い時間をかけ浸透した水が湧水や川となって海に流れていく。

そうした循環の中で生まれた地形がもたらす恩恵には計り知れないものがあり、自然の一部である人間にとってはありがたいことだと思う。

北海道・ニセコ、五月の春スキーは気持ちよし

前回の奄美大島の話は、その中でも海の中の世界を深く感じる場所の一つとして紹介した。自分の拠点になっている逗子は桜も散り春の盛りだが、今回はまだまだスキーを楽しんでいるという山の話をしたいと思う。

普通にスキー場でも滑るが、手つかずの自然の中で行うバックカントリーに魅了される。リフトを使うスキーとは、また別の世界。自力で登った分だけ滑れる。より自然の力を感じ、自己の強さが試されるのだ。

リフトのない手つかずの自然の雪山を自力で上り、すべり降りるバックカントリーに挑む。岩手県・八幡平

きっかけはすでに現世にはいない友達のしつこいくらいの誘いだった。雪山を愛した彼の導きにより、足を踏み入れることになるのだが、そこで待っていたのは海同様、圧倒的な自然。その中では、いくら心強い仲間が側にいてくれても、ただただ自分と向き合うしかないのだ。

初心者の私にスキー板を提供してくれたVECTOR GLIDEの美しき板

意識の中で勝手に作り上げていた限界やプライドはすぐに崩壊する。赤子になったような無垢な自分を素直に認めたときに価値観の変化がどんどん始まった。高山の気候は著しく変化する。後でいいやという判断が許されない。

サボり癖のある僕は、山に少しずつ通う。行くと決めてからは、緊張感に包まれる。登り始め、心が裸になっていき、いろんな局面で判断を強いられた後、滑り降りる、という快楽の循環。

岩手県・八幡平

スキーヤー・河野健児(vector glide)

無事にその日を終え、山からいつもの世界に戻ってくると浦島太郎になったかのように時間の感覚すら変わってしまう。濃縮されるのだ。

去年この世を離れた友人が愛した、北海道・ニセコの冬に初めて行った。まだ12月の半ばにもかかわらず近年にないくらいの、いわゆるパウダースノーの大雪が降り、ようやく来たねと言わんばかりの“歓迎”をしてもらった。

ニセコを案内してくれたフォトグラファーのRIP ZINGER

【動画】新雪を滑る(C)志津野雷

旅の道中で土地の神様や聖地と呼ばれる場所によく挨拶をしに行く。そうすることで、心が軽くなることがしばしばある。自然と本気で遊んでいると、その存在をすぐそばに感じ、亡き友が心の中に語りかけてくるのがわかる。

岩手県・安比高原スキーリゾートのナイター

目の前で起こることだけが全てではない、たとえこの世を離れた相手でも、意識の中では心を通わせることができる。

山も海も。地球にある自然に心を委ねると僕たち人間こそが自然であると気づかされる。

これからも大いに、地球の恵まれた自然と遊び続けていきたい。

筆者(右)

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