春の陶器市シーズン到来 知っておきたい和食器の最新トレンド

  • 文・矢口あやは
  • 2018年4月23日

  

 ここ数年、情報感度の高い女性たちを中心に和食器ブームが起きている。Instagramで「#和食器」を検索すると18万件以上がヒットし、女優やモデルといったファッションリーダーもステキな器を披露しているのだ。

*** 先日思い立って ひとりでふらっと行った 大好きな和食屋さん。 たくさん話を聞いて 私がやりたくてもできない事を やってくれる方達が居て 大切に思ったり、寄り添ったり たくさん笑いあったり 行ってらっしゃいって思ったり またねって思ったり おかえりって思ったり。 ここ最近でとても温かく感じるのは 相変わらず人付き合いは下手だけども 大好きな人が増えることを 嬉しく感じれるようになったって事。 実はまだ事務所に送っていただいた 誕生日プレゼントを受け取れていなくて その全部をひとつひとつ手に取ったら 改めてお礼させて下さいね。 そんな帰り際に 帰ってご飯作るのでおかず下さい って甘えてみたら 自分で作れよ~って言いながら 激うまお肉料理2種をお持たせてくれて ちょっと彩ったらしっかりメインに。 だからそれだけ撮ってみた そんな昨日の半分#ふみ飯 でした。

木村文乃さん(@fuminokimura_official)がシェアした投稿 -

 こうした多彩な食器に出合える場のひとつが、ゴールデンウィークにかけて全国各地で開催される「陶器市」。作家のゴージャスな一点物からお値打ち品まで、たくさん売りに出される。食器好きはもちろん、これから焼き物を楽しもうと思っている人にも親しみやすい場だ。

 益子で作られたものを「益子焼」と呼ぶように、焼き物はそれぞれの土地と深い関わりを持っている。地域ごとの焼き物の特徴をつかんでおけば、陶器市で好みの一枚と出合う確率も高まるだろう。

 そこで、器ファンに高い人気を誇る和食器専門店「monsen」と「うつわ大福」への取材をもとに、この春、陶器市を行う4つの地域の焼き物の特色をまとめてみた。

人気の和食器ジャンル案内

波佐見焼(長崎県)

【ガイド】
 波佐見焼は、つるりとして薄手で、透けるような白磁と藍色の染め付けが特徴。江戸時代に舟上の人に料理を配る「くらわんか碗」、しょうゆや酒の輸出用の「コンプラ瓶」が大量に作られるなど、気軽に使える日常の器としての歴史が長い。

 「約8年前に陶器ブランド『HASAMI』がスタイリッシュな器を世に出したのをきっかけに波佐見焼の人気が急上昇。近年はカラフルなものも増えました」(monsen・竹本香織さん)

片端のくぼみがソースやドレッシングを受け止める構造で、ワンプレートとしても活用できる万能皿「波佐見焼 重宝皿シリーズ」(画像協力/monsen)

益子焼(栃木県)

【ガイド】
 益子焼は砂の含有量が多く、土の風合いを生かした素朴な質感が特徴。厚手でぽってりとした重量感があるものが多い。「丁寧につくり込まれた日用品にこそ真実の美が宿る」とする民芸運動の影響を受けて自由な作品づくりが行われてきた。

 「Instagramから人気に火がつき、女性ファンが多いのが『よしざわ窯』の器です。写真は動物をモチーフにしたかわいらしい器ですが、渋い色味やシンプルなデザインのものもあります」(monsen・竹本さん)

シロクマやハリネズミ、鳥などのモチーフがかわいい「よしざわ窯」の器たち(画像協力/monsen)

九谷焼(石川県)

【ガイド】
 九谷焼は本来、加賀百万石の文化を受け継ぐゴージャスな様式美が特徴。透明感のある赤、青、緑、黄、紫などの顔料で緻密(ちみつ)な絵を描く。現在は「九谷青窯(くたにせいよう)」のように、鮮やかながらシンプルな皿を手がける窯も人気。

 「『九谷青窯』は和洋どちらにも使えて、おしゃれなものが多いので、初めて和食器の世界に踏み出すときの入門の器としてもピッタリです」(うつわ大福・平安名康美さん)

「九谷青窯」の堀畑蘭氏が手がけた「色絵野菊 黄」(7寸皿)。九谷焼らしい白磁と鮮やかな色彩が洋食ともベストマッチ(画像協力/うつわ大福)

美濃焼(岐阜県)

【ガイド】
 岐阜県は日本最大の焼き物の産地で、全国の陶磁器の生産量における美濃焼のシェアは半分以上。“特徴がないことが特徴”と言われるほど多様性があり、なかでも「美濃桃山陶」と言われる「織部」「志野」「黄瀬戸」「瀬戸黒」が有名。

 「どのご家庭にも必ず一つはありそうなほど一般的なのが美濃焼。九谷焼風、古伊万里風など、他の産地の良いところを取り入れることも得意です。手頃な価格でバラエティーに富むのが特徴ですね」(うつわ大福・平安名さん)

プロダクトデザイナー小野里奈氏が手がける作品。主役がみずみずしく映えるようにという願いを込めた「瑞々(mizu-mizu)シリーズ」(画像協力/monsen)

Instagramが人気を牽引 カラフル&ユニークな食器

 ご覧の通り、産地によって食器の表情は大きく異なるが、近年は色味がカラフルで形のユニークなものが業界のトレンドらしい。それを後押ししているのがSNSの存在だ。

 「これまで食器は自分だけで楽しむものでしたが、Instagramによって人に見せる機会がぐっと増えました。洋服やインテリアと同じ感覚で“いいね”をもらえる器が人気を集め、作り手側もこうしたトレンドを意識しているようです」(monsen・竹本さん)

人間工学に基づいたユニバーサルデザインの波佐見焼「bird e-マグ」。若手陶磁器デザイナー・石原亮太氏の作品(撮影=筆者/「monsen」にて)

 「うつわ大福」の平安名さんも、「確かに、近年はInstagramが和食器のトレンドを牽引(けんいん)していますね」とうなずく。

 「和食器の楽しみ方が時代とともに変わってきていると感じます。かつては一式5枚セットで購入するのが常でしたが、現在は『バラエティーがあったほうが楽しいから』という理由で異なる柄を1枚ずつ買い求める人も少なくありません。また『自分だけの器を見つけて楽しみたい』というニーズも高まり、大型店にある量産品ではなく個性的な食器を求める人も増えました」(うつわ大福・平安名さん)

和食器の伝統の世界に吹く“破壊と創造”の風

 Instagramや雑誌で目にするモダンで個性的なデザインの器は、「波佐見焼」や「益子焼」が多い。こうした現代的なニーズに即した器を生み出す産地には、実は共通点がある。

 「焼き物の世界は、師弟関係のなかで技法を受け継いでいくのが一般的。従来、弟子は師匠のもとで伝統を守ってきました。そういう業界慣習があるなか、波佐見や益子は、師を持たない作家やデザイナーも広く受け入れ、新しいことに挑戦しているエリアなのです」(うつわ大福・平安名さん)

 一方、作り手の代替わりによって新しい風が吹くケースもある。モダンな九谷焼の器で人気の「九谷青窯」は30代が中心となって器を作り、独立して作家の道を進む職人も少なくないという。

九谷青窯から独立し、自らの窯を開いて九谷の粘土と絵の具を用いて器づくりを行う作家・樋山真弓氏の作品「色絵花と菱 輪花皿」(画像協力/うつわ大福)

 「いまは昔ながらの職人も減りつつあり、売れ行きや顧客のニーズをくみながら器づくりを行う窯も増えてきました。和食器店やギャラリーが器の売れ行きを作り手側にフィードバックしたり、アイデアを提案したりすることもあります」(うつわ大福・平安名さん)

 こうして、伝統の器とは風合いが異なる、現代らしい器が生まれていく。

 さらに、新しい器が誕生する背景には、活動拠点の素材や手法に縛られず、オリジナリティーを追求する作家の存在もある。彼らは気に入った土や絵の具、釉薬(ゆうやく:陶磁器の表面に光沢を出し、液体がしみ込むのを防ぐための薬品)といった素材を各地から取り寄せてミックスし、独自の風合いを出すのだ。

繊細な絵柄が人気の作家・岡さつき氏の作品「安南花唐紋6寸皿 14」。夫の岡晋吾氏が主宰する「天平窯」にて作陶されたもの(画像協力/うつわ大福)

 もちろん窯やメーカーが素材を取り寄せて作るケースもあるが、これはクリエーティブな理由とは限らない。

 「実は今、顔料や釉薬を扱うことができる職人の高齢化で店舗がどんどん減っているほか、肝心の土が枯渇しはじめた産地もあって、よそから取り寄せざるを得なくなっているのです。今後この傾向が進むことで『○○焼』の定義はあいまいになっていくのかもしれません。新しい器の誕生は楽しいものですが、同時に昔ながらの伝統を守るためにどうすべきかを真剣に考える節目にきています」(うつわ大福・平安名さん)

次に来るトレンドは? 和食器2.0を予想する

 今はユーザーと作り手、双方の価値観や環境の変化が複雑に絡み合い、和食器を巡る独特のシーンが生まれている。この先、トレンドはどう移り変わっていくのか。

 「今トレンドになっているのは、まさに入門の器。そのわかりやすさや可愛さに目が慣れたら、次に気になるのはきっと“渋い器”でしょう。たとえば『信楽焼』のように少し土っぽい、温かみがあるものが人気を得るかもしれません」(うつわ大福・平安名さん)

 一つの器に慣れたら、別のジャンルの器にチャレンジする。そうして興味と知識を広げてきた器の目利きはこうも話す。

 「リズミカルな模様が美しい小鹿田(おんた)焼のように、昔からデザインは大きく変わらないのに、いつ見ても面白くて飽きの来ない焼き物もあります。和食器にハマった方は、モダンなものだけでなく、時代を超えてきた器の奥深さにもぜひ触れてみてください」(monsen・竹本さん)

素朴で温かみを感じさせる小鹿田焼の器たち。江戸時代から今日に至るまで、大分県の山中にある小さな集落で焼き上げられている(画像協力/monsen)

 さあ、器に興味が出た人は、春の陶器市へ出かけてみよう。信じられないほどたくさんの器が一堂に集められ、安いものなら300円など手頃な価格でも入手できる。作家と話し、作品の背景を知って買う器は、きっと旅の思い出に満ちた愛着の一皿になるはずだ。

<2018年春の陶器市イベント情報>(※)

  • 「第101回 益子 春の陶器市」(栃木県)4月28日〜5月6日
  • 「60th 波佐見陶器まつり」(長崎県)4月29日〜5月5日
  • 「第115回 有田陶器市」(佐賀県)4月29日〜5月5日
  • 「第42回 土岐美濃焼まつり」(岐阜県)5月3日〜5月5日
  • 「第110回 九谷茶碗まつり」(石川県)5月3日〜5月5日
  • 「第13回 東京蚤の市」(東京都)5月26日・27日

※上記は編集部調べ。事前に最新情報をご確認の上お出かけください

<取材協力店クレジット>
●monsen
民芸や作家のうつわを中心に、白山陶器や波佐見焼の和食器、野田琺瑯(ほうろう)や倉敷意匠の雑貨などを扱う和食器のお店。ネットショップでも販売しています。

公式サイト:https://www.monsen.jp/
Instagramアカウント:https://www.instagram.com/monsen_jp

(撮影=筆者)

うつわ大福
和洋中、エスニックといったジャンルをこえて食される日々のメニューにフィットする、新しい感性の作陶家が創る和食器、作家モノとよばれる和の器をメインに扱う。

公式サイト:http://www.utsuwa-daifuku.com/
Instagramアカウント:https://www.instagram.com/utsuwadaifuku

(撮影=筆者)

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