にっぽんの逸品を訪ねて

『君の名は。』の舞台でティーセレモニー 飛驒市古川町

  • 文・写真 中元千恵子
  • 2018年5月29日

薬草の宝庫である飛驒市で「薬草ティーセレモニー」を体験

城下町の面影を伝える白壁土蔵の町並み

 岐阜県北部の飛驒市古川町は、約400年前に増島城が築かれ、城下町として歴史を重ねた。当時、新田開発の用水路として造られた瀬戸川が今も流れ、碁盤目状の町割りが残る。出格子の商家や木造の町屋、土蔵などが続く町並みは風情をたたえ、“飛驒の小京都”とも称される。
 特に、JR飛驒古川駅から徒歩約5分の「瀬戸川と白壁土蔵街」は飛驒古川の顔ともいうべきスポット。寺の石垣と白壁土蔵、そして春から秋にかけて1000匹のコイが泳ぐ瀬戸川の風景は時代をさかのぼったかのようだ。

「瀬戸川と白壁土蔵街」はのんびりと歩きたい

 かつて武家屋敷があった殿町や、商人町だった壱(いち)之町、弐(に)之町、三之町などの町名は、現在もそのまま使われている。
 周辺には歴史的な建物が連なり、造り酒屋の建物など国の登録有形文化財もある。町屋も伝統的な建築様式を踏まえたものが多く、出窓や出格子など匠の技術を間近に見られる。軒下の「雲」とよばれる装飾には大工独自の文様を刻む風習があったそうで、その種類は約170を数える。「雲」を見比べながら歩くのも古川散策の楽しみだ。

軒に酒林を下げた造り酒屋。店内で試飲も行っている

映画の舞台に選ばれた飛驒古川の魅力

 古川町では、ユネスコ無形文化遺産に登録された古川祭をはじめ、歴史ある祭りや行事も脈々と受け継がれている。暮らしの中に伝統が息づく町には、奥ゆかしい日本情緒が漂い、訪れる人をひきつける。
 飛驒地方では昔から「娑婆(しゃば)にあぐんだら(飽きたら)古川へ」といわれてきたそうだ。世の中を辛く感じたら古川へ行こう、そんな言葉が生まれるほど、人情味にあふれ、やすらぎを感じる町なのだろう。
 2016年に公開された映画『君の名は。』では、ヒロインが暮らす重要な町のイメージに使われ、飛驒古川の魅力が再認識された。
 気多若宮神社や、線路の風景、図書館、タクシー乗り場など、映画の舞台になった場所を見学する人は今も多いという。市街にある飛驒古川さくら物産館では、ヒロインが作っていたように組みひも制作の体験もできる。

鳥居や石段が映画にも登場した気多若宮神社。厳かですがすがしい空気に包まれる

初心者でも安心な組みひも体験

ティーセレモニーで優雅なひと時を

 そんな飛驒古川を訪れたら、町並みを歩くだけではもったいない。地元の人とふれあい、伝統や文化を感じる体験メニューも楽しもう。
 おすすめの一つが、「薬草ティーセレモニー」だ。
 飛驒市では、240種以上もの薬草が自生していることから、薬草を活用した町づくりが行われている。薬草は、健康づくりや病気の予防に効果があるといわれてきた草花だ。

 「飛驒地方では、昔から『この症状にはこれ』と、植物の活用知識が伝承されてきました。身近にある薬草で市民や飛驒を訪れた人を元気にしたい」と話すのはNPO法人「薬草で飛驒を元気にする会」の理事長、北平嗣二さんだ。

 北平さんは「料理旅館 蕪水(ぶすい)亭」の4代目主人であり、薬学博士の故村上光太郎氏の指導のもと、薬草料理を開発し、夕食に取り入れている。

 この蕪水亭で、おかみの修子さんが「薬草ティーセレモニー」を行う。飛驒で採れた13種の植物の中から最大4種類を選び、オリジナルのハーブティーを作る体験だ。

人気の薬草ティーセレモニー

 参加者には、村上光太郎博士の著書から引用した解説が配られ、おかみさんのアドバイスを受けながら、自分の体調や好みに合った植物を選ぶ。

 13種の中には、ヨモギやスギナ、イチョウ、クリの葉など見知った植物も多く、身近な植物がさまざまな働きを持つことが分かる。高級つまようじの素材として知られるクロモジは清涼感のある香り、クリの葉は甘みがあるなど、味も香りも異なる。

好みの植物を選んでオリジナルティーを作る

 お茶をいれ終わると、自家製のシフォンケーキとともに味わいながら、優雅なひと時を過ごした。この日は6人が参加し、全員違う配合。参加者全員のお茶も分け合うので、組み合わせによる味の違いが実感できる。
 最後に、鮮やかな青色をしたタイのバタフライピー茶も登場。レモンなど酸を入れると一瞬で赤紫色に変わる。色でも植物の不思議な作用が感じられた。

色の変化も楽しめるバタフライピー茶

 蕪水亭は、1870(明治3)年に創業し、作家の池波正太郎や遠藤周作も訪れたという。老舗らしい風格が漂う館内の雰囲気も楽しめた。

縁起物の飛驒絵馬をおみやげに

 絵馬の製作体験も、飛驒の文化に触れられる。
 絵馬は、神社に生きた馬を奉納していた風習が板に描いた絵に代わったものだが、飛驒地方ではこの風習が紙絵馬となって受け継がれている。家内安全や商売繁盛を願って、玄関に紙絵馬を飾る。馬の頭を家の中に向けると幸運を呼び込めるとされる。

 「瀬戸川と白壁土蔵街」の一角にある飛驒絵馬工房では、店主で絵師の山口綏星(すいせい)さんの描いた絵馬の下絵に色付け体験ができる(約60分、1080円)。
 躍動感のある馬はまるで生きているよう。色鮮やかに彩ると、見ているだけで活力がわいて幸運を呼び込みそうだ。

伝統文化に触れ、心豊かな気持ちになる

地元で人気のトマトラーメン

 飛驒市をめぐるとラーメン店が目につく。20年前くらいまでは、夜は屋台が出てラーメンを売り歩いていたという。ラーメン好きな土地柄のようだ。
 地元で人気の一軒が「HIRO’(ヒロダッシュ)」。飛驒ラーメンは、しょうゆベースのスープに細打ち縮れ麺が多いが、それにとらわれず、他店ではあまり見られないめずらしい20種以上のラーメンがある。
 豚、鶏、魚、野菜から作るスープをベースに、麺はメニューによって極太、中太ストレート、中太ちぢれを使い分けている。
 一番人気のトマトラーメンは、赤い色が印象的。トマトの酸味が強いのかと思ったが、酸味は感じず、さっぱりとして、だしの風味が際立つ。まろやかなスープと中太ストレートの麺の相性がいい。カリカリに焼いた香ばしいチーズも味のアクセントになって、あっという間に完食。満足の一杯だった。

見た目よりもさっぱりとしたトマトラーメン

【問い合わせ】

飛驒市公式観光サイト「飛驒の旅」
https://www.hida-kankou.jp/

飛驒古川さくら物産館(組みひも体験)
https://www.hida-kankou.jp/spot/3862/

蕪水亭
http://www.busuitei.co.jp/
*薬草ティーセレモニーは宿泊客は2名以上、ほかは3名以上から要予約。3000円(税込み)、所要約2時間

飛驒絵馬工房(絵馬色付け体験)
飛驒市古川町壱之町5-6
9:30~17:00/月・金・第3日曜休(12~3月は不定休)
予約はTEL0577-73-4635

HIRO’
https://hirodash.jimdo.com/

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