クルーズへの招待状

地中海クルーズ、寄港地で世界遺産巡り

  • 文・上田寿美子
  • 2018年6月8日

ポルトフィーノ沖の「セブンシーズ エクスプローラー」(撮影=すべて上田英夫)

 客船「セブンシーズ エクスプローラー」の地中海クルーズは6日目の朝、フランスのプロヴァンス・アルプ・コートダジュール地域圏の首府マルセイユに入港しました。紀元前600年にギリシャ系のフォカイア人が築いた植民地都市「マッシリア」が起源というフランス最古の大都市です。

 この船では寄港地観光が乗船料金に含まれているので(一部特別なツアーを除く)、今回は約100km離れたアヴィニヨンまで遠出をするバスツアーに参加しました。なぜなら「アヴィニョン歴史地区:法王庁宮殿、司教関連建造物群及びアヴィニョン橋」は、ユネスコの世界遺産にも登録された歴史的な街であるうえに、フランス民謡「アヴィニョンの橋の上で」で歌われた橋も見てみたかったのです。

 バスは街に入るとお目当ての一つ「アヴィニョン橋」の近くに停車。正式には「サン・ベネゼ橋」という名前で、1177年から1185年にかけて建設され、かつては22連のアーチで構成された橋だったそうです。その後、戦争やローヌ川の氾濫(はんらん)により度々破壊され、現在の四つのアーチの姿となりました。

 1309年から1377年にかけてキリスト教カトリックの法王庁がローマからアヴィニヨンに移されました。この時に建てられた法王庁宮殿は、ヨーロッパ最大級のゴシック様式宮殿です。受付で借りたタブレットの道案内に従い、ベネディクト12世の命で建てられた旧宮殿と、クレメンス6世などにより増築された新宮殿を見て回りました。中庭を望む回廊、教皇専用の大礼拝堂などに、当時の栄華がしのばれました。特に興味深かったのが、中世の法王庁宮殿とタブレットという電子機器との組み合わせ。例えば、何も置かれていない大食堂で、タブレットをかざすと、宴席の模様が現れるなどの仕掛けがあり、ちょっとしたタイムスリップ気分を味わえました。

アヴィニョン法王庁宮殿

 船に戻ると、トワイライトタイムがやってきました。11階の「オブザベーションラウンジ」は、海の景色と共に食前酒とおつまみが楽しめる粋な場所。船名にちなんだオリジナルカクテル「エクスプローラー」を頼むと、地中海の夕日のように赤いカクテルが登場し、船上のナイトライフの幕が開けました。

オリジナルカクテル「エクスプローラー」

 夕食はアジア料理レストランの「パシフィック・リム」へ。一度回せばそこにかかれた経典をすべて唱えたことになるという仏教寺院の輪蔵(りんぞう)を模した入り口がユニークです。メニューに並ぶのは、すし、ハマチ刺し身、牛肉タタキ、シューマイ、ロブスターの天ぷら、グリーンカレー、プルコギなどアジア各地の味覚。日本のビールと共にすしを食べ、タラのみそ焼きと共にとっくりに入ったかん酒を飲むと、地中海にいることを忘れてしまいそうになりました。

ユニークな「パシフィック・リム」の入り口

 船内には2階建ての劇場があり、毎晩日替わりのショーが開催されます。人気があるのは、お抱えのダンサーとシンガーによるプロダクションショー。なかでも、有名ミュージカルにサーカスの要素も取り入れたショー「マイ・レボリューション」では、拍手喝さいとなりました。

2階建て劇場で見るプロダクションショー

 翌朝「セブンシーズ エクスプローラー」は世界で2番目に小さな国モナコに到着。

 アメリカの俳優グレース・ケリーが、1956年、客船「コンスティテューション」に乗り、モナコ大公レーニエ3世と結婚したシンデレラストーリーはあまりに有名です。丘の上にそびえる「モナコ大聖堂」は、そのロイヤル・ウェディングが執り行われた場所でした。赤いじゅうたんの先には輝くばかりに麗しい花嫁が永遠の愛を誓った祭壇。そのすぐ横には、自動車事故により52歳で急逝したグレース公妃の埋葬所。荘厳な大聖堂で、美しくも波乱に満ちた彼女の人生が思い起こされました。

グレース公妃が眠る「モナコ大聖堂」

 実は、モナコのロイヤル・ファミリーと「セブンシーズ エクスプローラー」には深いつながりがあるのです。なぜなら、命名式典でゴッドマザーを務めたのは、モナコ公国のシャルレーヌ公妃。いわば、この船にとってモナコは記念の地なのです。しかも、今回の船着き場は、モナコのシンボル的存在「カジノ・ド・モンテカルロ」を正面に見る一等地。そこで、午後は自室のベランダをシーサイドレストランのようにするべく昼食はルームサービスを注文。パリのオペラ座も手がけた建築家シャルル・ガルニエの傑作といわれる宮殿のように立派なカジノ、世界のセレブリティーたちが集う町並み、高級ヨットが並ぶハーバーを眺めながら、コートダジュールらしい洒落(しゃれ)たプライベートランチを楽しみました。

モンテカルロの中心街を望みながら自室のベランダでランチ

 翌日は日曜日。この船にとって特別な朝がやってきました。それは、恒例のサンデーキャビアの朝食が振る舞われるからです。メインダイニングの「コンパス・ローズ」に行き、「キャビアをお願いします」というと、キャビアとイクラ、そして、ゆで卵、サワークリームのつけ合わせと共に、冷えたシャンパンがサービスされます。食べ終える頃に「おかわりはいかがですか」といううれしい申し出もありました。ビュッフェ・レストランの「ラ・ベランダ」でも屋外テーブルで、潮風と共にキャビア朝食が可能。キャビア好きには見逃せないイベントといえるでしょう。

日曜日のお楽しみキャビアの朝食

 優雅な朝食のあと訪れたのはイタリアのポルトフィーノでした。カラフルな家が並ぶ小さな漁村ですが、実は、有名人がお忍びでやってくる秘密めいたリゾートとしても知られています。沖にいかりを入れた「セブンシーズ エクスプローラー」からテンダーボート(上陸用の補助船)に乗り換え、冒険者になった気分で上陸しましたが、海側からピンクや黄色の家並みを眺めると、ここが東京ディズニーシーの「メディテレーニアンハーバー」のモチーフになった村だということに納得しました。せっかくこぢんまりしたリゾートに来たのですから、あえてツアーには参加せず、海岸線を自由に散歩。すると、澄んだ海を並んで泳ぐカモの親子や、村に鳴り響く小さな教会の鐘に癒やされた休日となりました。

ポルトフィーノのカラフルな家並み

 連日寄港地巡りが続いたので、午後は、あらためて船内探検。シャンデリアに照らされたモダンなアトリウム、重厚なシガーバー、入り口にシャガールの絵が飾られたステーキハウス「プライム7」など、どこも上品な出来栄えが印象的でした。

シャンデリアが豪華なアトリウム

 そしていよいよ最後の寄港地、イタリアのリボルノです。バスで40分ほどのところにある「ピサの斜塔」に行くツアーに参加しました。大聖堂の鐘楼として建てられたピサの斜塔は1173年に着工しましたが、脆弱(ぜいじゃく)で不均質な地盤のため、建設途中から傾き始め、その後何度も工事を中断。1372年ごろに完成したといわれています。そして、1987年、ピサの斜塔は周辺の建物と共に「ピサのドゥオモ広場」として世界遺産に登録されました。ここでの流行は、斜塔を支えているようなポーズで写真を撮ること。多くの国からやってきた観光客が思いおもいのポーズをする姿もほほ笑ましいものでした。

ピサの斜塔(右)と大聖堂(左)

 そして、午後には船からのサプライズ“ウェルカムバック”が待っていました。ツアーから帰ってきた人々を船長はじめ数十人の乗組員が列を作り、拍手と歓声で迎えるという、この船が得意としている行事です。バスから降り、おしぼりとシャンパンをもらい、赤じゅうたんを歩きながら両側に立つ乗組員から「お帰りなさい」「お帰りなさい」と声をかけられると、ツアーの疲れも吹き飛びました。高級感漂うクルーズですが、親しみやすく温かいサービスも大きな魅力です。

“ウェルカムバック”乗組員が列を作りお出迎え

 今回操舵(そうだ)室も訪問しましたが、イタリア人のロサリオ・ヴァスタ船長によれば「2016年に誕生した『セブンシーズ エクスプローラー』は、最新のナビゲーションシステムを搭載したニュータイプの豪華客船で、タグボート(引き船)のいらない機能性は大きな強みです」とのこと。

操舵(そうだ)室のロサリオ・ヴァスタ船長

 そして、23カ国の乗客と過ごした地中海クルーズのラストナイトは、胸にしみるジャズ演奏と、お別れのあいさつで、甘く、せつなく更けていったのでした。

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このクルーズの問い合わせ先
https://jp.rssc.com/

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PROFILE

上田寿美子(うえだ・すみこ)

sumiko ueda

クルーズライター、クルーズジャーナリスト。日本旅行作家協会会員、日本外国特派員協会会員。クルーズ旅行の楽しさを伝え続けて30年。外国客船の命名式に日本を代表するジャーナリストとして招かれるなど、世界的に活動するクルーズライター。旅行会社等のクルーズ講演も行う。著書に「豪華客船はお気に召すまま」(情報センター出版局)、「世界のロマンチッククルーズ」(弘済出版社)、「ゼロからわかる豪華客船で行くクルーズの旅」(産業編集センター)、「上田寿美子のクルーズ!万才」(クルーズトラベラーカンパニー)など。2013年からクルーズ・オブ・ザ・イヤー選考委員。

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