京都ゆるり休日さんぽ

睡蓮の花咲く地で、モネの絵をめでる アサヒビール大山崎山荘美術館

  • 文・大橋知沙
  • 2018年6月15日

アサヒビール大山崎山荘美術館の外観(画像提供・同美術館)

 睡蓮(すいれん)がたおやかに花ひらく季節、京都市街地から少し足を延ばし、別荘を訪れるような気持ちで訪ねたい小さなアートスポットがあります。天王山の南のふもとにたたずむ「アサヒビール大山崎山荘美術館」で、緑豊かな約5500坪の庭園と近現代建築を味わえる美術館です。琅玕洞(ろうかんどう)というレンガ造りのトンネルを抜けると、森の木立やアジサイ、ユリ、サルスベリなど夏の花に次々と迎えられ、庭園を歩いたその先に、物語に登場するような愛らしい洋館が現れます。

6~8月は、園内の池に睡蓮が花ひらく(画像提供・アサヒビール大山崎山荘美術館)

 6月から8月にかけては、敷地内の池に浮かぶ睡蓮が花ひらき、印象派の画家クロード・モネの代表作《睡蓮》の絵をほうふつさせるような情景が広がります。それもそのはず。この美術館の主な所蔵コレクションの一つは、モネの《睡蓮》。中には幅2メートルにわたる大作もあり、常設展示で鑑賞することができます。

地中館ではクロード・モネの傑作《睡蓮》を常設展示(画像提供・アサヒビール大山崎山荘美術館)

 《睡蓮》の展示室があるのは、建築家・安藤忠雄が設計した「地中館 地中の宝石箱」。半地下構造の建物は庭園の自然を取り込んで調和し、本館に続く通路や池に面した窓からも睡蓮を眺めることができます。庭の睡蓮と名画《睡蓮》を同時に鑑賞することができるのは、夏の限られた期間だけ。時間帯や天候によって表情を変える水辺の情景を見つめ、再び絵画の《睡蓮》に相対すると、モネの筆がとらえた水と光と花の印象がより鮮やかに感じとれます。

クラシカルな空間にステンドグラスが映える(画像提供・アサヒビール大山崎山荘美術館)

 実業家・加賀正太郎の別荘として大正~昭和初期にかけて建築された本館は、加賀家の家紋や地元名産のタケノコが彫刻された装飾、当時使用されていた暖炉や浴室など、加賀氏の多彩な趣味と生活の一端を垣間見ることができる建物。階段の踊り場には、ヨーロッパから取り寄せたという巨大なステンドグラスが虹色の光を映し出します。

民芸運動に関わった作家のコレクションも豊富(画像提供・アサヒビール大山崎山荘美術館)

 近代建築としても見応えのあるこの空間では、近代芸術や工芸をテーマに年数回の企画展が開催されるほか、朝日麦酒(現アサヒビール)初代社長・山本爲三郎(やまもと・ためさぶろう)のコレクションの中核である民芸作品等を常設展示。河井寬次郎、濱田庄司、バーナード・リーチなどの民芸運動ゆかりの作品群をはじめ、パウル・クレー、アメデオ・モディリアーニ、ルーシー・リー、芹沢銈介(せりざわ・けいすけ)など、20世紀の芸術・工芸シーンに大きな影響を与えた作家の作品に出あうことができます。現代の暮らしやデザインにも通じる創作の数々は、普段の暮らしの美意識を問い直すきっかけにもなりそうです。

本館2階にある喫茶室、テラス席からの眺望(画像提供・アサヒビール大山崎山荘美術館)

 すがすがしい緑と心満たすアートを存分に楽しんだら、本館2階の喫茶室で休憩を。テラス席からは桂川、宇治川、木津川を見渡す壮大な眺望が広がり、加賀正太郎が別荘から眺めた風景に思いをはせることができます。美しい自然と敬愛するアートに囲まれ、山荘で過ごす時間に、どれほど心癒やされたでしょうか。自然と建築、芸術と工芸、それらとともに営む暮らしの豊かさを、この小さな山荘の美術館は伝えてくれます。

アサヒビール大山崎山荘美術館
京都府大山崎町銭原5-3
075-957-3123
10:00~17:00(最終入館16:30)
月曜休館(祝日の場合は翌火曜、ただし2018年11月19日、26日は開館)
入館料:一般900円、高校生・大学生500円、中学生以下無料
https://www.asahibeer-oyamazaki.com

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PROFILE

大橋 知沙

編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブック、カフェ、雑貨などのムック本・書籍を中心に取材・執筆を手がけるほか、手仕事や印刷の分野でも書籍の編集に携わる。主な編集・執筆に『恋するKYOTO雑貨』(成美堂出版)、『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

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