旅空子の日本列島「味」な旅

文学の薫り高い瀬戸内の商都 広島県尾道市

  • 文・写真 中尾隆之
  • 2018年6月20日

千光寺山ロープウェイからの尾道水道の眺め

  • 「文学のこみち」の「放浪記」の文学碑

  • 寺の町を代表する名刹(めいさつ)、千光寺

  • 瀬戸内海の小魚でだしをとる尾道ラーメン

  • 瀬戸内の海の幸に恵まれた桂馬のかまぼこ

  • 志賀直哉旧居への石段坂の千光寺新道

[PR]

広島県東南部、川のように細長い尾道水道に臨む尾道は、瀬戸内航路や北前船、朝鮮使節ゆかりの港町。山陽道の要路にあり、物資の集散で栄えた商都である。

山が迫る東西に長い町は至る所に石段や坂道が。古寺社や民家が屋根を重ねるようにひしめいている。

その中に志賀直哉や林芙美子、小津安二郎や大林宣彦ら文学や映画にゆかりの地が点在。松尾芭蕉や頼山陽、正岡子規らの石碑が連なる「文学のこみち」など坂の町に文化や芸術が薫る。

駅前から歩いて、林芙美子の像を見て、土堂小学校への坂を上って持光寺、海福寺、宝土寺に参拝。米蔵に沿う急な石段坂の千光寺新道から左に入って志賀直哉旧居に立ち寄った。瀬戸内海や家並みが見下ろせる棟割り長屋に半年ほど住んで、名作「暗夜行路」の構想をここで練ったという。近くには林芙美子の書斎を再現する文学記念室もあった。

天寧寺の三重塔を仰いだあとに着いた山麓(さんろく)駅からロープウェイで千光寺山に上がった。昇るにつれてみるみる町並みと海がひらけ、展望台に立つとさらに視界が広く、左手に向島や因島を串刺しするように延びるしまなみ海道が見えた。

山上から巨岩と松の間を縫う約1キロの文学のこみちを碑文を読み取りながら下る。正岡子規の「のどかさや小山つづきに塔二つ」、志賀直哉の「六時になると上の千光寺で刻の鐘をつく。ごーんとなると直ぐゴーンと」などが点々と連なる。

ひときわ目につくのは大きな花崗岩(かこうがん)に刻まれた、尾道で幼少時代を送った林芙美子の「海が見えた。海が見える。五年振りに見る尾道の海はなつかしい」の『放浪記』の文学碑だ。

いくつかの文学碑に足を止めながら、朱塗りも鮮やかな舞台づくりの千光寺本堂に着いた。足下に山陽本線の電車が行き交い、町のさざめきも聞こえる。向島との間を行き交う自転車ごと乗れる渡船も手に取るように見えた(そうだ、向島は松山刑務所脱走容疑者の潜伏で注目された)。

山陽本線をくぐってアーケードの尾道本通りに出て、名物の尾道ラーメンを食べた。帰り道、名物のかまぼこを買って西の広島に向かう山陽本線の列車に乗った。

交通
・JR山陽新幹線新尾道駅からバス、
 またはJR山陽本線尾道駅下車

問い合わせ
・尾道観光協会 0848-36-5495
・尾道市観光課観光係 0848-38-9184

※都道府県アンテナショップサイト「風土47」より転載。

この記事を気に入ったら
「いいね!」しよう

PROFILE

中尾隆之(なかお・たかゆき)ライター

nakao takayuki

高校教師、出版社を経てフリーの紀行文筆業。町並み、鉄道、温泉、味のコラム、エッセイ、ガイド文を新聞、雑誌等に執筆。著作は「町並み細見」「全国和菓子風土記」「日本の旅情60選」など多数。07年に全国銘菓「通」選手権・初代TVチャンピオン(テレビ東京系)。日本旅のペンクラブ代表・理事、北海道生まれ、早大卒。「風土47」でコラムを連載中。

風土47

fudo47

都道府県のアンテナショップの情報を集めたポータルサイト。全国的には知られていないけれど味も生産者の思いも一級品、そんな隠れた名品を紹介する「日本全国・逸品探訪」など様々な記事が掲載されている。

今、あなたにオススメ

Pickup!