京都ゆるり休日さんぽ

夏の宵に、寄り道したくなる「蕎麦 ろうじな」

  • 文・大橋知沙
  • 2018年7月6日

夕闇が訪れる前の、まだ薄明るい夏の宵どき。街をふらりと散歩していると、不思議な名前の蕎麦屋(そばや)が目に入りました。どこか異国の言葉のようで、京都の路地(ろぉじ)も連想させる優しい響き「蕎麦 ろうじな」。格子窓をちらりとのぞけば、大きな石臼がゆっくりと回りながら蕎麦の実をひいています。

白いのれんと格子窓、「ろうじな」の小さな看板が目印

ひんやり、つるりとおなかに収まる、冷たい蕎麦は夏のごちそう。気軽に食べられるランチもいいですが、旬の味覚や酒肴(しゅこう)を順に楽しみながら「シメ」に蕎麦をいただく夕食は、大人のぜいたくです。カウンターの壁に「本日の肴(さかな)」と書かれたお品書きが並ぶ「ろうじな」は、まさにそんな蕎麦の楽しみを堪能できる店。シンプルで素材の味を生かした蕎麦と多彩な一品料理で、昼は行列のできる人気店。夜も予約がベターですが、ゆっくりと酒と料理を楽しむなら夕食の訪問がおすすめです。

「はりそば」(1,000円・税込み)

透き通った冷たいつゆ一面に、薄く輪切りにしたすだちを浮かべた「はりそば」は「ろうじな」の名物。大将の大重貴裕さんが、修業先の京都の蕎麦割烹「なかじん」から受け継いだメニューです。毎日その日に必要な分のかつお節だけを削り出して引いたダシに、白しょうゆベースのかえしを加えたつゆは、その澄んだ見た目からは想像もつかないほど風味豊か。ふわりとすだちが香り立ち、口の中にいつまでもうまみと香りの余韻が残ります。

大重さん自作の石臼も「なかじん」から譲り受けたもの

「ろうじな」の蕎麦は、つなぎを一切使用しない十割蕎麦。その時期に最も出来が良い産地の蕎麦の実を選び、自作の石臼でその日に使う分だけをひいて、毎朝打ち立て、切りたての麺を使います。中でも、はりそばの麺は、蕎麦を切るうえで特に細く仕上がる部分が選ばれており、繊細な口当たりと爽快なのどごしに、思わずうっとりと目を閉じてしまうほど。キンと冷やされたつゆの絡んだ蕎麦をすすると、心地よい清涼感が五感を満たします。

お品書きには、旬の素材を取り入れた肴がずらり

黒板に手書きされた「本日の肴」から、旬の一品を選ぶのも「蕎麦屋飲み」のだいご味。こちらは、季節替わりの「酒肴三種盛り」。この日は左から、穴子の煮こごり、明太子の湯葉巻き、万願寺唐辛子のじゃこあえ、と京都らしい食材を散りばめつつ、お酒に合う塩気の利いた3品に杯が進みます。

「酒肴三種盛り」(900円、税込み)

とうもろこしのヒゲまで味わう「ヤングコーンの天ぷら」も、ファンの多い夏の一品。コクのある綿実油(めんじつゆ)でカラリと揚げた天ぷらは、素材のうまみと衣の香ばしさを抹茶塩でシンプルにいただきます。

「ヤングコーンの天ぷら」(500円・税込み)7月末まで

アルコールのラインアップは、蕎麦に合う日本酒10〜15種類を中心に、ビール、焼酎、中にはワインを合わせる人も。「蕎麦と天ぷらだけ、という人もいますし、あれこれとおつまみを頼んで、結局蕎麦を召し上がらない方も(笑)。ちょっと“大人を気どれる”のが夜の蕎麦屋の楽しみなので、自由に食事を楽しんでもらえたら」と大重さんは話します。

カウンターのほか、奥にはテーブル席も

「ろうじな」という名前は、大重さんが店を開く前、自宅の近くにあった喫茶店「ロージナ」の響きが気に入り、京都の路地にもあやかって名付けたそう。ロシア語で「故郷」を意味しています。和のイメージからは少し外れた、どこか懐かしく、「おいでおいで」と手招きされているような蕎麦屋の名前。生ぬるい夏の夜、どこか寄り道して帰りたくなったら、ひんやりと心地よい一杯を求めてのれんをくぐってみてください。(撮影:津久井珠美)

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蕎麦 ろうじな
京都市中京区夷川通寺町西入ル北側
075-286-9242
11:30~14:00 L.O/17:30〜20:30(売り切れ次第終了)
月曜定休
http://www.roujina.jp

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PROFILE

大橋 知沙

編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブック、カフェ、雑貨などのムック本・書籍を中心に取材・執筆を手がけるほか、手仕事や印刷の分野でも書籍の編集に携わる。主な編集・執筆に『恋するKYOTO雑貨』(成美堂出版)、『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

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