「生きるレシピ」を探す旅 ―志津野雷―

心の距離感を縮める“逗子バスク勝手に姉妹都市”

  • 文・動画 志津野雷、写真 志津野雷、佐野竜也
  • 2018年7月13日

  

旅のやり方はいくつか種類があると思う。一人で全く知らない土地に行く、家族旅行、取材旅行、バカンスなど。僕自身も様々な旅をしてきたが、バスクと出会うまでは、海外の同じ場所を何度も訪れることはなかった。

  

最初の訪問で、バスクは多くの自然に囲まれ、自分たちが暮らす逗子と似ている土地だと感じた。しかし、バスクで過ごすうち、逗子には“生活をするにあたっての覚悟”みたいなものが足りないと思うようになり、そんな気持ちを抱えて日本に戻ることとなった。

そのバスクで感じた気持ちは何なのかと、整理する意味も含め、僕も運営に携わる逗子海岸映画祭「CINEMA AMIGO」で写真や映像を使ってバスクのポテンシャルについて、伝え始めることにしたのだが……。1度行っただけでは答えのきっかけすらも見いだせないままだった。

次に訪れる機会を作ったのは、アーティスト・栗林隆氏が始めた旅プロジェクト「YATAI TRIP」で。ヤタイトリップとは、“人と人とをつなぐアジアの象徴であり、内と外の間があいまいな空間に存在する屋台”を利用し、様々な境界や国境などを旅するアート・プロジェクトだ。

【動画】映像作品「BASQUING YATAITRIP」

彼にバスクを巡る企画を提案して、自分とは違った感性を持つ仲間たちと行くことで、少しずつその魅力を探ってみることにした。

  

その時に取材のテーマにもなった、かつての独立運動や現在の自治の話を聞いた。民主的かつ平和的な場所を願い、国という大きな枠でくくらず、地方のそれぞれの文化や資源を発展させ、経済的にも自立し、その先に国が成り立っていく。そのような考え方に触れることができた。

バスクの仲間たちの強くて優しい人柄の根にあるものが垣間見えてきて、ますますこれからの生き方のヒントになると感じた。

  

2013年には、日本スペイン交流400周年ということもあり、「CINEMA CARAVAN」のプロジェクトで、サンセバスチャン国際映画祭から招待を受けた。総勢20数名の仲間と共に、日本の文化を五感で体感できる野外映画館を旧市街の真ん中に出現させ、10日間で約2万人が来場してくれた。

これを行ったことで一気に「CINEMA CARAVAN」の活動がバスクで知られることとなった。

  

旅先に地元の人たちと考えを共有する場所があることは重要

  

【動画】その時の模様。「CINEMA CARAVAN in BASQUE 2013」

野外映画館はお互いの考えを共有する場として機能し、バスクの仲間とはその後も交流が続き、より関係が深くなっていった。

地元のミュージシャンを交え、映像に合わせて生演奏する

本番中は、「今の生活をよくするためのヒントをバスクから得ている」と、ようやくバスクの人たちに伝えられた

  

さらにこの街のよさは、子どもを気持ちよく受け入れてくれるところ。自分の子どもにとっても過ごしやすい環境のようで、言葉の壁などすぐに飛び越して、一気に心の距離を縮めていた。これからの未来が可能性に満ちていると感じた。

  

  

  

  

振り返ると、2011年の東日本大震災を経てから、政府の対応を待って社会に不満をためていくのではなく、自分たちの生活は自分たちで意識して変えていかないと改善していくことはなかなか難しいと感じていた。

いつかよくなることを願ってというよりも、少しでもいいから身の回りの環境を自分たちでよりよくしていきたい。

それがバスクから学んだ自立であり、生活するという覚悟なんだと、改めて思った。

バスクの人と逗子の人が幸せや価値観を共有する場を自分たちで作り、行き来することで意識を循環させていく。

自分が幸せに暮らせる場所は、小さな村みたいなもので十分なのかもしれない。

2017年9月、バスクで行われた「EU-Japan Fest」で、旅するフィルム『Play with the earth』(志津野雷監督作品)上映を終えて。(C)佐野竜也

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PROFILE

志津野 雷(しづの・らい)

写真家、シネマ・キャラバン主宰、「逗子海岸映画祭」発起人。自然の中に身を置くことをこよなく愛し、写真を通して本質を探り、人とコミュニケーションをはかる旅を続ける。ANA機内誌『翼の王国』や、ロンハーマンなどの広告撮影を中心に活動。2016年初の写真集「ON THE WATER」を発売。

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