「熊本も世界遺産なんだモン!」 くまモン、「&」編集会議に現れる

  • &編集部
  • 2018年7月20日

【動画】くまモン「&トラベル」編集会議で大暴れ

 

「くまモンが、悩んでいるそうなんです」

「&」編集部屈指の雨男・田中が、そんな話を始めたのは7月初旬だった。くまモンといえば不動の人気を誇る熊本県のナンバー3、その肩書は営業部長。悩みがあるなんて、想像つかない。でもとにかく話を聞いてほしくて「&トラベル」の編集会議に来るという。いったい、何の話……?

    ◇

木曜日15時。くまモンは朝日新聞社の受付に現れた。深々とおじぎをしてから、面会票にていねいに名前を書き、呼ばれてお迎えに出た「&」編集長辻川と熱いハグ。そのまま会議中の「&」会議室にやってきた。

&トラベル編集会議に現れたくまモン

「くまモン、今日はどうしたの?」

大喜びの部員秋田がそう尋ねると、くまモンはおもむろに太いマジックペンでスケッチブックに書いた文字を見せた。

「くまもとのせかいいさんをしょうかいにきたんだモン☆」

赤い棒で「天草の﨑津集落」の港のポスターを指す……ぜんぜん悩んでないどころか、かなり胸を張っている。

実に堂に入ったくまモン

一緒に来ていた熊本県の世界遺産推進担当主幹・宮田文さんが言葉を添えた。

「はい。今回、潜伏キリシタンの関連遺産が世界文化遺産に登録されたので、その紹介に参りました」

新聞記者経験が長い「&トラベル」副編集長星野が、思わずつっこんだ。

「……潜伏キリシタンって、長崎なんじゃないの?」

しーーーん。

くまモン、星野を吹き矢で攻撃し、ばんっ!と机をたたいて天草の地図を置き、星野の首元をつかんで地図に顔を向け、「よく見て!」とばかり、さらに地図をばんばんばん!っと9回もたたいた。震え上がった副編集長星野、「あ、く、くまもとけん、あまくさし……」。

そう、まさにそれこそがくまモンの“相談ごと”だったのだ……。 

潜伏キリシタンの痕跡が残る、天草の﨑津集落

6月30日に世界文化遺産登録が決まった「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産」。もちろん熊本県天草地方もその一部。だが、呼称が長崎から始まるため、熊本の認知度が長崎に追いついていないのでは? くまモンはそう悩んで、「&トラベル」にやってきたのだった。

関連遺産は12資産で構成されている。宮田さんは、堂々としているくまモンの隣で、説明を始めた。まず示したのは、天草の﨑津集落の港の写真だ。

﨑津集落

「構成資産は長崎県内にもたくさんあるんですけど、熊本にも天草の﨑津集落という資産があるんです。海に面したきれいなところで、小さな漁村です」

江戸幕府がキリスト教の信仰を禁じたのは17世紀はじめ。「以降、日本各地のキリシタン集落は途絶えていきましたが、天草地方においては、18世紀以降も共同体がひそかに維持され、独自の対象をひそかに拝む形で信仰が実践されていました。中でも仏教、神道とキリスト教の信仰が共存しながら残り、キリスト教布教から弾圧・潜伏、復活に至る痕跡を見ることができるのが、天草の﨑津集落です」

次に出てきたのは、貝殻の写真だった。

信心具(アワビ貝、個人所蔵)池田勉撮影

「こちらはアワビの貝殻ですが、﨑津集落は漁村ですので、こうした身近にあるものを信仰の道具『信心具』とし、線で囲ったところに聖母マリア像が見えるとして拝んでいたと伝えられています」

へえぇえええ、知らなかったー。素に戻って感心する編集部員たち。

信心具(白蝶貝メダイ、個人所蔵)池田勉撮影

「これは白い貝殻で作ったメダイ(メダル)といいまして、宣教師たちの顔を施し、通常は金属で作るものを貝殻で作って、大黒天とえびす像、そういったものを信仰の対象にしていました」

﨑津教会

「こちらは﨑津教会。潜伏キリシタンがひそかに信仰を続けていた時代には、キリスト教の教会は許されなかったのですが、大浦天主堂で『信徒発見』というできごとが起こりました。そのあと無事、信者の皆さんがカトリックに復帰されて、あちこちに教会が建てられていきました。古い教会は後に建て直され、海の近く、集落の中に溶け込むような形で教会が建っております……」

と、突然、くまモンがごろりと床に寝転がった。さらに、匂いをかぐようなしぐさ。「え、昼寝?」「おなかすいたの?」。首を振るくまモン。会議はすっかりジェスチャーゲームとなり、「いいにおいがする?」という言葉が上がったところで、宮田さんが語った。

「﨑津教会は教会には珍しく、内部が畳敷きになっているんです」

へぇえええええ。

「熊本は、い草の産地でもあるんですが、とっても香りがいい、とくまモンが言っております」

納得した誰かがつぶやいた。「あ、だからくまモン、寝てくれたんだ」

ボディーランゲージでしっかり用件を伝えるくまモンに感心する部員に向かって、くまモン、何かを書くしぐさ。え、今度はなに? くまモンに同行する女性がすかさず言った。

「ちゃんとメモっとけ! って!」

す、すみません。編集部一同、あわててメモを取りました。

  

     ◇

「長崎・天草の潜伏キリスト教関連遺産」の12資産には、大浦天主堂のように有名な施設もありますが、ほとんどは離島にある小さな集落です。全体としては地味だ、と感じる方も多いのではないでしょうか。

キリスト教関連の教会や聖堂なら、欧米でたくさん登録されています。日本にあるほかの世界遺産と比べても、姫路城のようなわかりやすさや知名度があるわけではない。とすると、どこに価値があるのか。

わかりやすく言うなら、それは「物語」にあります。キリスト教が禁じられた江戸時代、まるで仏教や神道のように見えるスタイルで禁教期を耐え忍んだ潜伏キリシタンが、250年を経た開国後に外国人神父へ信仰を告白し、カトリックへ復帰するという、劇的なストーリー性。12資産は、この類例ない信仰の歴史を雄弁に語る「証人」なのです。

﨑津集落

そう考えると、地味なのもうなずけます。「潜伏」した信仰ですから、人目についてはまずいわけです。ひっそり信仰を続けられる場所へ潜伏キリシタンは移住した、だから離島なのです。「島原・天草一揆」の主戦場である原城跡に、建物らしい建物はありません。再発を恐れた幕府が、城を破壊し尽くしたからです。「なんにもない」感じこそが、歴史的な重みを伝えているのです。

この世界文化遺産を訪ねる旅は、信仰や生活の場を歩くことになります。教会は、儀式の最中など見学できない場合もあります。旅人のための総合窓口「長崎と天草地方の潜伏キリシタン関連遺産インフォメーションセンター」は、教会の見学希望者に事前連絡を呼びかけています。

くまモンが紹介してくれた熊本・天草の﨑津集落では、地元ガイドの案内で見どころを回り、陸からは背面しか見えない「海のマリア像」を船で眺める予約制のツアーもあります。大型連休など人通りの多い時期には、住民以外は車の乗り入れができないのでご注意を。

〈崎津集落を訪ねた旅行記はこちら〉

﨑津教会周辺に広がる﨑津集落=熊本県天草市、朝日新聞社ヘリから、小宮路勝撮影

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