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中田英寿 福島を旅する<#03> 来ました、福島。―「桃」[PR]

  • 2018年7月27日

全国有数のフルーツ王国として知られる福島県。なかでも、福島を代表する果物といえば「桃」だろう。産地では福島市、伊達市などが有名だが、今回、中田英寿さんが向かったのは、伊達郡桑折町(こおりまち)。町産の桃は、25年連続で皇室献上品に選ばれている。

これまで全国各地の果樹園を視察してきた中田さんは作業の細かな行程にも興味津々。ほかの作物と桃の共通点など、南さんも感心する知識を披露していた

福島の人と自然が育んだ、極上の桃を求めて

 阿武隈(あぶくま)川沿いに延々と広がる桃畑。通称「ピーチロード」と呼ばれる一角にある南祐宏(みなみ・まさひろ)さんの農園では、「たまき」「日川白鳳(ひかわはくほう)」など6~7月上旬の早い時期に実る桃が収穫の時を迎えていた。

 これまで何度も福島を訪れている中田英寿さんだが、福島が桃の収穫・出荷量全国2位(農林水産省 大臣官房統計部 平成30年1月23日公表から)ということに驚く。

「なぜ、桃の栽培がこれほど盛んになったんですか?」

 戦後、養蚕(ようさん)業の衰退に伴い、多くの農家が果樹栽培へ転業した。とりわけ阿武隈川流域は、豊かな土壌と盆地特有の気候が桃の栽培に適していたのだと、南さんが歴史的背景を教えてくれる。

「私のところも祖父の代から桃の栽培を始め、60年になります」

 南さんの農園では16種類、約500本の桃の木を栽培している。6月末~9月までさまざまな品種が採れるが、主力品種は、福島を代表する銘柄「あかつき」だ。

桃は冷やし続けると甘みが薄れるといわれているそう。 南さんのおすすめは、常温で置いておき、食べる1~2時間前に冷蔵庫で冷やす食べ方

 福島市・信夫山羽黒神社(しのぶやまはぐろじんじゃ)の祭り「信夫三山暁(しのぶさんざんあかつき)まいり」の名に由来する「あかつき」は、昭和54年に品種登録された、例年8月上旬~中旬(気候によって変動。今年は7月末~8月上旬が見込まれている)が収穫時期の桃だ。小玉品種だったことから、全国的にはあまり栽培されなかったのだが、福島の生産者たちは、その味わいの良さに着目。栽培方法を工夫して実を大きくし、果肉が緻密(ちみつ)で甘みの強い、極上のブランド桃に育て上げた。

「生産者からすると、栽培しやすい桃でもある。実がずっしり豊満で、見栄えも良いので、贈答用としても人気の品種です」(南さん)

桑折町産の桃は25年連続で皇室献上品に選ばれている。献上桃となるのは糖度、硬さ、大きさ、色づきの基準から選別された特秀ランクの「あかつき」のみ。各農園からえりすぐりの桃が集められ、さらにそこから最高峰の桃を選び出すのだという。

 話を聞き、中田さんが身を乗り出す。

「南さんの農園では、献上桃と同グレードの桃はどのぐらい収穫できるんですか?」

「約300個、収穫量の2〜3%でしょうか」

と南さん。いまは桃づくりが楽しい——。そう言って、震災後の暮らしぶりをとつとつと話してくれた。

「桃の収穫時期は朝4時起きで畑に出る」という南さん。「雨が続くと果実も水分を吸い上げてしまい、重みで落ちてしまうため、朝と夕方、2回収穫することもあります」

 原発事故の風評で、県内の桃は販売量、価格ともに大きく落ち込んだこと。丹精込めた桃を安心して食べてもらいたい一心で、桃の木1本、1本の除染を徹底したこと。除染で弱ってしまった木を植え替えながら、黙々と桃を育て続けたこと。震災から7年を過ぎたいま、販売価格も以前の水準まで回復。アジアなど海外への輸出も伸び、励みになっていると南さんは言う。

「食の安全・安心に対する我々、生産者の取り組みが評価頂けている結果でもある。おいしいというお声を頂くたびに、報われたような気持ちになるんです」

 照れたように笑う南さんに、「あかつき」を食べられるのを楽しみにしていますと力強く告げると、中田さんは笑顔で農園を後にした。

実りの時を迎えた南さんの農園。色鮮やかな果実に彩られた桃畑では、風が吹き抜けるたび、甘い香りが鼻をかすめる

福島県中通り地方の北部、福島市と伊達市に隣接する桑折町。町の南東を流れる阿武隈川沿いは、桃の名産地として有名。花の季節にはあたり一帯が桃色に染まることから「こおり桃源郷」とも称されている

    ◇

中田英寿(なかた・ひでとし)

1977年山梨県生まれ。ドイツW杯を最後にプロサッカー選手を引退した後は、世界各地を歴訪。日本全国47都道府県を巡る旅を経て、伝統文化・工芸を支援するプロジェクト「REVALUE NIPPON PROJECT」を立ち上げる。15年には、株式会社JAPAN CRAFT SAKE COMPANYを設立。日本酒の魅力、楽しみ方を国内外に発信する活動に取り組む。

◆福島県公式Facebook

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