楽園ビーチ探訪

沖にぽつりと浮かぶ灯台に泊まる クロアチア・ロビニ

  • 古関千恵子
  • 2018年7月26日

サンセットクルーズの観光船に乗せてもらい、灯台へ

2018サッカーワールドカップ(W杯)ロシア大会で準優勝に沸いたクロアチア。世界遺産のドブロブニクをはじめ、アドリア海に面した美しい港町をいくつも抱える南ヨーロッパの国です。

クロアチア北部のイストラ半島は地中海沿岸、古代ローマの名残をとどめ、内陸部は丘陵地帯が広がる、いくつもの顔をもつエリアです。そんな多面的な魅力から、訪れた人々を魅了してきました。ことプーラという中心都市は、ギリシャ神話の黄金の羊毛伝説ゆかりの地で、ダンテの『神曲』にも登場することで知られます。この地には何か不思議な力が宿っているようです。

周囲を360度海に囲まれた岩礁にぽつりとたたずむスベティ・イバン灯台

プーラほどは栄えていないものの、イストラ半島のロビニも旅行者に人気が高い港町です。丘の上から18世紀に建造されたバロック様式の聖エウフェミア教会が町を見守り、旧市街ではすり減った白い石畳の路地が入り組んでいます。どこかに、ジブリ作品の『魔女の宅急便』のキキが歩いていそうな雰囲気。

シュノーケリングセットを持ってくればよかった! と反省した、海の透明度の高さ

クロアチアには誰でも泊まることができる灯台が11カ所はあり、そのひとつがロビニ沖のスベティ・イバン灯台。岬の突端のような陸続きではなく、洋上にポツンと浮かぶ岩礁にあります。灯台へは観光船がサンセットクルーズのついでに送ってくれました。

1853年に建造された灯台。月日を感じます

オレンジの瓦屋根に石れんがを積んだ壁のスベティ・イバン灯台は、1853年に建てられた歴史的な建物。1階に執務室と宿泊用の2ベッドルーム、2階にも宿泊用1ベッドルーム&2段ベッドの部屋があり、そして灯台守の部屋からなります。

ライトを囲む2枚のフレネルレンズが回転して光を放っていました

居住スペースは暮らしやすいよう、改装されていますが、らせん階段を上る塔の内壁は過ぎた年月を吸い込んだような岩壁です。てっぺんまで上ると、ジーとタイマーが機械音を立てる中、巨大なフレネルレンズが規則的に回転しています。その光の強烈なこと! レンズの周囲の窓ガラスはあちこちに鳥のフンが糸を引くように垂れ、その向こうに夕日に染まって刻々と色の変わるアドリア海が広がっています。灯台から眺めるサンセット、なかなか貴重な体験です。

灯台内には入ってはいけない場所もあります

シンプルな客室。Wi-Fiはないけれど、テレビはあります

ただ、困ったことが3つありました。

まず、手ぶらで来てしまったため、食べ物がありません。キッチンがついているので、宿泊客は通常、自炊をするのだそうです。そしてゲストは私しかおらず、灯台守のおじさんと二人きりで一晩過ごさなくてはなりません。しかも彼はクロアチア語しか話せません。

食事は、おじさんの貴重なチーズ数切れと手作りのお酒を分けてもらい、一緒にテレビを見ながら、ちまちまと酒盛り。コミュニケーションの手段は絵です。決して絵心があるとはいえないけれど、どうにか会話は成り立つもの。彼は月の半分を灯台で過ごし、残りの半分はプーラの町で奥さんと二人暮らしだそう。でも、ここにいる時は独身なのだ、と主張。そして酔っ払って「ワルツを踊りたい」的なことをアピールしてきましたが、そこはわからないフリ。あやしい空気はすべて「わかんなーい」と日本語でうっちゃり。

灯台は止まり木なのか、多くの海鳥たちが羽を休めにきます

翌朝、ウミネコの鳴き声で目を覚ましました。ベッドから抜け出て観音扉の窓辺に立つと、目の前には光り輝くアドリア海の水平線。窓のすぐそばで警戒心のない数羽のウミネコが休んでいます。部屋を振り返ると、海風に揺れる木綿のカーテンを通して、朝日がベッドの上に躍っていました。リゾートではない、海の暮らしがそこにありました。こんな朝を、灯台守のおじさんは月の半分、ひとりで迎えているのか……。うらやましいような、寂しいような。旅行者にはうかがいしれない心境でしょうね。

Lighthouse of Croatia
https://www.lighthouses-croatia.com/

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PROFILE

古関千恵子(こせき・ちえこ)ビーチライター

リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信する自称「ビーチライター」。ダイビング雑誌の編集者を経てフリーとなり、“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”を繰りかえすこと四半世紀以上。『世界のビーチ BEST100』(ダイヤモンド・ビッグ社)の企画・執筆、『奇跡のリゾート 星のや 竹富島』(河出書房新社)の共著のほか、ファッション誌(『Safari』『ELLE Japon』など)やウェブサイトに寄稿。http://www.world-beach-guide.com/では、日々ニュースを発信中。

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