京都ゆるり休日さんぽ

夏休みの思い出がよみがえる 京都「梅香堂」のかき氷

  • 文・大橋知沙
  • 2018年8月3日

炎天下の街を歩きながら、店の軒先に「氷」の文字を見つけたときの喜びといったら。うつわからこぼれんばかりに盛られたふわふわの氷を想像するだけで、不思議と一瞬、ひんやりとした風が通り抜けたような気持ちになるものです。この時期、昼過ぎになると人気の甘味処はどこも行列。汗をぬぐい、扇子をあおぎ、時折ふぅとため息をつきながらも、待ちわびた先にある甘く冷たい氷の誘惑に心が躍ります。

「フルーツミルク氷」(850円・税込み)

もみじの名所・東福寺や、楊貴妃観音像で知られる泉涌寺からもほど近い、今熊野商店街にある甘味処「梅香堂」。こちらの「フルーツミルク氷」は、すいか、メロン、みかん、パイナップルなど、季節のフルーツがざくざく埋まったみずみずしいかき氷。練乳を自家製シロップで割ってやさしい甘さに仕上げたミルクが、フルーツの酸味や食感を引き立てる、懐かしい味わいです。

アルバイトの女性が描いてくれたというメニュー

「最初は抹茶や黒糖、あんこをつかったかき氷ばかりだったんです。でも、大人はそういう氷が好きやけど、お子さんはあまり好まないでしょう? 子どもさん向けにフルーツをつかった氷を出せないかと思ってできたのが、このかき氷なんです」

笑顔がチャーミングなおかみの平岡千賀子さん

そう語るのは、おかみの平岡千賀子さん。確かに、このフルーツミルク氷は、どこか夏休みの子どものおやつのような、素朴な味わいです。てっぺんに鎮座するソフトクリームのボリュームが、おかみさんのサービス精神を物語るかのよう。氷の山から好物のフルーツを発掘する子どもの笑顔が目に浮かびます。

今熊野商店街の端。隣には公園、後ろには学校がある

観光客はもちろん、付近には学校や公園もあるため、地元の人々や子どもたちも気軽に立ち寄ります。約40種類もの味わいのかき氷と、自家製あんこが自慢の甘味、ソフトクリームのテイクアウトもあるため、今熊野商店街ではオアシスのような存在。真夏の昼下がりともなれば、ひんやり冷たい甘味を求めて、多くの客が列を作ります。「全部で何種類あったかな?」とおかみさんも笑うほど多彩なメニューは、「お客さんが喜んでくれはるから」と自然と増えていったのだとか。

「小倉抹茶ゼリーパフェ」(830円・税込み)

かき氷と並んで人気なのが、こってりとした抹茶色が濃厚さを伝える「小倉抹茶ゼリーパフェ」。地元の抹茶をたっぷりと使った抹茶ゼリーに、白玉やソフトクリーム、十勝産の大粒あずきをふっくらと炊き上げたあんこをトッピングした、甘味好きにはたまらない一品。ほろ苦さをしっかり残した抹茶ゼリーがソフトクリームやあんこと絶妙なバランスをとり、大人の甘さを感じさせます。そんなパフェのメニューも10種類以上。

行列回避には、比較的空いている午前中が狙い目

1953(昭和28)年に、平岡さんの両親がはじめた和菓子屋が、梅香堂のスタート。10年ほどのちに喫茶室を併設し、地元の人々に愛されるようになりました。最初はホットケーキとソフトクリームだけだったメニューが、常連客のリクエストに応え、喜んでもらえるとまた新メニューを考え出し……と繰り返すうちに、これほどのラインアップに。愛らしいかき氷やパフェがぎっしりと並んだ手描きのメニューからうれしそうに食べたいものを選ぶ修学旅行生もいれば、甘味ではなくコーヒーを飲みに訪れる常連客もいる。そんな日々が、商店街の片隅で紡がれてきた梅香堂の物語です。

三世代で通う常連客もいるほど、地元でも愛されている

かき氷激戦区の京都では、毎夏、さまざまな店から斬新なかき氷が登場します。梅香堂のかき氷は、旅する人、暮らす人の声を取り入れ、数え切れないほどの種類を増やしてきたけれど、見たことも聞いたこともないような奇抜なメニューはありません。その代わりに、キーンと冷たい甘さの後に味わえるのは、いつかの夏休みに夢中で食べたような、遠く懐かしい夏の記憶。スペシャルなスイーツ氷もいいけれど、真夏の昼下がりにセミの声を聞きながら思い出すのは、そんなかき氷の味です。(撮影:津久井珠美)

梅香堂
京都市東山区今熊野宝蔵町6
075-561-3256
10:00〜18:00(L.O17:30)
火曜定休(8月は火曜も営業、28日のみ休)
https://twitter.com/baikoudo

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PROFILE

大橋 知沙

編集者・ライター。東京でインテリア・ライフスタイル系の編集者を経て、2010年京都に移住。京都のガイドブック、カフェ、雑貨などのムック本・書籍を中心に取材・執筆を手がけるほか、手仕事や印刷の分野でも書籍の編集に携わる。主な編集・執筆に『恋するKYOTO雑貨』(成美堂出版)、『京都手みやげと贈り物カタログ』(朝日新聞出版)、『活版印刷の本』(グラフィック社)、『LETTERS』(手紙社)など。自身も築約80年の古い家で、職人や作家のつくるモノとの暮らしを実践中。

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