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殿様の肝いりから藩政を救った品まで 城下町グルメ(2)

  • 文・写真 城郭ライター 萩原さちこ
  • 2018年8月6日

新潟県村上市の村上城下町にある「千年鮭(ざけ) 井筒屋」。松尾芭蕉が2泊した国の登録有形文化財となっている旅籠(はたご)を改装し、塩引き鮭をはじめとした「千年鮭 きっかわ」の伝統鮭料理をいただける食事処になっている

幕末の書物にも描かれている、岡崎の特産品・八丁みそ。八丁みそと呼ばれるのは、岡崎城(愛知県岡崎市)から西へ八丁、870メートルほど離れた八丁村(現在の岡崎市八帖町)でつくられたみそだからだ。

八丁村一帯は、東海道と矢作川の水運が交わる交通の要所だった。八丁土場という船着き場から流域で収穫された良質な素材を調達し、できあがった八丁みそを出荷した。長期保存ができるため、兵糧として岡崎藩に保護されたこともあり、岡崎の地場産業のひとつとして発展していった。

みそ蔵は東海道をはさんで並んでいたため、街道を往来する参勤交代の武士や伊勢参りの参拝客の間で評判となり、やがて江戸にも出荷されるようになったという。現在でも「カクキュー」「まるや」の2軒のみそ蔵があり、変わらぬ製造を続けている。

さかのぼれば、戦国時代には三河兵士の兵糧として珍重されたようだ。織田信長が今川義元を破った1560(永禄3)年の桶狭間(おけはざま)の戦いでは、徳川軍の“戦陣にぎり”としてみそが食糧になったといわれている。

徳川家康が生まれた城として知られる岡崎城。現在見られる城の原型は、豊臣秀吉の家臣・田中吉政が築いた。城下町を整備して東海道を城下に引き入れ、矢作川の改修工事も吉政が行った

八丁みその特長は、極力水分を少なく仕込み、長期間熟成すること。手間と時間がかかるものの保存性にすぐれている

みそといえば、客人に自ら料理を振る舞うほどの腕前だった伊達政宗が、兵糧として開発したのが仙台みそだ。豊臣秀吉が全国の諸大名を出兵させた1592(文禄元)年からの文禄・慶長の役(朝鮮出兵)の際、政宗が持参したみそは夏場でも腐敗・変色せず、質の良さが評判になったという。

関ヶ原合戦後、政宗は仙台城を築き、城下に敷地900坪の御塩噌蔵(ごえんそぐら)という設備をつくった。いわばみそ工場で、常陸(ひたち)から招いた真壁市兵衛を中心に醸造を開始したという。仙台みそは米こうじを使用した辛口の赤みそで、塩分が11〜13パーセントと高めなのが特徴だ。

仙台城は、仙台平野を見下ろす青葉山に伊達政宗が築城。天守の代わりに、千畳敷といわれる大広間が建造された。仙台名物のずんだもちは、政宗が考案したという説もある

江戸時代には、倹約による郷土料理も多く生まれた。たとえば、備前ばらずし。隠しずしともいわれるこの料理は、魔法のようなすしだ。錦糸(きんし)卵が一面に載せられた、一見質素な料理だが、ふたをしてひっくり返すと、瀬戸内の海の幸や山の幸がふんだんに盛られた豪華なすしに変身するのだ。

からくりが潜んだ遊び心のあるこのすしは、備前岡山藩主の池田光政がぜいたくを禁止し「食事は一汁一菜」と命じたのが誕生のきっかけと伝わる。質素倹約の政策に反発した庶民の心意気とユーモアが詰まったこの郷土料理は、岡山駅周辺の飲食店で味わえるほか、駅弁にもなっている。ぜひご賞味を。

岡山城は、宇喜多秀家が築城した。1632(寛永9)年、31万5千石で池田光政が入封。天守は1945(昭和20)年に空襲で焼失し、1966(昭和41)年に再建された

一方、藩政を救った城下町名物もある。新潟県村上市で食されている鮭料理だ。軒先に鮭を風干しする「塩引き鮭」は、村上の冬の風物詩でもある。村上は平安時代から鮭との関わりが深く、江戸末期に成功させた三面川(みおもてがわ)の鮭の自然ふ化事業は世界初とされる。漁獲高が飛躍的に増えて村上藩の財政を救ったことから鮭が尊ばれ、頭や皮、中骨や白子などもすべて食べ尽くす食文化がある。

鮭料理の種類は、100種類以上に及ぶ。色とりどりで目にも鮮やかだ。これだけ鮭づくしだと飽きそうな気もするが、料理によって別の食材のように味わいが異なり、奥深さに驚く。村上の銘酒、大洋盛や〆張鶴とともにどうぞ。

「千年鮭 井筒屋」でいただける、伝統の鮭料理。塩引き鮭のお茶漬けもついた鮭料理(2品・7品・10品・13品・18品・21品)などが味わえる。発酵させた飯寿司(いずし)のほか、寒風干しの白子、肝臓を煮たもの、背わたの塩辛など。目にも美しく、味のバリエーションに驚く

村上城。中世には本庄氏の山城として機能し、近世になると石垣が積まれ天守櫓(やぐら)が建つ城へと大改造された。両時代の遺構がよく残る

(つづく。次回は8月13日に掲載予定です)

#交通・問い合わせ・参考サイト

■岡崎城
名鉄「東岡崎」駅から徒歩15分
https://okazaki-kanko.jp/okazaki-park/feature/okazakijo/top(愛知県岡崎市公式観光サイト)

■仙台城
JR「仙台」駅から観光シティループバス(るーぷる仙台)「仙台城跡」バス停下車
http://www.city.sendai.jp/shisekichosa/kurashi/manabu/kyoiku/inkai/bunkazai/bunkazai/joseki/(仙台市)

■岡山城
JR「岡山」駅から岡電バスまたは両備バス「県庁前」バス停下車、徒歩5分
https://okayama-kanko.net/ujo/(「岡山城」公式ホームページ)

■村上城
JR「村上」駅から徒歩約25分
http://www.city.murakami.lg.jp/site/kanko/oshiroyama.html(村上市)

■千年鮭 井筒屋
JR「村上」駅から徒歩約20分
https://www.murakamiidutsuya.com/

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PROFILE

萩原さちこ(はぎわら・さちこ)城郭ライター、編集者

萩原さちこ

小学2年生のとき城に魅了される。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演、講座などをこなす。著書に『わくわく城めぐり』(山と渓谷社)、『戦国大名の城を読む』(SB新書)、『日本100名城めぐりの旅』(学研プラス)、『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)、『図説・戦う城の科学』(サイエンス・アイ新書)など。webや雑誌の連載多数。
http://46meg.com/

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