楽園ビーチ探訪

アジサシとウミガメのサンクチュアリ セーシェルのバード島

  • 古関千恵子
  • 2018年8月9日

島には7つのビーチが点在しています。ここはサンセットに訪れたい、ロッジ近くのウェストビーチ

西インド洋に浮かぶ115の島からなる、英連邦の島嶼(とうしょ)国家セーシェル。バード島は群島の中でも北部に位置し、国際空港のあるマヘ島から約105キロの場所にあります。3000年かけてサンゴが堆積(たいせき)して誕生したという島で、約5キロの白砂のビーチがあります。この島にある宿泊施設は、「バードアイランドロッジ」というファミリー経営の一つのみ。でも、いわゆる1島1リゾートとは、だいぶ事情が異なっています。

マヘ島から小型機で約30分

芝生の滑走路に降り立った小型機から歩いてメイン棟へ。ゲストの脇を、スーツケースを乗せたトラクターがゆっくりと通過していきます。これが、島にある動く唯一の自動車。どこへ行くにも徒歩が基本です。メイン棟では到着したゲストが、島での過ごし方の説明を受けます。

振ることで発光する懐中電灯を渡され(外にあかりがないため)、日没後はロッジのカーテンを閉め光が漏れないようにとのこと。夜間、できるだけ島に人工の明かりをなくすための配慮です。これは、産卵のため上陸したアオウミガメが海への帰り道を間違えないため、島に暮らす生物たちの気を散らさないため、そしてゲストが南半球の満天の星を満喫するため。自然界で電灯は、当たり前ですが不自然なものなのです。

各ロッジの前にはテラスが。鳥たちも遊びにやってきます

この島の記録は1771年に始まります。「イーグル号」の船長が「ビーチには数えきれないほどの鳥と多くのジュゴンがいる」と報告し、バード島と名付けたそうです。現在のオーナーが島を購入したのは1967年、それから6年後にこのロッジはスタートしました。開業当初から積極的に取り組んだ環境保護のおかげで、今では鳥とカメの楽園となっています。

木陰に隠れていたシロアジサシ。真っ黒なつぶらな瞳がキュートです

バード島で確認されている鳥類はおよそ100種。ハイライトは、春から夏にかけてのセグロアジサシの巨大繁殖地です。

3月ごろからセグロアジサシは上空に姿を現し、旋回を始めます。4~5月ごろに北部のビーチへ上陸、巣作りを始めます。その数なんと、150万羽! ビーチは文字通り足の踏み場もないほど鳥、鳥、鳥の状態になります。6月に卵を産みはじめ、およそ1カ月後にはふわふわのうぶ毛のヒナたちが誕生。親鳥が子育てに励むこと約60日、やがて巣立ちの日がやってきます。

セグロアジサシの巨大繁殖地。6月ごろから巣作りが始まり、北部のビーチは立ち入りが禁止になります©Bird Island Lodge

セグロアジサシに限らず、鳥たちはこの島でのびのびと暮らしています。テラスでなごんでいると欄干にカップルのアジサシがやってきたり、庭を散策していると木の根部分に卵を抱えているお母さん鳥を発見したり。頭上を見上げると、シラオネッタイチョウが長い尾をたなびかせながら、優雅に舞ったりしています。

卵を抱えている親鳥。バード島へは鳥図鑑必携です。一体この子の名前は……?

島で1995年から取り組んでいるウミガメ保護プロジェクトでは、これまでに350以上のタイマイとアオウミガメを記録し、タグ付けとモニタリングが行われています。そして島の人気者はアルダブラゾウガメのエスメラルダ(実はオスです)。推定200歳といわれる巨大なカメで、1989年に王立動物学会が体重を測ろうとしたところ、298キロを差して体重計が壊れてしまったという逸話が残っています。

島内では20頭以上のアルダブラゾウガメが自由に歩いています

24棟のロッジにはテレビも、電話も、冷蔵庫も、エアコンもありません。電力はできるだけ最小限にとどめたいから。スパはもちろん、プールもありません。けれど、本当のぜいたくは何なのか、気づかせてくれるリゾートです。

バードアイランドロッジ
https://www.birdislandseychelles.com/

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PROFILE

古関千恵子(こせき・ちえこ)ビーチライター

リゾートやカルチャー、エコなどを切り口に、国内外の海にフォーカスした読み物や情報を発信する自称「ビーチライター」。ダイビング雑誌の編集者を経てフリーとなり、“仕事でビーチへ、締め切り明けもビーチへ”を繰りかえすこと四半世紀以上。『世界のビーチ BEST100』(ダイヤモンド・ビッグ社)の企画・執筆、『奇跡のリゾート 星のや 竹富島』(河出書房新社)の共著のほか、ファッション誌(『Safari』『ELLE Japon』など)やウェブサイトに寄稿。http://www.world-beach-guide.com/では、日々ニュースを発信中。

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