あの街の素顔

桃づくし、岡山市内の今を巡る夏旅

  • 文・写真 干川美奈子
  • 2018年8月17日

岡山駅前の桃太郎像。ここからまっすぐ続いていくのが桃太郎大通り

<倉敷・美観地区の今を歩く、岡山の夏旅から続く>

パティシエ歴3年目が考案した白桃デザート、「ホテルグランヴィア岡山」

翌日散策したのは岡山市内。ちょうど岡山県が収穫量1位を占める「清水白桃」のシーズンだったため、桃スイーツを探しながら、関わる人に話を聞くことにした。

ホテルグランヴィア岡山のパティシエ、吉村有菜さん

この夏にさまざまな白桃のスイーツを提供している、JR岡山駅に併設する「ホテルグランヴィア岡山」に行ってみた。まず、1階の「ロビーラウンジ ルミエール」で目についたのは「岡山白桃と島根ワインのコンポジション オリーブオイルの香り」(1200円)。

「甘いスイーツにオリーブオイル!? どんな味になるのか……?」と考えていたところ、考案者であるパティシエの吉村有菜さんが説明に来てくれた。

「下から、スポンジ、レモンとオリーブを混ぜた生クリーム、レモンとバニラを加えた白桃のコンポート(果物を煮たもの)で層を作ります。中央に生クリームとクラム生地(スポンジを粉状にしたもの)を乗せて、マシュマロで作った結び目を飾りました。周りを赤すぐりと島根ワインのジュレで囲みました」

岡山県産の白桃と島根産ワインを用いたデザート。トップに飾ったマシュマロの結び目は、二つの県を結ぶという意味合いと、縁結びの願いを込めた

吉村さんは今年でパティシエ歴3年目。初めて自分で考えたメニューが商品になったという。「社内のコンテストでさっぱりとした夏のデザートを作ろうと、当初、グラスに入れた白桃のショートケーキを考案しました。それを先輩たちに意見してもらいながら改良したのがこちらです」。

食べてみると、マシュマロも桃のコンポートも、スポンジも、生クリームも、やわらか。レモンにオリーブオイルがふっと香るので、軽い食感を楽しめる。

「オリーブオイルとレモンが合う、レモンと桃が合う、じゃあ、これを組み合わせたら面白いと思いました」。作っていて難しいところは、熟れ具合によって煮詰め具合を調整し、仕上がりの食感を統一することだという。吉村さんが考案したデザートは、8月31日まで食べられる。

岡山駅からは路面電車が運行している

黒いカクテル? 岡山城をイメージした創作カクテルのお味は? 「華伝座」

華伝座のバーテンダー、野﨑心也さん。日本酒にも力を入れているそうだ

今年9月に11年目を迎える「華伝座(カデンツァ)」は、岡山城近くにひっそりとたたずむバーだ。昼の12時から営業しているので、休日は特に早い時間からにぎわっている。

男女問わず、ほとんどの客が頼むのがフレッシュフルーツを使ったオリジナルカクテルだ。カウンターには岡山産を中心に、旬のさまざまなフルーツが並ぶ。

白桃を使ったカクテルをオーダーしたところ、店主でバーテンダーの野﨑心也さんが運んできてくれたのは、グリーンに黒が混ざったカクテルの上に、白桃が乗った「ウジョウ カイピロスカ」(税込1200円)。

県内産の白桃を使ったカクテル。くどさはなく、さっぱりした味わい

「黒いカクテル!?」と恐るおそる口に含んでみると、ライムがきいてさっぱりとした味だった。上にたっぷりとのるフレッシュな白桃と一緒に口に含むことで、よりあっさりと爽やかな印象になる。

「ウォッカとライムで作るカイピロスカというカクテルに、食用の炭で色付けして、白桃とミントをトッピング。岡山城をイメージして、黒いカクテルに仕上げました」

“烏城(うじょう)”とも呼ばれる岡山城は、天守閣の壁が黒いのが特徴。そこでカクテルも黒かったわけだ。

実はこのカクテルが出てくる前に、お通しが提供されていた。真っ赤で光沢感のあるスイーツだ。

この日のお通しで提供されたスイーツ

「一番下が黒コショウのサブレ、その上にチェリーとトマトを使ったパルフェ、その上にアーモンドプラリネのクリーム、一番上にチェリーのフィルムを乗せたスイーツです」

作ったのは、パティシエの大滝章弘さん。同店では今年2月から大滝さんが加わり、お通しにフレッシュフルーツを使ったスイーツを提供しているという。

見た目のインパクトがあまりにも大きすぎて写真を撮り続けていたら、パルフェとトップのフィルムがどんどん溶けてきてしまい、あわてて食べた。すると、フィルムからプラリネクリームまでの甘さとやわらかな食感、サブレのサクサク感、ピリッと効いたコショウが口の中で合わさった。強めのコショウの刺激が、スイーツをくどくし過ぎずに口の中に残り、カイピロスカにも桃にも調和していた。

カウンターのほか、テーブル席もある。店を出ると岡山城が見える

ワインや蒸留酒などにも合いそうな、甘すぎない大人のスイーツに感激しつつ、お通しとはいえ、これは値段が高いのではと心配していたところ、「スイーツはお通しで提供しているので500円です」と価格設定にも驚いた。「材料を使いきったら同じものは出しません。常連のお客様が毎日来店されても同じものは出さない、一期一会です」。

お酒もお通しも、スイーツ好きにはたまらない。再訪が楽しみになるバーを見つけて、うれしくなった。

岡山城と岡山後楽園の8月限定イベントに急げ

岡山城のお堀

「ウジョウ カイピロスカ」とスイーツの余韻に浸りながら最後に向かったのは岡山城だ。確かに天守閣の壁は真っ黒だった。

真っ黒の外観が象徴的な岡山城天守閣

岡山城天守閣の小泉茂樹館長

岡山城天守閣の小泉茂樹館長に見どころを聞くと、「年齢や国籍問わず、幅広く人気なのが、備前焼作りや着付けコーナーです。1階は備前焼工房(有料)があり、器や箸置きなど、さまざまなものが作れます。2階は1日5回、先着各5名の方に無料で姫や殿になれる着物の着付けをします。ほかに甲冑(かっちゅう)や文書などの展示のほか、城を囲む石垣などは当時のものですから、歴史好きな方が熱心にご覧になっていますね」。

館内には備前焼工房、人数限定で姫や殿になれる着付けコーナー、大名籠に入っての撮影スポットもある

岡山城と岡山後楽園では、8月は毎日、ライトアップイベントを開催中だ。岡山城では夜の特別開館「夏の烏城灯源郷」を、岡山後楽園では「幻想庭苑」と題し、通常は岡山城天守閣のみの夜間照明が、天守閣前広場や岡山後楽園を含めてキャンドルや照明でライトアップされ、さまざまなイベントが行われる。岡山城天守閣や岡山後楽園の入場も21時まで延長(21時30分閉館)されるので、日中倉敷などを巡ってから、夜に岡山城や岡山後楽園を回ることもできる。

天守閣から旭川をはさみ、岡山後楽園が見える

岡山市内各地で7月から開催中の「桃ジュースが出る蛇口」も、残りは岡山後楽園のみになった。こちらは土日のみ、日中のイベントで、桃ジュースが出てくる蛇口が設置され、自分でカップにジュースを注いで飲むことができる。8月前半に岡山城天守閣で行われた際の様子を後日主催者から聞いたが、偶然居合わせた家族連れや外国人客もいて、大いに盛り上がったそうだ(岡山城での開催は終了している)。

蛇口から桃ジュースが出てくる!

【動画】蛇口をひねると、つぶつぶ果肉が入った桃ジュースが!

このイベントはフルーツをテーマにした“観光キャンペーン2018「おかやま果物時間」”の一環で、8月18日、19日、25日、26日は岡山後楽園で開催する。1日3回(14時、16時、18時)、各回先着100名が無料で参加できる(整理券は開催時刻の15分前に配布、岡山後楽園入園料は必要)。

動画は岡山駅のTARO’Sスクエアで行われた際のもの。開催時間の30分前から整理券を求めて並ぶ人たちの姿が目立ち始めた。蛇口中央の留め具も桃型になっていて、細部にまでこだわりを感じた。果肉のつぶつぶ食感も感じられるジュースは、甘くて少し冷たくて、暑さを吹き飛ばしてくれた。

蛇口にも桃を発見!

城下町の面影や文化が残る、岡山市、倉敷市への旅

2日間で倉敷の美観地区と岡山市内を初めて歩いて、盛りだくさんの体験をした。その中で岡山城天守閣の小泉館長に聞いた話が、この旅を締めくくる言葉として、私にはしっくりときた。小泉館長は広島で生まれ、福岡や首都圏でも仕事をしてきたが、夫婦で岡山が気に入り、移住7年目を迎える。

旭川にかかる橋からも岡山城を望める

「岡山は、野菜、果物、お米や肉、魚もおいしく、クオリティーは高いのにリーズナブルな飲食店が多くあり、妻も私も気に入ってしまったんです。岡山の名前の由来は岡山城の立つ丘が『岡山』と呼ばれていたからなのだそうです。周辺を流れる旭川の流れを変えて守りを強固にし、城下町が造られていきました。その街並みが今も残っていて、備前焼や革製品のお店も点在して、町を歩いていても楽しいですよ」

確かに、グランヴィア岡山・パティシエの吉村有菜さんや華伝座の大滝章弘さんをはじめ、ふらりと入った飲食店での食材の組み合わせが絶妙だったり、町のさまざまな場所で絵画が飾ってあったりと、町歩きが楽しい土地だった。

最後に小泉館長から読者への呼びかけのメッセージもいただいた。「西日本豪雨災害により、私たちも7月7日と8日は休館せざるをえませんでした。岡山に行って楽しむのは失礼なのではないか、そう思われて旅の行き先を変更されている方も多いと思います。岡山城も日本人のお客様の来館は例年より減ってしまいましたが、被災されて大変な思いをされている方をしっかりと応援することが第一です。岡山城でも義援金を受け付けています。岡山・倉敷などの観光地へも、ぜひともお越しください」。

岡山駅前の郵便ポストの上に桃太郎のオブジェを発見。筆を持っている

■取材協力
ホテルグランヴィア岡山
華伝座(カデンツァ)
岡山城
おかやま果物時間

PROFILE

干川美奈子

干川美奈子(ほしかわ・みなこ)
編集者・ライター
10代後半から英語が公用語でない国を中心に海外チープ&ディープ旅をスタート。情報誌、海外ウェディング誌、クルーズ専門誌、女性向けビジネス誌などで旅記事を執筆。「プレジデントFamily」「プレジデント」をはじめとした編集部在籍経験を活かし、普段はビジネス、芸能、マネー、子育て、インタビューなど、雑誌・WEBの一般記事の編集・執筆に携わる。

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