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現存御殿の見どころと特徴 城の御殿(2)

  • 文・写真 城郭ライター 萩原さちこ
  • 2018年9月10日

二条城二の丸御殿

<復元模写に注目したい、名古屋城の本丸御殿 城の御殿(1)>から続く

城の御殿において、名古屋城本丸御殿と双璧といえるのが二条城(京都市)の二の丸御殿だ。全国に4棟しか残っていない城の御殿のなかでも、もっとも絢爛(けんらん)豪華。残存度も高く、「古都京都の文化財」を構成する歴史的建造物のひとつとして世界文化遺産にも登録されている。名古屋城本丸御殿と同様に、徳川将軍家にとって特別な御殿だった。

二条城は、徳川家康が征夷大将軍の任命式典の際に築いた城だ。当時の二条城は現在の二の丸御殿が収まる程度の広さだったと考えられているが、これを、1626(寛永3)年に3代将軍・家光が後水尾天皇の行幸のために大改築。現在の二の丸御殿も、そのときに建造された。

玄関にある欄間(らんま)彫刻。表裏でデザインが異なる。表には五羽の鸞鳥(らんちょう)や松や牡丹(ぼたん)が、上部には雲、下部には笹が彫られている

徳川幕府が威信をかけて建てた御殿は、美と様式美の極み。武家風書院造で、玄関にあたる「車寄(くるまよせ)」を入ると、大名の控えの間である「遠侍(とおざむらい)」、大名が老中職にあいさつし、献上品を取次いだ「式台」、将軍が諸大名と対面する「大広間」、大広間と黒書院を結ぶ「蘇鉄(そてつ)之間」、将軍と親藩・譜代大名が対面する「黒書院」、将軍の居間と寝室である「白書院」と、6棟で構成される。

小堀遠州の作庭と伝わる二の丸庭園も、御水尾天皇行幸の際に改修されたとみられる。二の丸御殿大広間上段の間、黒書院上段の間など三方向から鑑賞できるよう設計されていたという

二の丸御殿の唐門も必見。格式高い四脚門

二条城二の丸御殿のほか、掛川城(静岡県掛川市)の二の丸御殿、高知城(高知県高知市)の本丸御殿、川越城(埼玉県川越市)の本丸御殿が現存している。御殿は、藩が儀式や対面などを行う場、藩主の公邸、藩内の政務を行う役所という三つの機能を合わせ持った施設であるのが一般的だ。しかし、ひとくちに御殿といっても規模や意匠はさまざまで、見比べるだけでもその違いが楽しめる。

掛川城の二の丸御殿は、1869(明治2)年まで掛川藩で使用された後、廃城後も学校や掛川町役場、掛川市庁舎、農協、消防署などに使われ続けた。いかにも役所といった、落ち着いた雰囲気の御殿だ。用途に応じて約20の部屋から構成され、御殿内でもしつらえが違う。江戸時代には、身分によって入口も異なった。

掛川城二の丸御殿

御殿建築の屋根にみられる、起(むく)り破風と巨大な蕪懸魚(かぶらげぎょ)が印象的だ。長囲炉裏の間の天井に太田家の「桔梗紋」と替紋の「違い鏑矢(かぶらや)」が見られるのは、1854(嘉永7)年の大地震で倒壊後、太田資功(すけかつ)により再建されたためだ。

長囲炉裏の間の天井

建築の仕様や構造もさまざまだ。高知城の本丸御殿は、天守に本丸御殿が接続する珍しいケースで、現在の見学ルートも本丸御殿を経て天守へ到達する。出入り口部分の建物はやはり起り屋根になっていて、横木に透かし彫りされた、山内家の「丸に三つ葉柏」の家紋を見上げながら入っていく。

高知城本丸御殿は1727(享保12)年の大火(享保の大火)で焼失後、1749(寛延2)年に再建された。本瓦ぶきの平屋建てだ。質素ではあるが、気品のある落ち着いた雰囲気がある。

高知城の本丸御殿

着座する部屋が、身分と格式に応じて決められているのは、御殿に共通する特徴だ。高知城本丸御殿も、藩主の座所である上段ノ間は一段高くなり、座敷飾りの位置や装飾の豪華さが際立っている。

上段ノ間西側の納戸構えは、警護の武士が詰める隠し部屋。一見、ただの納戸に見えるのだが、別名を「武者隠し」という。各部屋を区切る欄間は部屋によって違いがあり、空間を演出する。とりわけ二ノ間と三ノ間を区切る「打ち分け波の欄間」の波形にくり抜いた彫刻は出色だ。

上段ノ間西側の納戸構え

川越城の本丸御殿は、1848(嘉永元)年に松平斉典(なりつね)により建造された。玄関と大広間、家老詰所が残るのみだが、玄関の大きな唐破風をはじめ、17万石を誇った武家の風格が感じられる。

(この項、おわり。次回は10月1日に掲載予定です)

#交通・問い合わせ・参考サイト

■二条城
京都市営地下鉄東西線「二条城前」駅から徒歩すぐ
http://www2.city.kyoto.lg.jp/bunshi/nijojo/

■掛川城
JR「掛川」駅から徒歩7分
http://kakegawajo.com/

■高知城
JR「高知」駅からバス「高知城前」下車、徒歩すぐ
http://kochipark.jp/kochijyo/

■川越城
東武東上線・JR「川越」駅からバス「博物館前」下車、徒歩すぐ
http://museum.city.kawagoe.saitama.jp/hommaru/index.html

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PROFILE

萩原さちこ(はぎわら・さちこ)城郭ライター、編集者

萩原さちこ

小学2年生のとき城に魅了される。執筆業を中心に、メディア・イベント出演、講演、講座などをこなす。著書に『わくわく城めぐり』(山と渓谷社)、『戦国大名の城を読む』(SB新書)、『日本100名城めぐりの旅』(学研プラス)、『お城へ行こう!』(岩波ジュニア新書)、『図説・戦う城の科学』(サイエンス・アイ新書)など。webや雑誌の連載多数。
http://46meg.com/

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