福島で醸される日本酒はなぜフルーティーなのか?

  • 文・写真 相知 光
  • 2018年10月17日

 

今年5月の全国新酒鑑評会で、福島県の酒蔵の金賞受賞数が6年連続日本一になったことは、全国的にも大きな話題となりました。

平成29酒造年度の金賞は19銘柄。福島県のお酒は、フルーティーな香りと甘さのあるものが多く、さらに蔵ごとの個性が高いレベルで際立っているのが特徴です。

そうなると、できるだけ多くの「福島の日本酒」を飲んでみたくなるもの。福島県観光物産館に日本酒の試飲コーナーがあるというので、東京から足を運んでみました。

大吟醸3杯とおつまみのセットがお手頃

  

観光物産館はJR福島駅から徒歩3分のところにあり、1階には県内から集められた名産品が並べられていました。奥には大きな冷蔵庫があり、県内の50を超える蔵元のお酒がひととおりカバーされているそうです。

「ふくしまラウンジ」という飲食コーナーには、アイスクリームや軽食を食べている人たちが見えましたが、レジに行くと確かに「飲み比べ」の文字があります。

メニューは2つ。純米原酒など6種から3種を選ぶ「週替りコース」500円と、大吟醸4種の中から2種を選ぶ「プレミアムコース」700円です。

まずは週替りコースから「東豊国(あずまとよくに)大吟醸 幻(げん)」(豊国酒造)と「奈良萬(ならまん)純米生貯蔵酒」(夢心酒造)、それに「TOYOKUNI純米吟醸原酒」(豊国酒造)を選んでみました。

あ、同じ蔵が被っちゃった、と思わず口にすると、レジの女性がこう教えてくれました。

「豊国酒造は県内に2つあって、東豊国は石川郡古殿町(ふるどのまち)、TOYOKUNIは会津坂下(ばんげ)町の蔵で作られているんです」

これに週替りのおつまみ300円を追加すると、800円で立派なセットのできあがり。おつまみは、さつま揚げと、会津名物のお漬物「ゆず巻きだいこん」の2品。個人的には、とても好きな組み合わせです。

簡潔なメモでお酒の多様さが引き立つ

  

差し出されたお盆には、銘柄ごとに、おちょこにたっぷりのお酒が入っています。さつま揚げをかじった後で、まずは「東豊国 幻」。

ひと口めは、スッと淡白(たんぱく)な印象を受けます。しかし、軽くすすって空気を入れると、花が開いたようにパーッとさわやかな香りが立ちのぼりました。りんごというか、青りんごのような甘みもあります。

ここの「飲み比べ」コースのいいところは、お酒ひとつひとつに対し、その特徴を端的に表現した短いメモがついてくるところです。「お酒なんてうまければいい」という人でも、それぞれの個性をより楽しめる、とても参考になる情報です。

もちろん、味の感じ方は人それぞれですので、メモを見つつ、自分としてはこうかな、といったことを考えながら飲む手がかりにすると、福島のお酒の多様さが味わえます。

ゆず巻きだいこんで口直しをし、少し水を飲んだ後に、喜多方の「奈良萬」に移行します。メモには「梨系のさわやかな酸味」「軽快」と書かれていましたが、個人的には「バナナかな?」と感じる香りもありましたし、味もしっかりしていました。

白麹を使って酸の強いお酒を作る蔵も

  

三杯目は、会津の方の「TOYOKUNI」。舌に酸の刺激を感じると同時に、ぶどうのような香りが広がります。これはかなり個性的。メモにはこうあります。

「本格焼酎で使用される白麹(しろこうじ)を使い、クエン酸を引き出し酸味豊かな味わいに醸し出されました。米は地元の『夢の香』を使用」

なるほど、麹が違うんですね。「夢の香(か)」とは、福島県が独自に開発した酒米の名前。こういう情報は、飲んだだけでは分からないのでありがたいです。飲み口がすっきりしていて、シャンパンのよう。お米からこんな味が引き出せるなんて、不思議です。

週替りコースでここまで楽しめると、プレミアムコースはどんな感じなのだろうか。気になってしまい、館外を少し散策した後で、再び店に足を運んでしまいました。

「玄宰(げんさい)大吟醸」は、会津にある末廣酒造のお酒。藩校日新館の創設者、田中三郎兵衛玄宰の名前を冠しています。「陣屋 大吟醸PREMIUM」は、白河市の有賀醸造のお酒です。おつまみには、今度はごぼうの黒ごま和えが入りました。

お酒は、ともに甘みと酸味のバランスがよく、米を磨き上げた大吟醸特有の芳醇(ほうじゅん)な吟醸香がします。あえて比較するなら、玄宰の方が、やや香りが強い。陣屋の方がまろやかで優しくて、その甘さはいちごを連想させるほどです。

食前にも食後にも合う「桃燗酒」

  

取材をした9月の観光物産館の入り口では、県内の農家の方々が果物を出張販売していました。試食したシュガープラムも白桃も黄金桃も、目の覚める甘さ。そこにそれぞれの個性をあらわす酸味が入り、とろんとした実を味わっていると桃源郷に入り込んだような気分です。

そこでふと思いました。福島の方々は、こういう豊かな果実の恵みを日々味わっているのだなと。そして、それぞれの甘みや酸味の微妙な違いを楽しんでいる。そういう下地があるから、特徴あるフルーティーな日本酒が県民に支持されているのではないかと。

帰りの電車内でスマホを見ていると、福島市内に蔵を置く「金水晶」さんのブログに、「桃燗酒(ももかんざけ)」という飲み方が紹介されていました。

おちょこに1センチ角に切った桃を入れ、そこに熱した日本酒を注いで飲む。冷やではなく、熱燗を使うのがポイントだとか。帰宅して早速やってみました。お酒は、会津の「名倉山」の純米酒。世界最大規模のワイン品評会「IWC(インターナショナル・ワイン・チャレンジ)」の2018SAKE部門で、純米トロフィーを受賞した品です。

福島で買ってきた白桃のジューシーな甘さと、福島のお酒のフルーティーな香りが、違和感なくマッチしています。これは食前酒としても、食後のデザート酒としてもいけると思います。

ちなみに注意点。自家製の果実酒の製造は原則として法律で禁じられていますが、アルコール20度以上などの条件を満たせば例外的に認められています。日本酒のアルコール度数は15度程度なので、作りおきをせず、直前に混ぜて飲むとカクテル扱いになるのでOKです。

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